川内川水系かわまちづくりの取り組み
安部剛
青木繁
青木繁
キーワード:南部東道路、地域高規格、沖縄幹線道路網
1.はじめに
川内川は、その源を熊本県球磨郡あさぎり町の白髪岳(標高1,417m)に発し、羽月川、隈之城川等の支川を合わせ薩摩灘へ注ぐ、熊本県、宮崎県及び鹿児島県の3 県、6 市4 町にまたがる幹川流路延長137㎞、流域面積1,600km2の一級河川である
流域内の拠点都市である上流部の宮崎県えびの市では、九州自動車道、宮崎自動車道等が通っており、下流部の鹿児島県薩摩川内市では、JR 九州新幹線、国道3 号等基幹交通施設に加え、南九州西回り自動車道が整備中であり交通の要衝となっている。上流部のえびの市は、クルソン峡や京町温泉等の豊かな観光資源や史跡、神社・仏閣等の歴史的資源にも恵まれ、中上流部の湧水町、伊佐市、さつま町では、稲作等の農業や温泉等による観光産業が盛んである。また、下流部の薩
摩川内市では、製紙業、電子部品製造業等の第2次産業の集積が見られるなど、この地域における社会・経済・文化の基盤をなしている。さらに、霧島錦江湾国立公園(旧霧島屋久国立公園)、川内川流域県立自然公園等の豊かな自然環境に恵まれている。
摩川内市では、製紙業、電子部品製造業等の第2次産業の集積が見られるなど、この地域における社会・経済・文化の基盤をなしている。さらに、霧島錦江湾国立公園(旧霧島屋久国立公園)、川内川流域県立自然公園等の豊かな自然環境に恵まれている。
2.平成18 年7 月洪水後の取り組み:治水対策(ハード・ソフト対策)
川内川では平成18 年7 月洪水により甚大な被害を受け、河川激甚災害対策特別緊急事業や鶴田ダム再開発事業が採択され事業を推進している。また、これらのハード対策の実施と併せ防災・減災のためのソフト対策として、「川内川水害に強い地域づくりアクションプログラム」を策定し、川内川沿川の5 市町、鹿児島県、宮崎県及び国(河川管理者)等の連携の下、流域一体となり積極的に取り組んできた。これらのハード・ソフト対策を実施していく上で、5 市町、鹿児島・宮崎両県及び国(河川管理者)等の関係機関だけではなく、地域住民も含めた幅広い取り組みとなり、流域での一体感が醸成されてきた。
3.「川内川水系かわまちづくり」策定及登録に向けた取り組み
平成18 年7 月洪水後の流域一体となった取り組みや、流域での一体感の醸成等を踏まえ、これ
まで個別の自治体で実施していた河川環境整備事業を水系一貫の考えの下に「川内川水系かわまちづくり」の計画を策定し、平成29 年3 月にかわまちづくり支援制度に登録された。
まで個別の自治体で実施していた河川環境整備事業を水系一貫の考えの下に「川内川水系かわまちづくり」の計画を策定し、平成29 年3 月にかわまちづくり支援制度に登録された。
1)川内川水系かわまちづくり推進協議会
これまで個別の市町で実施していた河川環境整備事業を、水系一貫の考えの下に流域一体での「かわまちづくり計画」を策定・推進し、地域の活性化に資することを目的として「川内川水系かわまちづくり推進協議会(構成機関:薩摩川内市、さつま町、伊佐市、湧水町、えびの市、鹿児島県、宮崎県及び国)」が、平成28 年3 月18 日に設立され、平成28 年8 月19 日に九州で初めてとなる水系一貫のかわまちづくり計画である「川内川水系かわまちづくり計画」が策定された。
2)川内川サミット ~安全・安心・魅力ある川内川を次世代の子供たちへ~
平成18 年7 月の川内川大水害の経験を経て、“ 安全で魅力ある川内川を次世代の子供達へどのように伝えていくのか” を考える「川内川サミット」を平成28 年12 月18 日に350 名を超える参加者の下、薩摩川内市で開催した。
本サミットでは、国立環境研究所の肱岡室長による「気候変動の影響と適応策」と題した基調講演後、川内川沿川市町の全首長、学識者及び国(河川管理者)による『防災・減災』と『かわまちづくり』をテーマとしたサミット(パネルディスカッション)を実施した。サミットの最後には、5 名の首長が様々な取り組みを通じて、安全・安心で魅力ある川内川を次世代の子供たちへ引き継いでいくための共同宣言「川内川サミット宣言2016」を採択した。
3)かわまちづくり支援制度による新規登録
九州で初めてとなる水系一貫のかわまちづくり計画である「川内川水系かわまちづくり」が、かわまちづくり支援制度において、平成29 年3 月7 日に新規登録された。この登録を受け、川内川沿川3 市2 町において「かわまちづくり登録証」の伝達式を開催した。
4.「川内川水系かわまちづくり」の概要
1)川内川の利活用状況
川内川は、上流えびの市のクルソン峡、湧水町の阿波渓谷、伊佐市の東洋のナイアガラと呼ばれる曽木の滝、さつま町の轟の瀬、薩摩川内市の長崎堤防がある広大な河口など、すばらしい河川景観を有していると共に、鮎やホタルが生息するなど良好な河川環境を有し、散策・釣り・水遊び・カヌー・レガッタ・ドラゴンボートなど日頃から多くの地域の方に利用される憩いの場となっている。
2)川内川水系かわまちづくりの基本方針
しかしながら、水辺に目を向けてみると、安全に水辺に下りられる状況となっていない箇所・安全に川を利用できる状況となっていない箇所がみられる等、安全面での課題がある。また、川内川では、平成18 年に大雨による被害が発生し、治水安全度向上を目的とした整備を、流域各所で実施している。整備の実施にあたっては、地域と連携したかわづくりを行うなど、地域活性化に寄与する整備を行ったことにより、川内川を利用したイベントの増加や、参加者数が増加するなど、整備の効果が見られている地域がある。
以上を踏まえ、川内川におけるかわまちづくり計画の基本方針を以下の通り定め、3 つの柱のもと、計画を推進していく。
なお、地域単独での整備、まちづくりでは、効果が限定されることから、川内川流域の地域と地域が連携した、水系一環のかわまちづくり計画を検討し、単独地域では成し得ない地域活性化の創出を図る。市町が連携することで、地域が元気に、地域が活性化していく「川内川水系かわまちづくり」を協働で進め、川内川流域のさらなる魅力づくりを進めていく。
3)かわまちづくり観光振興部会
川内川水系かわまちづくりを中心とした川内川流域の観光振興に取り組む「かわまちづくり観光振興部会」を平成29 年6 月12 日に設立した。
川内川ブランドを確立し交流人口・物産販路をを拡大するため、旅行商品の開発、人材育成、プロモーション等を行い、地域経済の活性化を図っていく。
4)各地区の整備内容
川内川沿川に位置する5 市町の連携による、川内川水系10 地区のかわづくり、まちづくりにより地域交流を促進するとともに、河川空間利用者の安全性の向上、河川巡視・河川管理の円滑化を図る。平成18 年出水を契機として整備した治水施設等や既に整備済みの水辺も含めて利活用の拠点をつなぐ新たな河川空間・まち空間の形成を図る。
また、かごしま国体を契機とし、イベント開催の場としての河川空間の活用、またそれに乗じて、関係機関連携による周辺地域への観光客誘致を目的としたまちづくりを行うことにより、地域活性化の相乗効果を図る。