小動物を活用した除草の取り組み
(環境にやさしく,川に癒しを与える除草を目指して)
(環境にやさしく,川に癒しを与える除草を目指して)
国土交通省 九州地方整備局
佐伯河川国道事務所 河川管理課長
佐伯河川国道事務所 河川管理課長
福 田 耕 喜
国土交通省 九州地方整備局
佐伯河川国道事務所 河川管理課
河川管理係
佐伯河川国道事務所 河川管理課
河川管理係
浦 田 敦 英
河川敷の堤防除草は,堤防点検と河川美化などを目的に実施します。
景気低迷と言われるこの世の中,河川の維持管理においても限られた予算の中で,コスト縮減を図っていかなければなりません。
以前は刈草の処理はその現場で焼却していましたが,環境問題が大きくクローズアップされるようになり現在は野焼き禁止となりました。(市町村で特例措置はありますが,野焼きをすると燃えかすが舞い上がり,火事の原因にもなり,地域住民の方々から洗濯物が汚れたとか,煙が原因で視界が悪くなり,そのため交通事故等が多く発生し対応に苦慮していたことなどがあったためです。)
そこで,一級水系番匠川を直轄管理する国土交通省佐伯河川国道事務所では小動物に堤防の草を食べさせ,除草の刈草の処分費(積込+運搬+処分)を削減する目的で,平成14年度より動物を利用した除草実験を始めました。平成14年度はヤギ5頭とウサギ4匹で,平成15年度はヒッジ5匹とヤギ6頭で行って,平成16年度も社会福祉法人希望の森『小規模通所授産施設・エバーグリーン』との協働作業で,平成16年10月31日まで河川敷で作業を実施しています。
作業している場所は大分県立佐伯豊南高校校舎のすぐ横の番匠川河川敷で,この一帯は車の進入を禁止しており,朝夕の散歩する人のふれあい,やすらぎの河川空間となっています。
このようなヒッジやヤギのような小動物を利用して堤防除草を試みているのは国の直轄事業では全国で初めての取り組みであり,各方面からの問合せが多く,とても反響が大きいです。
当事務所における番匠川本川と堅田川・井崎川・久留須川の各3支川の直轄区間の合計(国土交通大臣管理延長の合計)は33.8kmです。平成16年度の場合,除草工事の延べ面積は約95万㎡で11月末を目標に鋭意作業中です。
除草工事は大型「ラジコン草刈機」や「肩掛式草刈機」を使用し,作業を実施しています。なお,大型「ラジコン草刈機」は平成14年度から2台導入しています。
その際発生する刈草の量は,平成15年度は約1,400tもありました。
この刈草を資源の有効活用の観点から園芸農家,ハウス栽培等の農家へ約1,200t無償提供しましたが,残り186tは処理ができなかったため,産業・一般廃棄物処理施設場に運搬し処分しました。
処理施設への持ち込み費用は平成14年度で1トンあたり3,000円だったのが,平成15年度から分別処理の関係上,1トンあたり9,200円となり,コストは約3倍になりました。
表ー1に示すように平成12度に813tあった刈草の処分施設への搬出も園芸農家,ハウス栽培等の農家の協力で186tまで減少しました。
平成16年度は10月現在では0でこのままいけば,施設への搬出が0になる予定です。
しかし,園芸農家,ハウス栽培等農家までの運搬費用は実際問題掛かってくるのが現状です。
農家の方々に取りに来てもらえばそれが一番よいのですが,運搬車両,高齢化等の問題があり,なかなか取りに来てもらえいなのが現状です。
そこで,小動物を利用しコスト縮減を図ろうということです。
平成14年度から平成15年度にかけてヒッジとヤギを比較しますとヒッジの方が草を2~3倍多く食べます。食べる植物の種類はセイタカアワダチ草をはじめなんでも食べます。この動物たちは,ほとんど水を必要としなく,排泄物も粒状で小さいなど,環境への負荷も少ないです。
平成14年度のヤギは1頭あたり1日7kgの草を食べたり,踏み枯らしたりする(内訳:食べる量2.0kgと踏み枯らす量5.0kg)のに対し,平成15年度のヒッジは1頭あたり1日17.5kgの草を食べたり,踏み枯らしたり(内訳:食べる量5.0kgと踏み枯らす量12.5kg)と約2.5倍の効果がありました。
これらの調査結果を踏まえ,平成16年度は運用管理を調査し,調査結果をふまえた上で,将来の堤防除草(工事)に生かしていきたいと考えています。
今までは川が「危ない」とか「川に落ちる」とか聖域みたいになっていて,なかなか近づいてもらえないことがありました。また,佐伯市周辺には動物園などの動物と直接ふれあう施設がないため,近隣の保育園児,小・中学生をはじめ大勢の人達がヤギやヒツジとふれあうことで,川により親しみが湧いてくるのを河川愛護の観点からも期待しています。