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大濠公園池底泥改善工事について

若築・飯田建設工事共同企業体
所長
田 中 邦 夫

若築・飯田建設工事共同企業体
副所長
岡 村 孝 之

1 はじめに
大濠公園池は,その昔福岡城の外堀として利用されていた草香江という博多湾の入江でした。それが昭和の初期に公園として整備されました。
豊かな水と緑で構成されるこの公園は中国の景勝地「西湖」を模して造られたといわれています。
しかし,開設以来60有余年を越える歳月と大濠公園を取り巻く社会環境の変化と共に底泥の堆積,水質の汚濁,悪臭など社会問題になってまいりました。
大濠公園は福岡県民の憩いの場であるとともに子孫に残すべき大切な財産です。
この度,永年の懸案であった大濠公園池の浄化工事を若築・飯田共同企業体で施工することになり,ここに工事概要を紹介します。

2 工事概要
工事名  大濠公園池底泥改善工事
公園名  大濠公園
工事箇所 福岡市中央区大濠公園
公園面積  39.8ha
池面積  21.4ha
工事内容
  仮設工事
  濁水処理施設工    ー式
  海水混合施設工    ー式
  薬品注入工      ー式
  排水工        300,000m3
  防護柵工       ー式
 土 工
  底泥固化       47,897m3
  ポケット底泥掘削運搬  17,057m3
  ポケット土砂掘削運搬  52,324m3
  底泥掘削運搬      52,324m3
  覆土工        52,324m3
 雑 工
  臭気対策工      24,000m2
  池内魚類移設工    一式
  磁気探査       一式

3 磁気探査工
大濠公園池内には,昭和20年6月19日午後11時 11分から20日午前零時53分にわたり焼夷弾の雨が降り文字通り火の海となった。
これが今も語り継がれる福岡大空襲である。
亡くなられた方々のご冥福を御祈りするとともに工事の安全を期するため磁気探査によって不発弾などを発見,撤去した。
探査は図ー1のような探査船を用い音響測探機で水深を測定しつつ,池底の地形に合わせて磁気センサーを上下しながら行い磁気センサーレコーダーに反応があれば潜水夫によりその物体を確認し撤去した。
  撤去された焼夷弾
    10ポンド焼夷弾・・・・・6個(4.5kg)
   100ポンド焼夷弾・・・・・5個(45.0kg)

4 魚類移設工
この魚類移設工は,池水の排水に先駆け環境対策として行うもので,大濠公園開設以来池水を干したことがなく池面積214,000m2に対し約100,000匹の魚類(対象魚10cm程度以上)が棲息していると予想されていた。又,当公園池で釣りを楽しんだ県民の話しによると,大型の白鯉とか,池の主がいるかとか,どんな大魚,珍魚が獲れるかと作業を前にして県民の話題の的であった。

(1)捕獲方法
池面積が広いため,仕切網で八分割し,寄せ網を引き寄せ,手網等ですくい淡水魚,海水魚,雷魚に選別し,一時蓄養網(エアーポンプ付)に蓄養した。

(2)積込み,運搬,放流
福岡県水産課及び,福岡県内水面漁業協同組合連合会の指導のもとに放流箇所を決め,活魚車に積込み,放流箇所まで運搬放流した。
尚,1回当りの運搬匹数は約1,000~10,000匹程度であった。又,生態系が変わると心配する人もいますが一部は,養魚し,工事完了後大濠池に放流の予定ですし,舞鶴公園の堀及び黒門川とつながっているのですぐに元の生態系に戻ると思われる。
(3)捕獲魚類
数量  大小約63,300匹(主に鮒)
魚種  鯉,錦鯉,鮒,鰻,鯰,雷魚,ブラックバス,イナ,ブルーギル,モツゴ,手長海老,筋海老,ミドリガメ,アカミガメ等
放流先 筑後川,岩岳川,今川,矢部川,小石原川,千鳥ケ池
蓄養池 福岡市西区今宿青木ひょうたん池

5 鳥類移設工
大濠公園池には野鳥も多数棲息していたが,飛べない鳥類(アヒル,ガチョウ)は,池の水が無くなれば餌が取れなくなったり,野犬や猫などに襲われる心配がある。このため公園内に飼育小屋を設置し,アヒル,ガチョウを捕獲し飼育を行った。このアヒル,ガチョウも工事完成後には再び大濠公園池に放鳥する予定である。

6 池水の排水工事
(1)概要
大濠公園池水(約300,000m3)の排水は,現況の黒門川を通じ孤川をへて,博多湾に放流するものである。
この池水の放流を行うにあたり,一日の池水の放流量(約8,000m3),排水濁度の水質(SS≦30以下)等の基準を設定した。そして,この池水が淡水であるため,黒門川を貯水池とし,海水と淡水とを混合し放流を行った。
このようにして博多湾の魚貝類及び,孤川河口に位置する伊崎魚港に対して,淡水による影響を軽減するため下記の対策を講じて施工に当った。

(2) 池水の排水
排水全体量は,池内の水量約300,000m3と雨水(降雨面積300,000m2×平均降雨量)と湧水である。この排水工事を次のように分類した。
  (a) 上澄水の排水工  (190,000m3
  (b) 下部濁水の排水工(110,000m3
  (c) 釜場排水工    (工事期間中)

