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大野川水系河川整備計画【直轄管理区間】策定について

国土交通省 熊本工事事務所
 工務第一課長
(前)国土交通省 大分工事事務所
 調査第一課長
河 野 忠 彰

1 はじめに
大野川では,これまでに「工事実施基本計画」において河川工事の基本となるべき事項を定めていたが,平成9年の河川法改正により,これを「河川整備基本方針」と「河川整備計画」に区分し,河川整備計画については,具体的な川づくりが明らかになるように工事実施基本計画よりもさらに具体化すると共に,地域の意向を反映する手続きを導入することとした。
大野川の河川整備計画では,河川の整備が河川整備基本方針に沿って計画的に行われる区間について,地方公共団体や地域住民の意見を反映し,概ね30年間での河川工事,河川の維持の両面にわたり河川整備の全体像を定めた。以下に大野川水系河川整備計画【直轄管理区間】策定までのプロセス等について紹介する。

2 大野川の概要
大野川は,その源を宮崎県西臼杵郡祖母山に発し,竹田盆地を貫流し,緒方川,奥岳川,三重川等の支川を合わせ,大分市戸次において大分平野に注ぐ,幹川流路長107km,流域面積1,465km2の一級河川である。
流域の年間平均降水量は約2,200㎜で全国平均1,700㎜を大きく上回り,また土地利用は林野が全体の約77%,宅地面積が約5%を占め,大分市を中心とする宅地化が進んでいる。
大野川河川整備計画の対象区間は,下図の直轄管理区間を対象としている。直轄管理区間の堤防整備率は,約96%と他河川に比べ進歩しているが,平成5年洪水では一部の区間で越水あるいは,計画高水位を越える状況が発生し,対策が必要となっている。また,堤防の完成に伴い,平成5年,平成9年洪水では人口が集中した下流部を中心に内水被害が発生し,国県,市が一体となった対策が必要となっている。さらに大野川においては,計画を上回るような洪水に備えるためのハード・ソフト対策,40~50年前に造られ老朽化した水門,樋門等の改築,局所洗掘による護岸崩壊に対する対策も必要となっている。
大野川の豊富な水は,工業用水,農業用水,水道用水等さまざまな用途に使われ大分県の産業の発展の礎となっており「母なる川」と呼ばれている。また,良好な水質が流れる河川空間は豊かな自然環境を育み,沿川住民に広く利用されている。この豊かな水量,水質を維持していくためには,下流域のみならず上・中流域を含めた流域全体での取り組みが課題となっている。

3 大野川河川整備計画策定プロセス
大野川の河川整備基本方針は,平成11年12月1日に河川審議会の審議を経て策定された。これを受け九州地方建設局では大野川水系のうち,直轄管理区間について河川整備計画の策定を始めた。
策定にあたっては,広く意見を求めるにあたり大野川河川整備計画の原案を作成し,学識経験者から構成された「大野川流域委員会」で審議を行うとともに,関係住民へのパンフレット配布や延べ14校区における説明会等により幅広い意見聴取を行い,整備計画の策定に向けた作業を進めてきた。
大野川の河川整備計画は,地域住民の意見や4回にわたる流域委員会での審議内容を踏まえ原案の修正を行い,平成12年11月27日付けで河川整備計画の策定を行った。

○大野川水系河川整備計画【直轄管理区間】策定経緯

○大野川流域委員会
大野川流域委員会は,大野川水系河川整備計画(案)【直轄管理区間】の策定にあたって,関係住民の意見の反映方法や,同河川整備計画(案)の作成にあたり意見を述べることを目的として設置されている。委員のメンバーは,河川工学・環境化学・都市計画・生物・文化・漁業・利水などの各専門分野で活躍中であり,また大野川水系にとっ、て関わりの深い13名の方々で構成されている。メンバーの選定にあたっては大分県(河川課,漁政課),九州農政局などと協議し,九州地方建設局長が委嘱状を交付した。

平成12年1月から10月にかけて4回開催された流域委員会の概要を以下に示す。
○第1回流域委員会(H12.1.20)
・河川整備計画(原案)の説明
・住民意見などの聴取方法について説明し,流域委員会と同時併行型で行うことで了承を得る。
○第2回流域委員会(H12.2.23)
・整備計画(原案)に記載されている主な整備箇所などについて現地調査を行い,意見聴取を実施。
○第3回流域委員会(H12.6.29)
・関係住民などの意見聴取結果を報告し,了承を得た。関係住民などの意見も参考にし,整備計画(原案)について意見聴取を実施。
○第4回流域委員会(H12.10.13)
・整備計画(原案)の修正案を説明し,新たな意見については,その意見に対する対応策をその場で議論し,整備計画修正案での対応方針を決定し,委員会の了解を得た。

大野川水系河川整備計画【直轄管理区間】(原案)
 説明会・懇談会等実施状況一覧表(H12.2月~H12.5月)

【住民説明会】
直轄管理区間内の関係自治区の自治会長,消防分団長、市婦連代議員等を対象に,説明会を開催した。

【河川水辺の国勢調査アドバイザー・環境保全モニター懇談会】
多自然型川づくり等で指導助言を得ている「河川水辺の国勢調査アドバイザー」および「河川環境保全モニター」を対象に,現地調査,懇談会を開催した。

