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予測不可能性の高い時代における土木技術のありよう

(一社) 九州建設技術管理協会 学術顧問・理事
九州大学名誉教授
安 福 規 之

私たちは、「地球規模の問題」と「情報革命」に直面し、非連続な変化がいつどこで起こるかわからない時代を生きているように思える。実態として、今世紀になり、過去に例がないほどの猛暑、豪雨などの異常気象が地球規模で頻発している。特に地球温暖化に起因した気候変動に対峙するためのSDGs(SustainableDevelopment of Goals) に謳われている脱炭素社会に向けた取り組みや大規模災害に備えた防災・減災への対応は、建設業界全体としての喫緊の課題であろう。さらに、日本の場合、社会問題として急激な人口減少、少子高齢化が進み、建設分野では技術者(働き手)不足は常態化すると考えられている。このため、情報革命の恩恵であるDX(Digital Transformation)の推進、新技術の積極的な開発、活用などを通して労働生産性の向上を図るとともに、魅力的で活力のある「建設分野」であるための働き方改革を実践し、時代の変化に適応した人財の確保や育成は焦眉の急を要している。
このような認識の下で、私は、この15年ほど、現在の所属先である協会が事務局を務める産学官の建設技術交流会に関わらせていただいている。この交流会では、「新技術の活用」、「人材育成」、「DX と防災」、「働き方改革」など時機にあったテーマを適宜選択し、基調講演やパネルディスカッション(意見交換会)を定期的に行い、産学官の連携について継続的に議論を深めている。興味をお持ちの読者の皆様には是非ご参加いただき、議論に加わっていただければこの上ない喜びである。本稿では、紙面の都合があるので、活力ある建設業界に向けた新技術とその評価のありように焦点を絞り、思うところを述べ、これからの土木技術について考えたい。
土木技術には、「ものづくり」と「しくみづくり」に関する要素があり、それらが有機的に機能することで、その技術はよりよく実質化される*)。ものづくりの要素がモノの創案・製造にかかわる個の技術、しくみづくりの要素が、例えば、システムや技術基準・指針などモノの使い方や使われ方にかかわる体系の技術と考えると、開発される土木技術は、二つの要素のかかわりの程度によって特徴づけられることになる。加えて、同じ技術であっても二つの要素のかかわり方や重視のされ方は、時代に応じて変化すると考えるのが合理的である。このため、公的な機関等、技術を評価する側のしくみは、客観性、公平性を確保しつつ、技術の特徴を適切かつ迅速に評価できるような柔軟なものであることが必要であるが、現状はどうであろうか。また、若者や社会にとって魅力的で活力のある建設分野であるためには、評価された技術が積極的かつ適正に使われ、そのことがきっかけとなり、次なる土木技術としての「ことづくり」にチャレンジできるような環境を整えることが極めて大切である。その結果が、新たな価値を持続的に生み出す確かなしくみとなり、スパイラルアップな社会、若い世代の入職促進に具体的に結びつくよう、我々にはより一層の努力が求められている。
私は、大学での学究生活の最後の2年間、学生の就職担当を経験した。その中でのコミュニケーションを通しての気づきを簡単に紹介し、まとめとしたい。学生たちは、話すとよく、土木技術者としての「働きやすさ」と「働きがい」についての質問をしてきた。意識の高い学生は、両方を満足できるような職場環境を求めている。働き方改革の真っただ中の今こそ、産学官で知恵をしぼり、そうした場や環境を提供できる枠組みを九州発で発信したいものである。
*: 落合英俊, “ ものづくり、しくみづくりと技術者教育”, 基礎工, 第1号, 2002年

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