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平瀬町干尽町線に架かる橋梁の歩道内に埋設した
電線共同溝の設計について
岡本征大

キーワード:干尽橋、電線共同溝、埋設

1.はじめに
都市計画道路 平瀬町干尽町線街路改良事業は、佐世保市の中心部、佐世保駅西側の佐世保港に面した地域で、平成9年度から事業を行っている。
本道路はもともと佐世保駅西側の臨海地区を走る臨港道路だったが、佐世保市街地の中心部を南北に縦断する、交通量が1日6万台を超える、国道35号のバイパス的な役割をも併せ持つ道路であった。しかしながら、本道路は、4車線は確保されているものの幅員は狭く、加えて1日4万台もの車両が通行することから、慢性的な渋滞が発生するとともに、交通事故なども多く、なんらかの改善策が求められていた。
このような状況において、西九州自動車道が本道路上を高架で建設されることになり、それに合わせて平成9年に本道路も都市計画決定され、景観に配慮し、災害に強いまちづくりのために、電線類地中化なども行う、街路整備が行なわれることとなった。完成後には、佐世保市の新たな玄関口としての道路であることのみならず、国道35号を初めとする佐世保市街地の慢性的な交通渋滞の緩和にも寄与するものである。

『干尽橋』は都市計画道路 平瀬町干尽町線に架かる橋である。道路拡幅に伴い干尽橋も拡幅するが、第1期工事として平成21 年度に全体幅員30mのうち、海側の13.5mを新設した。残りの山側の16.5m も、第2期工事として平成25年度に架け替えが完成した。今回は、第1期工事で新設した干尽橋(海側)に添加を予定した『電線共同溝』の設置における検討について、紹介したい。

2.干尽橋の概要
路 線 名:都市計画道路 平瀬町干尽町線
道路規格:第4種第1級(V=60㎞ /h)
所 在 地:佐世保市干尽町
橋 長:12.6 m
幅 員:30.0 m
橋梁形式:PC 単純プレテンションホロー桁
架設年次:平成21年11月(海側) 平成25 年12 月(山側)

3.干尽橋における当初計画した電線共同溝の設置方法について
当初、干尽橋での電線共同溝設置は、桁下が通水面であり余裕空間がないため、橋梁側面にブラケットによる片持ち形式で添架することとしていた。使用管材は、自重が軽く露出に強い、添架用FRP管を使用することとしていた。
しかし、管路を佐世保港に面して露出させることに対し、港湾管理者から管路設置方法を再検討できないかとの要望があった。
また、道路管理者の立場としても、添架位置が橋梁側面となるため、悪戯や橋梁からの跳乗りなどによる管路の破損が懸念され、安全面で十分な対策をとれないことから、橋梁歩道部に埋設できないかを模索することとなった。

4.橋梁歩道内に管路を埋設する際の制約条件
管路を橋梁歩道内に埋設できるかを検討する際に、制約条件が2点あった。
1点目は、管路の並びを変更できないことである。橋梁前後の電線共同溝の繋がりがあるため、これを守ることが求められた。
2点目は、歩道端部の高さに対する制約である。セミフラット形式の歩道高さに合せた、地覆と高欄が既に完成しているため、これらに影響を与えない設計が必要であった。

5.橋梁歩道部に管路を埋設する際の問題点

5-1.管路が橋梁歩道部に埋設できるか?
電線共同溝の設計にあたっては、電線共同溝設計マニュアル(案)(九州地方整備局)に則り行うが、埋設深さ(被り)や管の離隔、曲線半径等を規定値以上、確保する必要がある。
管路を干尽橋歩道部に埋設する場合、所定の被りが確保できなかった。このため、電線共同溝設計マニュアル(案)に則り、管路保護を目的とした『コンクリート巻立て防護+セラミック板防護』を施すことした。
しかし、この場合、歩道形式が当初計画のセミフラット形式では、管路を歩道に埋設する空間がないため、マウンドアップ形式に変更した。さらに、マウンドアップ形式に変更すると歩道高が上がり、歩道に接する地覆高が小さくなることから、歩道横断勾配の向きを変えることで高さ調整を行った。

5-2.橋梁の構造計算を満足できるか?
歩道形式の変更に伴い、橋面荷重が増加し、死荷重が増加する。増加した死荷重で設計計算を実施すると、桁応力は許容値内に収まるが、落橋防止構造が許容値を超過する結果となった。
これに対する対策として、歩道右側マウント部の充填に軽量コンクリートを採用し、死荷重の低減を図った。これにより、落橋防止構造の応力も許容値を満足する結果となった。(コンクリートの単位体積重量23KN/m3→ 19KN/m3

5-3.管路と干渉せず伸縮装置を設置できるか?
当初計画では、橋梁表面にゴムジョイントを露出させる、荷重支持型ゴムジョイントを施すこととしていた。
しかし、これをそのまま使用すると、管路と伸縮装置が競合し、管路を歩道内に埋設できない。このため、管路と干渉せずに伸縮装置を設置するために、荷重支持型ゴムジョイントから埋設ジョイントに変更した。さらに、管路と伸縮装置を段違いに配置することで設置を可能にした。

5-4.横断勾配が変化することで路面水をどのように処理するか?
右側歩道は横断勾配を図-4のように設計するため、地覆付近に水が滞留する恐れがあった。水の滞留を避けるために水の抜け道となるよう、地覆部に切欠きを設けることとした。
しかし、切欠き箇所は、コンクリート被りが小さくなることから、地覆内鉄筋の腐食防止のため、表面含浸工を施すこととした。

5-5.管路の設置方法を変更することの妥当性(評価)
景観への配慮、保守性・維持管理、施工性、コストの4項目について評価した(表-1電線共同溝の設置方法を変更する際の各項目評価を参照)。
橋梁歩道部内へ管路を埋設することで、管路と伸縮装置が道路利用者の視界に入らないことによる景観への配慮や、伸縮装置の形式変更による、トータルコストの縮減が可能と判断した。
しかし、変更計画は、電線共同溝管路と伸縮装置が歩道内で競合することから、当初計画に比べ施工性が劣るということ、管路と伸縮装置が露出しないことは、劣化や破損等の事態が起きた場合に、迅速な対応が困難というデメリットもあると評価した。その一方で、そもそも露出しないため、当初懸念していた悪戯や橋梁からの跳乗り等はなくなり、管路の破損は抑制されると考えた。
変更計画は当初計画に比べ、劣る面があることを理解したものの、総合的に判断した場合、変更計画案が当初計画案より優れると判断した。また、これにより、佐世保港に面して管路を露出させないでほしいという、港湾管理者の要望も満足できる結果となった。

6.おわりに
平成9年度より事業着手した平瀬町干尽町線は、平成27年度に事業完了を予定している。県北地域の経済活性化や主要拠点間の連絡強化等を目的とした、国土交通省の西九州自動車道整備事業と足並みを揃え事業を実施し、西九州自動車道の受け皿として、また、佐世保市の新たな玄関口となる、景観に優れた街路となった。平成25年11 月には本街路に面して大型複合商業施設が開業し、賑わいを見せている。地域に歓迎される街路の設計、建設等に技術者として携わることができたことを誇りに思う。
最後に、本検討にあたり助言、協力いただいた関係の皆様、そして何よりも長きに亘って街路整備にあたりご尽力いただきました諸先輩方、関係各位に、この場をお借りしてお礼申し上げます。

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