【大野川流域ネットワーキング懇談会】
流域のNGOの代表として,「大野川流域ネットワーキング」(漁協,商工会,流域ボランティア等,43組織から構成される。)を対象に,現地調査,懇談会を開催した。第3回では漁協中心のメンバーと川舟で現地調査する予定であったが雨天中止。整備計画原案の説明を行い,意見交換を実施した。

大野川水系河川整備計画【直轄管理区間】(案)
 縦覧・説明会実施状況一覧表(H12.10月~H12.11月)

整備計画(原案)を説明し意見を聴取した直轄管理区間沿川地区住民,アドバイザー等,大野川流域ネットワーキングを対象に,意見聴取結果の報告と整備計画(案)の説明会を開催した。また,大野川漁協にも同内容の説明会を開催した。
さらに整備計画(案)の本文やパンフレット等7箇を所の窓口に備え自由に閲覧してもらった。

【住民説明会】

【整備計画(案)縦覧】

【河川水辺の国勢調査アドバイザー・環境保全モニター説明会】

【大野川流域ネットワーキング説明会】

【大野川漁協関係者説明会】

4 主な意見と対策内容
河川整備計画策定にあたっては,大野川流域委員会を平成12年1月に開催し,関係住民などからの意見の聴取方法について審議し,委員会と同時並行的に進めることが決定された。
第3回の委員会では,関係住民の意見を参考にして活発な意見交換が行われた。これらの意見をもとに原案の修正が事務局で行われ,第4回委員会において学識経験者,住民の意見を反映した修正案が示された。
(原案)に対する主な意見を以下に示す。
・大野川の姿がわかるような歴史や文化をもっと記述してほしい。
・水系一貫となる川づくりの理念がほしい。
・川づくりを進める上で行政と住民が継続的に情報交換できる仕組みづくりが必要。
・派川乙津川の流下能力向上を図ってほしい。
・国,県,市一体となった内水対策を図ってほしい。
・大津留水衝部の堤防強化を実施してほしい。
・樹林帯整備は,地域の意見を十分に聴いて実施してほしい。
・河川とのふれあいや学習の場の整備を実施してほしい。
(原案)に対する主な意見と修正内容を以下に示す。

5 大野川河川整備計画 【直轄管理区間】の概要
今回策定された大野川河川整備計画についての概要を以下に示す。

6 大野川流域懇談会
川づくりには,その川の歴史,文化,社会背景,自然条件を踏まえて,川らしさを発見しながら考えていく必要があり,川でつながれた大野川流域を一つのくくりとして,さまざまな立場の人々の川に対する想いを語り合い,考えていくことが大切です。そこで,流域内の住民団体などとの連携交流,さらには流域住民,学識経験者,企業,関係自治体,河川管理者を含めて大野川の川づくりのあり方について意見交換・討論する場として「大野川流域懇談会」を設置します。
「大野川流域懇談会」では,下記に示すような項目を流域内で調査・研究し,意見交換を行い,今後の河川整備の内容に反映させます。

○大野川流域懇談会

○大野川流域懇談会の調査・研究テーマ

7 おわりに
約10ヶ月という大変短い期間での説明会・意見交換会の開催ということで大変苦労しましが,何一つ混乱もなく進めることができました。また,当初なかった「案」の段階での縦覧,説明会開催では,聴取した意見をもとにどのように原案を修正したかを,新たに作成したパンフレット(原案の修正版)を用いて説明しました。これは大変好評でした。また,整備計画は,一般の人が見やすいように目次構成も大幅に変更し,写真を挿入したりして読みやすくすることに心がけました。
流域では大野川を舞台にした様々なボランティア団体などが連携・結集した「大野川流域ネットワーキング(事務局長:幸野敏治氏)」の活動も盛んで,毎年,11月1日を「大野川の日」と定めて,流域の各地域で清掃活動を行ったり,源流の碑建立祭,シンポジウムの開催など上下流との交流連携が活発に行われています。
流域の人たちには,川と親しみ,川を非常によく知っている人たちが多くいます。流域の人たちとの意見交換,連携を大切にした計画づくりが大切であると思うところです。
今回,整備計画がこんなに順調に策定されたのは,大野川流域の多くの熱心な人々がいたからだと思います。そしてなによりも「大野川流域ネットワーキング」の会長の羽田野力氏や事務局長の幸野敏治氏や須股博信氏の力添えがあったからだと思います。そして昨年の暮れには,活動の拠点となる「河童小屋」が犬飼町のリバーパークの一角に落成し,本格的な活動が始まります。現在,NPOの法人登録を大分県に申請中です。
平成13年3月24日には,大野川流域懇談会の設立準備会として,三重町の「エイトピアおおの」で第5回大野川河川シンポジウム(主催:大野川流域ネットワーキング)を開催し.大野川流域の人々が一同に会し,これからの「大野川づくり」について熱心な討論が行われました。

そしていま地域住民の意見を反映した河川整備計画が策定されました。その内容は,事業の実施にあたって環境調査の実旋と有識者等との意見交換,地域住民への説明などを地域に表明したものとなっており,これまで以上に河川管理者としての責務は重大なものとなってきています。
ともあれ「いい川」や「いいまち」づくりを目指して,流域のみなさんや大野川流域ネットワーキングのみなさんと大いに議論しながら,たのしい川づくりをしていきたいと思っています。
大野川水系河川整備計画[直轄管理区間]についての詳細は,ホームページ
(http://www.qsr.mlit.go.jp/oita/seibi)をご覧下さい。

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