九州技報 第13号 巻頭言
(社)全国測量設計業団体連合会
九州地区協議会会長
九州地区協議会会長
三 浦 一 郎
平成3年10月,東京大学生産技術研究所教授・村井俊治氏を委員長とする測量ビジョン検討委員会がその検討結果を「測量ビジョン」として公表されました。測量技術者をとりまく環境の変化と現況,測量界をとりまく諸問題,測量界の目指す方向,期待される将来像についての提言であります。
測量法が制定されて40数年,測量界は各種公共事業の基礎資料等を提供し,我が国の発展に貢献してまいりました。この間,経済社会活動は大きな変化と進展をみました。具体的には次のようなものです。
◇人口…若年層の減少と高齢化◇価値観…個人,家庭重視型,文化創造・知識習得◇教育…生涯教育ニーズ増◇女性…女性パワー進出◇余暇…増大,完全週休2日制,時短傾向◇国際化…外国人労働者の増加,国際協力事業◇エネルギー…制約の方向,省力化◇環境…環境にやさしい産業◇ハイテク時代…研究費の増大◇高度情報化…データベース化,コンピュータ管理
これらの変化は,測量界にも大きな影響を及ほしています。例えば需要の面でみますと建設主体の測量は調査,災害,環境,計画,設計へ,測地・地図作成は各種情報サービスヘと変化しつつあります。質の面では,地形図作成は多様な土地情報,ディジタルマッピングヘ,生データは付加価値データヘ,測量環境の面では,若年労働者の減少,若年技術者の職場離れ,ハイレベル技術者不足,教育場面では,学生募集の困難,教官確保の困難,測量教育内容の多様化等です。
このような状況の中で,測量業の抱える問題は少なくありません。多くの測量業者は兼業を行っています。昭和63年1,133社を対象に全測連が行った兼業調査では,兼業69.7%,専業30.3%でした。測量業の規模が大きくなるに従い純粋な測量業主体からコンサルタント業,地質調査業との兼業をはかるケースが多くなっています「測量ビジョン」では,このような傾向をとらえ「この事実は非常に重要なことであり,地上測量を主体とした測量業では大きな企業への発展が望めないことを示唆しており測量の新しい方向,即ち測量のソフト化,情報化への方向を検討する必要があろう」としています。平成4年11月現在,測量登録業者数は11,600社を数えます。
このうち,資本金2,000万円未満が85%,人数2~10名の企業が約50%近く占めます。このような小企業が「測量ビジョン」に示す方向を目指すには余りにも課題が多過ぎます。
ただ,言えることは時は確実に経過していきます。現状を的確にとらえ,その対処の方法を誤らないようにしなければいけません。そのために必要な最大の条件が自助努力であることは言うまでもありませんが,測量界においても官・学・民の力を結集し,「測量ビジョン」の具体化を実現するには,どうすればよいのか,測量懇親会といったたぐいのものを設けて定期的に懇談し助言を得,その実を挙げていきたいと考えています。