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住宅地での施工の工夫、品質確保対策について
~石田橋下部工(P2 橋脚)の施工報告~
田上勝敏

キーワード:熊本北バイパス、施工の短縮、新技術の活用

1.はじめに
熊本北バイパスは、熊本東バイパス、熊本市西環状道路とともに、熊本市中心部の外周を形成する熊本環状道路の一部であり、熊本市中心部から北東に位置する、熊本都市部の交通混雑緩和・都市間の交流連携を強化し、中心市街地の活性化に寄与する道路である(図-1)。

2.石田橋の概要
石田橋(仮称)は、須屋交差点から熊本市四方寄町の国道3 号との接続地点までの延長約1.8㎞区間のうち、坪井川を跨ぐ山あいに位置している(図-2)。
橋長L=383m、幅員W=11.25m で、下部工は橋脚5 基、橋台2 基。地上からの高さは最大(坪井川付近からの高さ)で約35m となる(図-3)。

3.P2橋脚施工箇所の特徴
熊本北バイパスは、東葉山団地という閑静な住宅街の中を通過するため、P2橋脚のすぐそばには宅地が存在している(写真-1)。

4.周辺環境への対策
住宅街での施工を行なうにあたり、円滑な工事を進める為、地域住民を対象とした工事説明会を行うことにより工事への理解を深めた。又、基礎工事機械や重機だけでなくダンプトラック等運搬車両による影響も考慮し、運搬路沿いに面する家屋を含む工事影響線内の家屋に対して事前の家屋調査を実施した。
施工を行なうにあたり、現場の周囲には鋼製仮囲いと防音シートにより環境負荷の低減を図り、基礎工事を行う際には、更に大型発動発電機の周囲に吸音パネルを設置した。
施工箇所の住宅地には団地内で設置した温泉があったので、基礎工事による温泉水への影響を調査するため温泉成分の事前事後調査も行なっている(図-4)。

5.P2橋脚の施工
5-1基礎杭(鋼管ソイルセメント杭)
5-1.1鋼管ソイルセメント杭概要
本施工箇所は、施工ヤードが狭く、また被圧地下水が高いことから、施工可能な工法で経済比較を行った結果、基礎杭については、鋼管ソイルセメント杭(NETIS KT-980188)を活用することにした。
鋼管ソイルセメント杭は、現地盤に直接セメントミルクを注入混合攪拌して築造する固化体と外面突起付鋼管により構成される合成杭であり、杭施工による発生土量を最小限(杭体量の40%程度)に抑えることができる工法で、現地盤を緩めない為、周面摩擦力・先端支持力による支持力特性により杭本数を少なくすることができ、フーチングを小さくすることができることなどから工費を低減できる。又、狭小地での施工が可能な工法でもある。この工法には、固化体築造時に同時に鋼管を埋設する同時埋設方式と固化体築造後にロッド、ヘッドを引抜き、フレッシュなソイルセメント内に鋼管を建込み埋設する後埋設方式があるが、今回は後埋設方式を採用することとした(図-5)。

5-1.2施工方法の選定
P2橋脚は後埋設方式を採用したが、これは住宅街の中での施工ということで施工時間の短縮を図る為に別途溶接孔を掘削し固化体築造と平行して鋼管継手溶接を行なうことができる様にする為である。(ちなみに杭長は、L=27.2 m(鋼管杭長L=25.5m L=8m × 2 本+L=9.5m の3 本継ぎ)である。)
これにより、溶接時間の3 時間(1.5 時間× 2箇所分)を短縮することが可能となり、地元に対する環境負荷を低減することができた(図-6)。

5-1.3施工条件への対策
住宅街の中での限られたヤード内での施工ということで、杭打機組立時には隣接した市道の全面通行止めを行い、市道をまたぐ形で組立を行なった。又、杭本体の施工に関しては固化体築造時に排出される余剰ソイルセメントは固化してダンプトラックにて搬出する予定であったが、ばっ気するスペースの確保が困難であった為バキューム車により吸引し直接中間処理施設への搬出を行なう等の対策を講じた(図-7)。