(a) 上澄水の排水(190,000m3
水質試験によって水質濁度(SS≦30)を満足している池水については,上澄水の排水として薬品の注入は行わず,水位落差を利用した排水を行った。放流時期が6月1日よりと夏期であったためアオコが発生し,その対策に苦慮した。
特に晴天で気温の高い日はアオコが大量に発生し,それをそのまま放流した時は,海水と混合しアオコの死骸が大量に浮かんだ。この対策としてアオコの死骸をフロート式水中ポンプにて吸い上げ取り除いたのち放流した。
(b) 下部濁水の排水(110,000m3
上澄水の排水が完了したのち,水中ポンプ(8インチ4台)にて沈砂池に揚水し,規定の水質基準(表ー1)を満足するように薬品を注入し,水質確認を行ったのち排水した。
(c) 釜揚排水(工事期間中の雨水及び湧水)
この排水は工事期間中行うものとし,臭気対策及び固化処理作業中は,臭気対策剤及びヘドロに添加するセメント系固化材が雨水,湧水に解けてアルカリ性の水質になる。このため炭酸ガスの噴射により,弱アルカリ域もしくは,中性になるようpHの調整(5.8≦pH≦8.6)を行った。
又,作業内容の変化に伴い,湧水,雨水等の濁度が規定値以上になるときもあるため水質検査を随時行い,薬品の注入についても注意深く行った。

(3)濁水処理施設
大濠公園池から黒門川に通ずる既設水門のところに濁水処理施設を設けた。
沈砂池(10m×10m)・・・・・・・・・1ケ所
フロッキュレーター(薬品攪拌機)
 急速攪拌機(No.=20rpm)φ1.00・・・1基
 緩速攪拌機(No.=2.8rpm)φ1.25・・・3基
整流膜(1.50×21.5)t=0.81mm ・・・・3ケ所
整流トラフ・・・・・・・・・・・・・・1式
薬品注入施設
 無機凝集剤タンク・・・・・・・・・・1基
 高分子凝集剤タンク・・・・・・・・・1基
 炭酸ガス中和装置・・・・・・・・・・1式
既設水門・・・・・・・・・・・・・・・1基

(4)薬品注入工
薬品注入は水質管理基準値(表ー2)を満足できるように行った。
添加剤としては次のとおりである。
(a) 無機凝集剤
(b) 高分子凝集剤
(c) 炭酸ガス(   kgボンベ)

(5)海水混合施設
海水混合は,黒門川約1,200mを貯水池とし,そこで海水と池水とを9対4の割合で貯水し,黒門川下流のところで,フロキュレーター(攪拌機3台)により海水と淡水の攪拌を行い,潮の干満を利用して孤川をへて博多湾に放流するものである。
(a) 海水混合施設
黒門川と孤川に仮設水門を設置し,その前後にフロキュレーター(攪拌機)を設置した。
(b) 淡水(池水)と海水の混合
貯水池に海水を溜め,次に池水を入れてフロキュレーターによって攪拌しながら排水を行う。
但し,海水の流入量が決まっているため一日の排水量が規定された。

① 海水を溜める
貯水池(黒門川)に海水が上げ潮によって満ち,所定の高さになった時点で黒門川の水門を締める。

② 池水の排水
黒門川の仮設水門を締めた後,池水を所定の高さになるまで放流する。

③ 攪拌及び放流
貯水池(黒門川)に所定量の海水と池水が溜った後,黒門川の仮設水門を開けてフロキュレーターを回転させ,海水と淡水との攪拌混合を行いながら引き潮と同時に貯水池の海水と淡水とを排水する。

7 固化処理工
大濠公園の池水の排水が完了した後,数日間底泥の天日乾燥を行った。
池底に溜ったヘドロと固化材とを泥上車(施工機械)により混合し,運搬できるよう固化し,公園池内のーカ所を掘り下げ,固化したヘドロをそこに埋め込み,その上に砂を覆土し,整地するものである。

(1)固化材
固化材は,セメント系固化材を使用し大濠公園池のヘドロに対して,安全性,技術性の確認試験を行った後,使用した。

(2)底泥固化作業
池底は泥上車(施工機械)を搬入し,固化材プラントから固化材スラリーを泥上車まで,グラウトポンプで圧送し,ヘドロと固化材とを攪拌機の回転翼の回転により混合した。
尚,ここの池底のヘドロは,平均厚さが30cm程度と薄く,又池底には凹凸があり,品質管理に十分注意し施工した。

(3)ヘドロの化学的な特性

(4)施工機械
泥上車(MR125)・・・・・・・・・4台
泥上車(MR150)・・・・・・・・・1台
固化材スラリープラント・・・・・・・2基
グラウトポンプ・・・・・・・・・・・5台
バックホウ(0.3m3クラス)・・・・・1~2台
ブルドーザー(2~3t級)・・・・・1~2台
給水施設・・・・・・・・・・・・・・1式
発電機・・・・・・・・・・・・・・・5~7台

8 あとがき
大濠公園池改善工事は,開園以来初めて池底が見えるとあって,県民の工事に対する関心が非常に高く,訪れる人々,又マスコミ関係者の終始見守る中での施工であった。
工事施工上設置された防護柵(池全周約2,000m)には,のぞき窓を設け,工事の作業状況が見えるようにし,そして外面を利用して,地元子供会による『壁画』が約600mにわたって描かれ,訪れる人々の目を楽しませた。又,魚類捕獲にさいして捕獲した代表的なものを園内に超ミニ水族館として展示したところ,反響が良く見学者は皆感嘆していた。
しかし,捨てられた空き缶の多さにはあらためて道徳心を考えさせられたり,公園内の樹木の夏枯れは大丈夫かとか,何かと通常の工事と違った対応,対策が必要とする工事であった。
現在は,池水の放流,池底の底泥固化作業も終わり,底泥運搬,埋込み,覆土工事を施工中であり,来年3月には大濠公園池の素睛らしい景観をお見せ出来るよう最後の追込みに鋭意努力中です。

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