一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
半導体関連企業集積地(セミコンテクノパーク)周辺の道路整備

熊本県 土木部 道路整備課
半導体集積地道路整備班 
主任技師
林 野 将 大

キーワード:道路整備、交通渋滞対策、通勤時間帯

1.はじめに
令和3年11月、世界的半導体企業であるTSMC(台湾積体電路製造)が熊本県の北部地域に位置するセミコンテクノパークの南側に進出することが決定した。
セミコンテクノパーク周辺地域では、従前より、通勤時間帯を中心に激しい交通渋滞が発生しており、TSMCの進出を契機とした半導体関連企業の集積に伴い、交通渋滞対策は喫緊の課題となった。このため、県では、企業集積等に伴い新たに発生する交通需要を見据え、将来の基幹となる道路ネットワークの中から、優先度の高い路線を選定し、道路整備を進めている。
そうした中、当該地域では、JASM の第1工場が令和6年12月から量産を開始し、さらに第2工場の建設も決定され、第1工場の東側への建屋建設が令和7年内に始まる等、周辺の開発が進んでおり、交通円滑化に向けた道路ネットワークの早期構築が求められている。
今後、国家プロジェクトであるTSMCの進出を契機とした「新生シリコンアイランド九州」の実現につなげ、その効果を九州はもとより日本全体に波及させるためには、周辺道路整備を短期間で進め、半導体生産拠点に関連する物流・人流の効率化や円滑化を図る必要がある。
本投稿では、これらの課題解決に向けた道路整備の取り組み等について、紹介する。

※ J A S M : Japan Advanced Semiconductor Manufacturing 株式会社
TSMCを筆頭株主とし、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社、株式会社デンソー及びトヨタ自動車株式会社を株主とする合弁会社

2.セミコンテクノパーク周辺の渋滞状況
セミコンテクノパーク周辺は、熊本県の北部地域にある合志市、菊陽町、大津町の市町境付近に位置している。
図- 1 は、県北地域の幹線道路における令和5年から令和6年の朝ピーク時の交通渋滞状況になる。セミコンテクノパーク周辺では、セミコンテクノパークに向かう方向の車で長い渋滞が主要な交差点で発生し、特に県道30号線の大津植木線や菊陽町の原水交差点、国道325号室北交差点において、激しい渋滞が発生している。

図1 交通状況調査結果(「令和6年度 第1回 熊本県交通渋滞対策協議会」資料から抜粋)

写真-1 は、国道57号と菊陽町道南方みなみかた大人足おおひとがし線の朝7時台から8時台の渋滞状況の写真になる。TSMC進出を契機とした半導体企業の集積により、交通渋滞が悪化している状況を示している。

写真1 渋滞状況

3.渋滞解消推進本部について
熊本県では、TSMCの進出を受け、令和3年11月に「半導体産業集積強化推進本部」を設置し、その下部組織の「渋滞・交通アクセス対策部会」で渋滞対策の取組を進めてきた。令和6年度からは、木村知事のもと、県政の重要課題に対し、関係部局が連携して、より専門的・機動的に取組を推進するため、テーマごとに部局横断的な推進本部を設置した。これに伴い、「半導体産業集積強化推進本部」の体制も見直し、新たに設置された「渋滞解消推進本部」の中で、セミコンテクノパーク周辺の渋滞対策や熊本都市圏の渋滞対策の取組を推進していくこととなった(図- 2)。

図2 半導体産業集積強化推進本部の見直し

4.道路整備の概要について
現在、取り組んでいる道路整備について、紹介する。図- 3 は、セミコンテクノパーク周辺の道路ネットワークを示した図になるが、TSMCの進出を契機とした半導体関連企業の集積に伴う新たな交通需要に対応するため、将来の基幹となるネットワーク(図のピンク)の中から、特に優先して取り組む箇所(図の黄色)を選定し、令和5年度に新たに国に創設していただいた「地域産業構造転換インフラ整備交付金」を活用し、市町と連携して短期・集中的に取り組むこととしている。

図3 セミコンテクノパーク周辺の道路整備

まず、県の事業箇所は、緑の文字で旗揚げしている区間になる。
初めに、①県道大津植木線(原水工区)は、JASM 第1 第2工場前を東西に通る道路であり、世界有数の半導体集積の玄関口にふさわしいシンボルロードとして、将来の企業集積等も考慮し、6車線化も可能な幅員で計画を進めている(写真- 2、3)。また、③大津植木線(原水2工区)は、より円滑な交通を確保するため、大津植木線(原水工区)と交差する主要な交差点の立体化を行う計画である(写真- 4)。