5-2.橋脚躯体の施工
P2柱部は、鉄筋コンクリート中空断面形状で主鉄筋はD51 を使用している。フーチング部では群杭からの杭頭鉄筋に柱筋(D51)とその帯鉄筋(D29)が交錯し非常に過密な状態となった。その為、フーチングのスターラップ筋をTヘッドバー(NETIS KT-010018-V)を使用することによりコンクリートの充填性を改善した(図-8、9)。

本橋脚は高層橋脚であることから、施工時の安全対策として自動風速測定機を設置し、強風の時にはクレーンのオペレーターの目線の高さに設置した赤色回転灯により直接知らせるようにした(写真-2、3)。

6.コンクリートの品質確保対策
橋脚のフーチング部は、典型的なマスコンクリート構造物であり、温度ひび割れが発生する恐れがある。ひび割れの発生する要因は、条件または組合せにより多岐にわたるが、一般的な温度ひび割れは、断面の厚いマッシブな構造物の場合、構造物内部と外部の温度差により拘束(内部拘束)を受けて表面にひび割れが発生しやすい。壁状の構造物である胸壁部(柱部)は、底版に拘束され(外部拘束)、温度降下時の収縮に伴って躯体を貫通するひび割れの発生が懸念される為、対策を検討した(図- 10)。

6-1養生条件の変更
まず熱伝導率を小さくする為、散水養生から湿潤養生マット+ 散水養生に変更した。日照・風雨・気温の変動の影響を低減するには、ブルーシート等で型枠を覆うこととし、民家が近いので騒音を考慮してジェットヒーターの代わりに練炭養生を行った。又、養生マットには普通の養生マットより保水性の高い湿潤養生マットを使用した。
6-2型枠在置期間の変更
当初計画時には、型枠脱型を5 日と考えていたが8 日とし3 日延長した。
6-3新技術の活用
生コンクリート打設時にコンクリート分離低減剤モアークリート(NETIS CB-80013-A)を添加することにより、耐久性を高め、ひび割れ発生を抑制した。
コンクリートの打継目処理には、レイタンス処理によるスラッジ水の飛散防止にコンクリート打継目処理剤ジョイントエースJA-40(NETIS KT-010204-V)を散布することで水密性が高く耐久性に優れた打継ぎ目とした。
フーチング部の養生としては、初期養生後、コンクリート表面に湿潤養生マットのアクアマットS タイプ(NETIS CG-060005)を敷設し、散水養生との併用で2週間以上実施した。
橋脚柱の露出部の表面保護には、後期養生完了後にコンクリート表面に高性能浸透性吸水防止剤マジカルリペラー(NETIS TS-030006-V)を塗布することにより、耐久性の向上を図った。
以上の新技術を活用することにより、橋脚のひび割れを抑制することが出来た。

7.施工管理について
7-1帯鉄筋の地組みによる施工日数の短縮
鉄筋組立の施工日数を短縮させる為、帯鉄筋を事前に地組みしておき、クレーンで吊込み結束するようにすることで、1ロット当りの作業工程で2日程度を短縮することができ、全体工程では約10 日間短縮した(写真-4)。

7-2大組による橋脚型枠組立の施工日数の短縮
当初の計画の中で、橋脚躯体部分の型枠組立作業が1ロット当り7日を要する為、施工の安全性及び、工期短縮を考慮し、地上で大組を行いクレーンにより吊込み組立てる構造とした。
その結果、工期全体で約15 日間工程短縮した(写真-5、6)(表-1)。

8.今後の上部工施工の課題
このような品質確保対策や工期短縮を図り、無事工事を完了させることができた。
今後、上部工を施工することとなるが、P2施工箇所の地元は工事に対してかなり関心を持っているので、上部工施工においても地元説明会を開催し、施工に対する住民の理解を深めていきたいと考えている。又、施工だけでなく重量物を積載した運搬車両の通行に対しても、運搬経路上の家屋の事前調査を行うなど、地元への配慮を行う予定である。
生コン打設時やコンクリート養生時においても、風による水等の飛散防止対策を行うなど、周辺家屋へ十分な配慮を行いながら、上部工施工を行っていきたい(写真-7、8)。

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