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九州地方計画協会

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国土交通省 九州地方整備局長
岩﨑泰彦
前任地の東北では東日本大震災の復旧復興に従事させていただいた。
東日本大震災では、被災範囲(津波遡上範囲)は南北500㎞以上に及んだ。大津波によって道路はガレキで埋め尽くされ、救援部隊の到着を阻む事態となった。このような中、誰よりも早くガレキに立ち向かったのが国土交通省の現場の職員と地元の建設業者の皆さんであった。大津波警報の出ている緊迫した状況の中での不眠不休の作業の結果、発災5 日目には内陸部を縦断する道路と太平洋沿岸の各都市をつなぐ15 ルートの全ての啓開を完了し、その後の救助・救援に役立てていただくことができた。
また、被災地の復興を土台として支える基幹的な河川、海岸、道路、港湾等の復旧も迅速に進められた。
夏までには復旧は概成。復興のシンボルとして新規に事業化された三陸沿岸道路などの“ 命の道” も、事業化から1 年という異例の速さで工事着手にこぎつけることができた。これを支えたのが、一日も早い復興を願う、地域の皆さん、建設業や建設コンサルタンツの方々、全国から応援に駆けつけた国土交通省地方整備局の職員である。被災地の市町村長は率先して事業説明会に出席し協力を呼びかけて頂いた。地元の建設業者は技術者や生コンが不足する困難な状況の中で様々な工夫をしながら全力で事業を進めた。ゼネコンや建設コンサルタンツは、豊富な経験を持つ優れた精鋭の技術者を現地に常駐させ復興事業の早期着工を支えた。被災地に結集した全国の地方整備局の職員と東北地方整備局の職員は、地域の皆さん、そして建設関係者と心を一つにして緻密な計画のもと事業を推進した。
このような東北の復旧復興の経験から改めて学んだことは、多くの人が共感できる目標の設定、必要な予算の裏付け、市町村をはじめとする地域からの信頼の醸成と地域からの協力、地域を守る地元建設業、官民の垣根を越えた協力連携、国土交通省地方整備局の使命、職員の高い使命感、の重要性である。
ここ九州においては、梅雨末期の集中豪雨や大型台風の上陸で過去幾度となく大きな被害を受けてきた。新燃岳や桜島の噴火など火山災害も脅威である。さらに南海トラフの巨大地震に伴う大津波により、大分県、宮崎県、鹿児島県を中心に、大きな被害が発生することが予想されている。内閣府の被害想定によると、この三県だけで約6 万人に直接的な影響が及ぶ恐れがあるとされている。これらの災害から人命を守りいかに被害をできるだけ少なく抑えるか、災害後の復旧をいかに迅速に行うか、減災、防災そして早期復旧の取り組みが大きな使命である。また、社会資本の“ 高齢化”が進む中で、国管理施設はもとより、市町村が保有する多数の施設の計画的な維持管理を促進する必要がある。さらに九州は東アジアに近いという有利性を活かした飛躍の好機を迎えている。自動車等の生産、食糧供給、観光の拠点としての能力を最大に発揮させることのできる陸海空の交通ネットワークの早期整備が求められている。
九州地方整備局は、これまでの多くの災害を経験し防災に活かしてきた。昨年、整備局から派遣した緊急災害対策派遣(TEC . FORCE)は、山口島根県境、京都府、伊豆大島の災害現場で技術と経験を活かしながら使命感を持って活躍し被災地から評価をいただいた。また、交通ネットワークの整備では、地域との協力を円滑に進め東九州自動車道の整備などで実績を上げてきた。平成26 年は、これらの蓄積を活かし、また、東日本大震災での経験も参考にしながら九州の地域づくりに取り組んでいきたい。具体的には、地域防災力の向上、維持管理の定着、交通ネットワーク整備の加速、に重点的に取り組んでいきたい。また、仕事を進めるにあたっては、地域や関係者とのコミュニケーションを基本におくことに一層努力し、さらに、地域の安全・安心の確保に重要な役割を担っている地域建設業の再生や様々な場面での官民の連携を進めていきたいと考えている。

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