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南九州西回り自動車道・鹿児島道路の全線開通について

国土交通省 鹿児島国道工事事務所
 副所長
田 中 秀 明

はじめに
「3号線はいつも混んでて時間がかかる。」「この辺は薩摩焼き,温泉,金山等豊富な観光資源に恵まれているのになかなか観光ルートに取り上げてもらえない。」そんな地域の方々の声にできるだけ早く応えたいという思いで日々事業の推進に取り組んでいる南九州西回り自動車道において,今回,鹿児島道路(市来IC~伊集院IC間,L=11.1km)が平成14年4月6日に開通しましたので,概要について報告します。

1 路線の概要
南九州西回り自動車道は,八代市を起点として水俣市,川内市等を経て鹿児島市に至る総延長約140kmの高規格幹線道路であり,完成の際は現在4時間を要する八代市~鹿児島市間を約1時間半に短縮することが可能となり,九州南西部の活性化に大きく寄与する路線として期待されています。
現在,八代市及び鹿児島市の両方から日本道路公団との合併施工により整備を進めており,既に八代JCT日奈久IC間(L=12.1km),伊集院IC~鹿児島IC間(L=11.1km)を暫定2車線で供用しています。
今回,鹿児島道路・市来IC~伊集院IC間(L=11.1km)が供用したことにより,全体の約4分の1が完成したこととなります。また,今回の開通に伴い鹿児島方面のみのサービスであった松元ICのフル化が図られました。

2 事業の特徴
鹿児島道路の整備を進めるにあたっては,昨今の公共事業批判を真摯に踏まえ,「コスト縮減」,「人に喜ばれる道路づくり」を目標として以下のような取り組みを行いました。
(1)新技術・新工法の採用
コスト縮減及び工期短縮に向けて以下の新技術・新工法を採用しました。
① 3H工法の採用
最大橋脚高がH=38mに達する飯牟礼2号橋(鋼4径間連続箱桁+トラス橋,L=365m)において,RC構造の軸方向鉄筋の代わりに高張力スパイラル筋を巻き付けた鉄骨鉄筋柱状体(スパイラルカラム)を複数本配置してコンクリートを打設し,SRC構造の中空断面高橋脚を構築する3H(Hybrid Hollow High pier)工法を採用することにより,施工性・経済性の向上を図りました。
② 耐候性鋼材の使用
今回開通区間における5つの橋梁(大里高架橋,伊作田橋,太田1号橋,飯牟礼2号橋,下谷口橋)において耐候性鋼材を使用することによりL・C・C(ライフ・サイクル・コスト)の低減を図りました。

(2)ユニバーサルデザインヘの取り組み
身障者の方々に限らずすべての方々が利用しやすい道路とするために「美山PA」において以下の取り組みを行いました。
① 一般用駐車マスの幅広化
通常は身障者用駐車マスのみを幅広化するが美山PAが暫定施工であることを活かして一般用駐車マスの幅広化を図り,一般の方の乗り降りやベビーカーの出し入れ等にも配慮しました。
② オストメイト対応器具の設置
オストメイト(人工肛門・人工膀胱増設者)の方の快適な道路利用に配慮して美山PAに専用排泄施設を設置しました。

(3)シラス法面の樹林化
当該路線は鹿児島の特徴であるシラス地帯を通過するため,切土法面の浸食を防ぎ,また沿道環境の向上に資するよう,村田秀一・山口大学副学長を委員長とする「道路シラス法面検討委員会」を設置して切土法面の樹林化に関する検討を実施し,当該区間の一部において試験施工を実施しています。

(4)地域性の演出
地域の方々が当該道路に愛着を持っていただけるように,また旅行者が地域性を感じられるように,美山PAの休憩施設の壁面に当該地域の特産品である薩摩焼の破片を埋め込んだデザインを施しました。

3 「鹿児島道路」の整備効果
(1)時間短縮効果
従来,市来町~鹿児島市間について76分要していましたが,今回,鹿児島道路・市来IC~伊集院IC間(L=11.1km)が開通したことにより,市来町から鹿児島市まで54分で到達することが可能となり約22分の時間短縮が期待されます。
(2)現道3号の渋滞緩和
慢性的な交通渋滞が発生している一般国道3号において,今回の開通区間に平行する区間において約12%の交通量の減少が確認されています。
(3) 緊急時・災害時のリダンダンシーの向上
自然災害が発生する頻度の高い鹿児島において緊急時の避難路・緊急物資輸送の確保が図られます。

4 おわりに
現在,鹿児島国道工事事務所では,引き続き川内道路の工事を展開中であり,また残る区間についても所要の調査を鋭意進めています。これからも,「早よ繋がないかんど。」という地域の方々の声を糧に,早期供用に向けて全力で取り組んで参りたいと思います。

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