九州技報 第10号 巻頭言
日本道路建設業協会九州支部長
齊 田 英 二
先の日米構造協議において,わが国は今後10年間に総額430兆円の公共投資を行う旨の合意が得られ,これを受けて政府は「公共投資基本計画」を策定されました。
世界有数の経済大国と言われながら,豊かさを実感できないという指摘が多く,その最大の理由として,経済力に見合った社会資本整備のたち遅れがあげられております。また,急速に高齢化社会の到来が予測される21世紀を前にして,投資余力のあるこの10年間に,着実に社会資本整備が行われることは,一市民としても,業界関係者の一員としても,誠に喜ばしい限りであります。
こうした事情を背景として,建設省ご当局では,平成4年度の道路整備予算として総額10兆8,700億円の概算要求を大蔵省に呈示されました。私ども日本道路建設業協会といたしましても,本年7月に第10次道路整備五箇年計画の完全達成のために,平成4年度の道路整備費の飛躍的な拡大を図っていただきたい旨の陳情を行ったところであります。とくに平成4年度は,総額53兆円の規模で昭和63年度にスタートした第10次五箇年計画の最終年度として,その達成にむけての重要な年であります。生活関連重点化枠,さらに新たに設けられた公共投資充実臨時特別措置などの関連予算を含めた大型投資による道路整備によって,高品質の社会資本を次世代に引きつぐべく,我々業界も最善の努力を傾けたいと念願しているところであります。
ご承知のとおり九州は,道路の整備が非常に遅れております。高速道路につきましては整備計画1,500kmのうち,これまでの供用区間は600kmで,達成率40%という状況であります。一般国道の整備率にいたしましても,全国平均を10%ほど下回っているとお聞きしております。“九州は一つ”をモットーに,九州縦貫自動車道,九州横断自動車道長崎大分線の全線開通,さらには東九州自動車道,九州横断自動車道延岡線の早期着工にむけて,私ども道路建設業協会は,官民一体となって運動を展開してまいりたい所存であります。
一方,道路建設業界は,いま,かつて経験したことのない「激動の時代」を迎えております。労働力の不足の問題,魅力ある建設業への脱皮,地価の高騰による用地難からくる将来需要の見通しの不透明さなどなど,改善すべき多くの課題を抱えております。中でも,中堅技術者,現場作業員の不足は深刻で,労働時間の短縮,あるいは週休2日制の導入に関するパンフレットづくりなど,協会としても,企業としても,打開策を講じているところであります。建設省では,工事施工の平準化,官・学・産の3者合同の技術開発など,社会トレンドの変化に対応した建設行政に力を注いでおられます。日本道路建設業協会といたしましても,道路工事の生産性の向上を図るため,従来にも増した努力を傾注する所存であります。