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「山岳地帯での大規模土工(新種子島空港)」
一島の中央に出現したジェット化空港一

鹿児島県 熊毛支庁土木課空港建設室
 技術主査
今和泉 和 人

1 新種子島空港の整備概要
種子島は,鹿児島県本土の最南端佐多岬から南へ40㎞に位置し,島の南部に日本最大のロケット打ち上げ施設を有する,南北約60㎞,東西幅6~12㎞,最大標高282mの平べったく南北にひょろ長い島である。

新種子島空港は,現在供用中の種子島空港より北に約8㎞の位置,種子島のほぼ中央の西之表市と中種子町の市町堺付近に計画された空港である。空港の高さ(標点)は234mで,現在の種子島空港より142m高くなり,島のほぼ頂上付近の山間部に建設されている。
現在の種子島空港は1,500mの滑走路長でプロペラ機(YS-11)以外は就航できない。そのため,高速輸送大量輸送が可能なジェット機が就航できる2,000mの滑走路を有する新空港を整備することとなった。また,着陸援助施設として,ILSと精密進入灯火も整備する。

新空港が開港しジェット機が就航すると,離島における高速交通体系が確保され,本土との時間短縮,大量輸送を図ることにより地域の振興・活性化及び島民3万5千人の生活の安定に寄与する。

2 事業の経緯
新種子島空港は,平成4年11月に設置許可を受け事業に着手した。事業着手から12年が経過した現在,全ての用地取得と工事用道路,調整池,進入灯橋梁の整備が完了し,平成16年度末までに用地造成工事,滑走路・誘導路・エプロンの舗装工事も概成した。事業の経緯は下記のとおりである。

3 用地造成工事
山岳空港であるため,山を切り取り,最大40mを越える沢を10ヵ所ほど盛土する全体土量570万m3の大規模土工事を行うこととなる。
3-1 切盛区分
現地測量の結果,切土量,盛土量のバランスをとり,図3-1のとおりの切盛区域を設定した。盛土区域については,図3-2のとおりゾーニングを設定し,滑走路等の基本施設に対する盛土本体の変形を抑えることや法面の安定を図るため,これらの区域に良質な材料を盛土材として利用することとした。

3-2 施工概要
用地造成工事は,平成10年度に準備工事及び本体工事の基礎資料を得るための試験工事に着手し,平成11年度からの本格的造成工事を経て平成15年度で完了した。
工事は,標高180m~260mの起伏のある丘陵地を標点標高234mに造成するもので,最大盛土高約40m,最大切土高約30m, 総土量約570万m3にものぼり,盛土材料も粘性土から軟岩Ⅰと多種多様であったが,高盛土の安定,地盤沈下等の挙動を定期的に確認しつつ,安全に万全を期して工事を行った。

3-3 施工手順
用地造成工事(土工事)は,最初に切土区域において伐採を行った後,伐開・除根と表土除去を行い,掘削作業に着手した。掘削は切土区域と盛土区域を結ぶ工事用道路から着手し,沢部に至る通路を確保した後,盛土区域の工事を開始した。盛土区域では沢部の軟弱土を除去した後良質土で埋め戻し,沈砂池を含む仮設工を行うとともに,仮排水工(仮排水管,竪坑,接続桝),地下排水工(暗渠排水工)を敷設し,これら盛土区域における準備作業完了後,本格的な盛土工事を行った。

3-4 切盛土工
3-4-1 土層の判定
土層は,掘削試験により作成した「土層判定基準」及び「土層判定手法」をもとにピックハンマー等で土層を判定し,測点毎に測量を行って記録した。
3-4-2 掘削
粘性土,礫質土,軟岩Iはブルドーザーにより掘削した。粘性土は32t級ブルドーザーの排土板で掘削し,礫質土及び軟岩Iは44t級ブルドーザーの3本爪リッパーにより掘削して集土した。
3-4-3 積込み
ブルドーザーで掘削した土砂及び軟岩は,集土した後,12m3級トラクターショベルにより重ダンプトラックに積み込んだ。勾配のある箇所や狭い箇所については5.4m3級トラクターショベルや5.0m3級バックホウも使用した。

3-4-4 運搬
切土場で掘削,積込みされた各材料は,重ダンプトラックで所定の盛土場に運搬した。運搬重機は46tダンプトラックを主力とし,90t,32tダンプも一部使用した。
3-4-5 敷均し・転圧
敷均し・転圧は,表3-1の仕様で行った。また,転圧に際しては,最適含水比付近で締固め,締固め密度90%以上確保できているか品質管理を行った。

3-4-6 土量バランス
当用地造成工事は,6年間で約570万m3の切盛を行う大規模土工事であるため,土層線や土量変化率の違いが土量バランスに大きく影響するため,各年度の施工実績から定期的に土量バランスを監視して工事を行った。

4 盛土動態観測
本空港の計画地区には,図3-1に示すような高さ20m以上の長大法面(高盛土)箇所がB-1,B-2,B-3,B-9,B-10の5地区ある。
盛土箇所毎に,盛土の縦断・横断形状,盛土層厚,基礎地盤の岩質,盛土材の土質等が異なる他,施工時期も数年間の長期にわたり各々に実施するため,盛土法面の安定性と盛土自体の圧縮変形等が懸念される。したがって,これら長大盛土箇所において,動態観測を実施し,盛土の状態を観察しながら土工事を行った。

5 開港へ向けて
平成15年度末には,用地造成が完了し,平成16年度末までに滑走路,誘導路,エプロンの舗装工事も完了した。これにより種子島の中央に約100haの広大な空港が出現した。
平成16年11月当空港建設地で行ったイベント「種子島土木フェスタ2004」では島の人口の1割に当たる3,500人の方々が来場し,また,平成16年度は800人を超える方々の見学会を行うなど,住民の新空港に対する期待も非常に大きい。
空港の整備も最終段階に入り,現在ターミナル地域の整備を行っており,その後完成検査,フライトチェック等所要の手続きを経て,平成18年3月には島民が待ち望んだジェット化空港が開港することとなる。

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