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国道3号 流交差点立体交差の整備効果

国土交通省 九州地方整備局 
福岡国道事務所 交通対策課長
森 山 博 文

1 はじめに
一般国道3号と主要地方道筑紫野古賀線が交差する流交差点は,昭和58年に一般国道3号香椎バイパス事業として全線4車線の平面交差で開通した。当該交差点は一日当たり約6万台の交通量があり,平日の朝・タピーク時のみならず,昼間時や休日においても交通集中による渋滞が頻発していたことから,抜本的な対策が必要であった。
そのため,平成13年度からPI型交差点緊急改良事業「九州交差点スイスイプラン」として,流交差点の立体化事業に着手し,工事着手より約2年後の平成16年3月28日に開通した。また,平成11年度より着工していた香椎バイパス6車線化工事についても,流交差点の立体化開通と併せ,香椎バイパスの全区間(古賀市舞の里~福岡市東区松香台)延長約11kmも全線開通を完了した。図-1に流交差点及び香椎バイパス(6車線化)の位置図を,写真ー1,写真ー2に開通前後の流交差点の写真を示す。
本稿では,流立体交差点開通前後に実施した調査結果で明らかになった交通流と利用者ニーズの変化をもとに,流交差点の立体化事業による整備効果をとりまとめたので報告する。

2 流交差点立体化事業
本事業では,コスト縮減,工事期間短縮を図るため,設計段階から様々な工夫を行い,約1億円のコスト削減約1年の工期短縮が図られた。
(1)主なコスト縮減の内容
最適箱数及び箱幅の検討を実施して.当初3箱桁にて計画されていた交差点上の上部工断面を,2箱桁とすることで,約7,000万円のコスト縮減を図った。また,これにより,部材数に関しても7部材減少して42部材に減少させる事が可能となり,現場エ期の短縮にも貢献した(図ー2参照)。

(2)主な工期短縮の内容
交差点部の架設に関しては,安全な施工と一般国道3号の常時供用が可能となる「手延機を用いた送り出し工法」を採用した。
また,歩道の切りまわしやバス停移動を行うことで,一般国道3号を供用しながら,道路中央に十分な施工ヤードを確保することができ,昼間施工が可能となった。

3 流交差点立体化による整備効果
流交差点立体化事業の整備効果は,開通前と開通後に実施した交通実態調査と,地域住民等へのヒアリング調査の結果から把握した。
(1)各種調査の実施
表ー1は,流交差点立体化による整備効果を把握するために実施した調査項目と調査実施日を示したものである。

(2)渋滞の解消
流交差点を先頭に北九州側に発生していた約3kmの渋滞は解消した。また,従道路である主要地方道筑紫野古賀線についても渋滞(約300m)は解消した。さらに上西郷交差点~流交差点(約3km)間の所要時間は約25分→3~6分となり,約20分短縮された(図ー3参照)。

(3)渋滞解消による経済的効果
渋滞解消が,経済的にどの程度の効果をもたらしたのかを把握するため,渋滞損失削減額とガソリン使用量削減による削減額から試算した。表ー2は,削減額の算定方法を示したものである。
試算の結果,渋滞損失削減額は年間約28億円,ガソリン使用削減量は,立体化開通前後で年間約44万リットル(約5,060万円,1リットル=115円で計算),約2割削減と見込まれる。

(4)渋滞解消による環境改善
渋滞解消が,沿道環境の改善にどの程度の効果をもたらしたのかを把握するため,二酸化炭素の削減量を試算した。表ー3は,削減量の算定方法を示したものである。
試算の結果,二酸化炭素削減量は,開通前後で年間300万t-c/年,約2割削減と見込まれる。

(5)交通安全に関する効果
流交差点では,立体交差の開通前に追突,出会い頭,及び右折時の事故が多発しており,主な事故発生の要因としては,「交差点への無理な進入」,「渋滞区間での急プレーキ,急な車線変更」などの交通錯綜が考えられた。また,流交差点周辺地域の街路では,当該交差点の渋滞を回避する迂回交通により,歩行者自転車の安全性が危惧されていた。
交差点周辺地域の住民へのヒアリング調査の結果,開通後の渋滞解消により,住民の約6割は流交差点が安全になったと回答した(図ー4参照)。主な理由として,「無理な右折車両の減少」,「赤信号での通過車両の減少」,及び「急な車線変更車両の減少」の意見が多く挙げられていた(図ー5参照)。

周辺地域の街路では,開通後の渋滞解消により,街路での主要渋滞箇所である鷺白橋交差点の渋滞解消等で,住民の約6割は街路の交通量が減少し,安全になったと回答した(図ー6参照)。また,街路での主要渋滞箇所である鷺白橋交差点の渋滞も解消した(写真ー3,写真ー4参照)。
このことから,流交差点では渋滞解消により事故発生の要因が解消され,周辺の街路では迂回交通量が減少し,安全性が向上したと考えられる。

(6)公共交通機関の利便性向上・定時性確保
一般国道3号では,宗像市と福岡市中心部を結ぶ路線バス(急行バス)が運行している。
バス運転手にヒアリング調査した結果,特に福岡市内へ向かう下り路線で,開通前にいつも遅れていたと回答した運転手(約9割)のうち,約7割は渋滞解消によりほとんど遅れなくなったと回答した。(図ー7参照)
また,ピーク時の流交差点以北のバス利用者の約6割も,「目的地に早く着けるようになった」等の理由から,バスが利用しやすくなったと回答した。(図ー8,図ー9参照)。このことから,流交差点の渋滞解消により,バスの定時性が確保され,利便性が向上したと考えられる。

4 おわりに
今後さらに広域的な実態調査アンケート調査,抜け道の交通調査等を行い,顧客満足度の向上など整備効果を把握していく予定である。
最後に,本事業を進めていくにあたり御協力頂いた沿線住民の方々,並びに各関係機関の方々に,厚く御礼申し上げます。

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