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合成桁橋におけるPC合成床版工法の工事

富士ピーエス・コンクリート㈱
福岡支店 取締役副支店長
花 田  久

富士ピーエス・コンクリート㈱
福岡支店 工事課長
白 木 英 彦

1 はじめに
近年建設工事が増大しているのと相反して現場熟練作業員の大幅な不足が深刻な問題となっている。
橋梁工事においても,鉄筋コンクリート床版の施工で型枠作業員や鉄筋作業員が不足しているため,作業の単純化,急速施工,安全施工等を主目的として,型枠兼用のPC板を用いた合成床版工法が採用されている。
1971年(昭和46年)鬼高架道橋で鋼非合成桁に埋設型枠としてPC板が初めて採用されて以来,今日まで29橋の使用実績がある。
1987年(昭和62年)には,土木学会よりPC合成床版工法設計施工指針(案)が刊行され,PC合成床版工法の技術的,経済的設計施工が可能になってきた。PC合成床版工法は,工場製品のPC板を用いるので,支保工,型枠工事を大幅に省力化することはもとより,構造面でも現場打ちコンクリート部との合成断面で抵抗させることができ,ひびわれ耐力に優れ,保守管理の点でも利点が大きい。
ここにPC合成桁と鋼合成桁にPC合成床版を採用した工事で,その施工方法について概要を報告する。

2 PC板の製作
PC板はプレテンション方式で工場内のPC板専用ベンチで製作される。
製作の流れを図ー1,写真ー1~5に示す。

3 PC板の据付
3-1 仮設備工
① PC橋の場合
PC橋では主桁架設,横桁完了後,中桁ジベル筋の上に足場板,レールを敷設し,ピラー型自走式ジブクレーン(0.5t吊)を設置する(写真一6)。

② 鋼橋の場合
鋼桁橋では主構の上にH鋼を敷き,その上にレールを敷設し,ピラー型ジブクレーン(0.5t吊)および自走式門型走行クレーン(2.5t吊)を設置する(写真ー7,8)。

3-2 PC板の据付け
① PC橋の場合
PC板の据付け部の詳細図を(図ー2)に示す。

PC桁切欠き部を清掃し,ウレタンフォーム(10×15)を切欠き部に貼付する(写真ー9)。
次にPC板と接合部にナジミをつけるため,無収縮モルタルをウレタンフォーム上面まで流し込み,PC板をジブクレーンにて据え付ける(写真ー10,11)。

接合部はPC板の重みでウレタンフォームと無収縮モルタルが圧縮され,PC板と主桁切欠きは隙間なくセットされる。
PC板継目部詳細図を(図ー3)に示す。
PC板間の継目部(図ー3)は接着材を塗布し硬めの無収縮モルタルを敷き板間の隙間をうめる。その後無収縮モルタルをA部(図ー2),B部(図ー3)の隙間にジョロで流し込みPC板の据え付けを完了する(写真ー12)。

② 鋼橋の場合
PC板の据付け部の詳細図を(図ー4)に示す。
上フランジのPC板支持部の発錆を防止するため,タールエポキシ樹脂を2回塗装し,ジョイント・フィラー(片面接着のスポンジテープ)を貼り付ける。
ジブクレーンにてPC板を据え付け,PC板のズレ止めにはスタッドジベルを利用する(写真一13)。

PC板間の継目部はPC橋の場合と同じ方法で施工し,PC板の据付けを完了する(写真一14)。

4 床版工
PC板据付け後,床版コンクリートの施工を行うが,PC橋および鋼橋とも張出し床版部については,従来の木製型枠を使用して施工する。
床版コンクリート打設前に特に注意する事項は,PC板との付着をよくするため,PC板表面を湿潤状態にした後,コンクリート打設を行うことである。

5 工事工程
PC3径間連結桁橋にPC合成床版を使用した場合と従来のRC床版を使用した場合の工事工程を比較してみる。
5-1 床版工事工程
表ー2にPC合成床版とRC床版の横桁部施工後の床版工事工程を比較している。
工程表よりわかるように,PC合成床版では床版工事の開始後21日目でコンクリート打設を行っている。
一方,RC床版の場合は33日目でコンクリート打設を行っているので,PC合成床版は3径間で12日間の短縮になっている。

5-2 全体工事工程
表ー3に全体工事工程の比較を示す。
PC合成床版で施工した場合,全体工程で約3ヶ月工期の短縮となっている。
 (施工橋長 L=405×2=810m)
RC床版の場合は型枠の転用〔養生+型枠解体・移動〕を行うため,施工径間数が多くなればなるほど施工日数を要する。
PC合成床版の場合は,PC板布設後は鉄筋組立からコンクリート打設まで連続的に施工できるため,工程の大巾な短縮は勿論の事,各作業が安全かつ連続的にできるため,作業員の人員減少にも大きなメリットがある。

6 あとがき
PC合成床版工法による工事報告書は,これまで数件出されているが,土木学会から設計施工指針(案)が刊行された後の採用例は,徐々に増えているように思われる。
床版の耐久性向上,施工の省力化・急速化・安全性向上等の長所は,これまで多くの施工例および実験,研究,確認されている。
現在,大分県においてPC合成連続桁橋にもPC合成床版工法が計画され,施工中であります。今後も関係各省庁の御理解,御指導のもとにPC合成床版工法が多数御採用いただくことを願ってやみません。

参考文献
1)佐々木・氏家・鈴木・上田:小中台高架橋におけるPC板合成床版の設計施工,橋梁 昭和55.5
2)尾原・栗川・松永:道路橋合成床版の設計・施工(山陽自動車道・速谷高架橋),コンクリート工学,Vol25,No.2 1987
3)渡辺明:床版工事の近代化とPC合成床版工法・土木学会論文集・第414号/V-12 1990.2
4)土木学会:PC合成床版工法設計施工指針(案),コンクリートライブラリー,第62号1987.3

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