写真2 JASM第1工場

写真3 大津植木線多車線化完成イメージ

写真4 大津植木線多車線化の立体交差イメージ

次に、②大津植木線(福原工区)「合志インターチェンジアクセス道路」は、国道57号と中九州横断道路に設置される合志ICの間を結び、南北方向の道路ネットワークを強化する道路の計画である。
次に、④熊本大津線(竹迫工区)は、国が整備を進めている中九州横断道路の合志ICと大津西ICの間に新たなICを設置し、新たなICと企業集積地を結ぶアクセス道路の検討を進めている。
次に、⑥新山原水線は、都市計画道路菊陽空港線として、国道57号からJR豊肥本線を高架で跨ぎセミコンテクノパークまでを南北に結ぶ新たな縦軸として、菊陽町事業と連携し、令和8年度の供用に向けて取り組んでいる。
最後に⑤国道387号(須屋工区)は、熊本市方面からの4車線道路が2車線に絞られる、いわゆるボトルネック箇所(写真- 5)の4車線化整備を進める計画であり、九州縦貫自動車道を交差するため、現在、NEXCO西日本との協議を行いながら道路詳細設計を進めている。

写真5 国道387号(須屋工区)と九州縦貫自動車道との交差箇所

次に、周辺市町の合志市、菊陽町、大津町が取り組んでいる道路整備について、紹介する。事業箇所は、図- 3 に青色で旗揚げしている区間になる。
初めに、①竹迫第二テクノ線は、合志ICアクセス道路からセミコンテクノパーク地区を東西に結ぶ合志市道で、既存の2車線道路を4車線化する計画である。
次に、②菊陽空港線は、県事業⑥でも説明したとおり、国道57号とセミコンテクノパークを南北に結ぶ道路を新設するもので、南側を県事業で北側を菊陽町事業で整備し、令和8年度の供用に向けて取り組んでいる。
次に、③下大谷1号線は、TSMCの第1工場の西側を通る菊陽町道で、既存の現道2車線道路を4車線化する計画である。
次に、④南方大人足線は、国道57号とセミコンテクノパーク地区を南北に結ぶ菊陽町道であり、現在、国道443号からのルートとともに、セミコンテクノパークまでの南北の主要なルートとなっており、現道拡幅で4車線化を計画している。
次に、⑤下原堀川線は、県の合志ICアクセス道路の南側に接続する菊陽町道であり、県事業と併せた4車線化の計画で、県の事業と一体的に整備をするため、町からの受託事業で県が整備を進めている。
最後に、⑥三吉原北出口線は、県事業①の大津植木線多車線化の東側の室北交差点につながる大津町道であり、既存の2車線道路を4車線化する計画である。
また、国においても、中九州横断道路(熊本大津道路)の早期完成に向けて、集中的に整備に取り組んでいただいており、国と周辺市町と県とが連携し、一帯の道路整備に取り組んでいる。

5.大津植木線(原水工区)の整備状況
前項で述べた取組の中から、大津植木線(原水工区)の状況について説明する。本路線は、将来の企業集積等も考慮しながら、多車線化整備を行う事業であり、国道325号を起点とし、西側へ4.7kmの区間の整備を進めている(図- 4、5)。

図4 大津植木線(原水工区)

図5 大津植木線(原水工区)標準断面図

本事業は、令和10年度(2028年)の完成を目指し、事業を進めているところであり、令和6年9月に都市計画法の事業認可を受け、翌10月から用地取得を進めている。また、令和7年5月には、大津植木線と菊陽空港線との交差部の工事を契約しており、引き続き、用地取得や工事を進め、スピード感を持って取り組んでいく。

6.早期整備を進めるための取組について
半導体関連産業の集積地域における渋滞解消に向けた基幹道路の整備を進めるため、令和6年4月から、県庁道路整備課に「半導体集積地道路整備班」、県の出先機関である県北広域本部に「工務第二課」、「用地第三課」をそれぞれ新設し、早期整備が実施できる体制を強化した。

7.道路整備を進めるうえでの課題
道路整備を進めるうえでの課題等を少し紹介する。まず、現場のスピード感である。先程紹介した道路整備も短期・集中的に進めているが、民間の開発はスピードがさらに速い。そのため、渋滞緩和に即効性のある短期対策として、交差点改良や信号制御の最適化及びバス停車時の後続車阻害解消を目的としたバスベイ設置等を3年以内に完了することを目標とし、短期対策も並行して進めている。
次に、セミコンテクノパーク周辺の土地価格等の上昇がある。土地価格は、年2 ~ 3割程度上がっている状況であり、今後もその傾向が続くことが予想され、地権者との用地買収価格が折り合わないことなどが懸念されており、引き続き、粘り強い用地交渉を行っていく必要がある。
その他、道路整備に伴う農地減少の問題や地下水涵養対策、広範囲における文化財調査等多くの課題があり、これらを解決しつつ、短期間で整備を進める必要がある。

8.おわりに
TSMC進出を契機とした半導体関連産業の集積により、産業振興・経済成長が期待されている。今後、この効果を県内全域、そして九州はもとより日本全体に波及させるためにも、周辺道路整備を集中的に進める必要がある。我が国の経済安全保障の一翼を担う覚悟で、今後も引き続き、国や地元自治体と連携しながら、全力で取り組んでいきたい。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