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九州技報 第38号 巻頭言
風景デザイン研究会会長
熊本大学工学部教授
小 林 一 郎

若者は希望である。しかし,彼らにとって,社会基盤整備の仕事は,今でも魅力あるものなのだろうか。国家建設の時代は終わった。この分野は先行きに明るさの見えない時代に入った。さらに,土木技術者の職能イメージが全く見えない。たとえば,野球選手,看護婦さん,建築家等々は幼い子供でもその姿を,絵に描けそうである。地球の彫刻家とか無名碑を造る人々などと悦に入っていても,世間の目は「談合をやる悪しき集団」としか見ない。
一方,景観三法に込められた思想を読み解けば,「美しい国」を造ることが国家の目標になったのである。もちろん景観は地域の問題である。美しい地域づくりのための人材の育成が急務である。デザイナーが活き活きと地域の基盤整備の夢を語れば,あるいは,都市のビフォー・アフターをやれる技術者像がより鮮明になれば,子供たちは,そのような職業を理解するはずだし,それを志す若者も出てくるに違いない。
昨夏唐津で,九州デザインシャレット2005が開催された。これは,土木・建築・造園・ランドスケープ関連の学生が集い,1週間合宿をして,具体的な現場の計画・デザイン案をその場で出していくという研修である。九州を中心に東京,四国からも学生が集った。講師は,九州の4大学の土木系教員や建築家・造園家で,全て九州在住の方であった。さらに,このイベントがブログ(http://sblog.kyushu-dc.com)を通じて,実況中継されると,東京の大学からエールが送られたり,岐阜からは若手の教員がボランティアで駆けつけてくれた。地方の新聞やTVで話題になると,住民の中から応援団も出てきたり,差し入れの飲み物も届けられた。
連夜の模型づくりで,風邪をひく学生もでたが,それぞれに得るものの多い夏であった。最終日には東京から景観工学の篠原修教授も参加頂き,打ち上げには,唐津市長や国交省唐津港湾事務所所長も参加して頂いた。多くの皆さんの支援をいただき,シャレットは無事終了した。
この研修には,修了書を出すこととした。将来この修了証が若者たちの人生航路の良きパスポートになればと思っている。また,シャレットは九州大・熊本大・九州工大・福岡大の学生有志が企画・運営の全てを行った。1年間にわたる,困難な作業の末に開催にこぎ着けた。最初は自信なさそなう学生達であったが,実は逞しく,尊敬に値する若者たちであることを知った。
今年の夏は,熊本のどこかで第2回目の九州デザインシャレットが開催される予定である。その企画はすでに動き始めているという。重ねて言いたい。若者は希望である。そして若者は未来である。日本の未来に,ボンヤリとではあるが消えることのない希望の灯が一つともったことを実感した夏であった。

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