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合志こうし菊陽きくよう地域における地域連携の渋滞対策
~半導体関連企業が集積する地域での官民一体
となった渋滞対策の取組み事例紹介~

国土交通省 九州地方整備局
熊本河川国道事務所
計画課 調査係
蓑 毛 渉

キーワード:渋滞対策、企業集積地、官民連携

1.はじめに
熊本県の北東部に位置する合志・菊陽地域は、近年の大規模半導体工場及び関連企業の進出によりセミコンテクノパーク周辺の通勤需要が増加し、周辺地域での交通渋滞が深刻化している。
そこで、本稿では合志・菊陽地域で交通渋滞状況の把握及び解消を目的に行われている官民一体となった渋滞対策の取組みについて報告する。

2.合志・菊陽地域の概要
(1)地域特性
合志・菊陽地域は、熊本県熊本市の北東部に隣接している熊本県合志市、菊陽町、大津町を中心とする地域である。当該地域は、熊本市からのアクセスが容易であることに加えて、菊陽町南部には阿蘇くまもと空港が立地していることから、熊本県内でも比較的利便性の高い地域である(図- 1)。
また、阿蘇の西側に位置しており、豊富な地下水という水資源を有する地域である。

図1 位置図

(2)半導体関連企業の集積
当該地域は半導体製造に必要不可欠な豊富な水資源や土地の確保が容易であるため、大量の水を使用し広大な土地を必要とする半導体企業が昭和50年代後半頃から進出している地域である。
さらに、令和3年に半導体受託生産で世界トップシェアのTSMC社が出資するJASM社の工場建設が発表され、令和4年に建設を開始し、令和6年12月には量産を開始した(写真- 1)。また、令和9年末の稼働開始に向けて、第二工場の造成も開始されている。それに伴い、半導体関連企業の集積が進み、従業員等の通勤需要が急増したため、交通渋滞が顕著となっている(写真- 2)。

写真1 JASM社(第一工場)の外観

写真2 セミコンテクノパーク周辺の交通渋滞

3.官民一体での渋滞対策
(1)渋滞に関する協議会
国、県、市、警察、道路利用者等で構成される熊本県交通渋滞対策協議会(以下、渋滞協)において、熊本県内の渋滞対策を効率的に進めていくために、渋滞箇所の的確な把握について検討してきた。平成24年度には、ETC2.0プローブ情報(以下、ETC2.0)を活用したデータや道路利用者からのパブリックコメントに基づき、309箇所の主要渋滞箇所を選定・公表した。平成25年度には熊本都市圏エリアワーキング(以下、エリアWG)を設立し、県全体及び地域毎の基本方針や渋滞対策マネジメントサイクルを整理し、平成27年度以降に主要渋滞箇所のモニタリングを継続実施している(図- 2)。

図2 主要渋滞箇所選定後の検討経緯

当該地域では令和3年にJASM社の工場建設が発表されて以降の交通状況変化に対応するため、令和5年度から合志・菊陽地域の交通状況についてETC2.0を用いて分析した経年変化等を共有しながら、各者が連携して情報共有・議論を実施している(図- 3)。

図3 渋滞協・エリアWGの関係

(2)渋滞状況の把握・共有
渋滞協・エリアWGではETC2.0を用いて、合志・菊陽地域における面的な旅行速度図の作成及び分析を行うことにより、交通状況の変化や実情について分析・共有を行った(図- 4)。他にも、菊陽町などの自治体が実施した交通状況調査結果の共有を行うなど、各者が保有しているデータや調査結果を用いて最新の渋滞状況について把握、共有を行った。

図4 面的な旅行速度図

(3)実施施策の情報共有
当該地域では半導体関連企業の集積に伴い、今後の対策方針等について、各者が独自に検討を行っている。そこで、エリアWGでは各者の情報を統合したロードマップや各事業による対策効果をとりまとめ、各者の動きを情報共有したうえで渋滞対策を進めている(図- 5)

図5 各主体の連携によるロードマップ

(4)直轄国道上におけるハード対策
当該地域には大分市と長崎市を結ぶ一般国道57号があり、菊陽町内に位置する南方みなみがた交差点では、朝ピーク時や夕ピーク時に従道路の町道南方みなみがた大人足おおひとがし線を経由して熊本市方面とセミコンテクノパーク方面を往来する車による渋滞が発生している(図- 6)。
そこで、渋滞対策として令和6年12月に国道57号上り線の左折レーン新設と、町道南方大人足線の右折車線の延伸及び増設による渋滞対策を行った(図- 6)

図6 国道57号交差点改良の内容

対策により、朝8時台には国道57号上りで左折車による阻害の影響を受けていた直進車の旅行速度が約13km/h向上する等の速度向上の効果が確認できた(図- 7)。

図7 国道57号上り直進車旅行速度

また、国道57号上りにおける朝ピーク時の最大滞留長が、680mから25mに大幅に短縮し、町道南方大人足線のセミコンテクノパーク方面から流入する車両の夕ピーク時における最大滞留長も375mから155mに短縮したことから滞留長短縮の効果が確認できた(図- 8)。

図8 滞留長の短縮効果

(5)当該地域におけるソフト施策
当該地域では、急速な交通状況の変化に対応するため各自治体や企業が中心となりソフト施策を実施している(図- 9)。

図9 当該地域におけるソフト施策一覧

セミコンテクノパークへの渋滞緩和を図るため、菊陽町ではJR原水駅とセミコンテクノパークを結ぶセミコン通勤バスを平成27年度から運行している。利用者数は増加傾向にあり、令和5年度はJASM経由ルートの新設や平日限定だった運行を土日祝日に拡大したため、1日あたり平均千人を超える利用者がいる(図- 10、図- 11)。

図10 セミコン通勤バスルート

図11 セミコン通勤バスの利用状況(菊陽町)

また、熊本県では当該地域の西側からセミコンテクノパークを結ぶ無料の通勤バス実証実験を令和5年9月に行い、1日あたり165名の利用があった。その後、運賃を有償とし、運行区間も延伸して令和6年1月から2月に再度実証実験を行い、1日あたり52名の利用があった(表- 1、図- 12)

表1 通勤バス実証実験概要

図12 通勤バス実証実験区間(熊本県)

大津町と本田技研工業(株)などでは、令和5年12月の平日5日間にJR 肥後大津駅と本田技研工業(株)を結ぶ通勤バスの実証実験を行い、平均で朝163名、夕方155名の利用者があった(表- 2)。
また、令和6年10月から本田技研工業(株)敷地内に停留所3箇所増設するなどの変更を行い、概ね3年間の運行を開始している。

表2 実証実験時の便別利用者数

他にも、民間の取組みとして、東京エレクトロン九州(株)では、時差出勤の取組みを実施している(表- 3)。

表3 企業による時差出勤の取組み

これらの各者の取組み内容や効果検証結果等を渋滞協やエリアWGにおいて共有を行い、当該地域におけるソフト施策の推進を図った。

4.おわりに
合志・菊陽地域では半導体関連企業の集積に伴い、交通状況が急速に変化し、渋滞対策への関心の高まりにより、各者による渋滞対策が実施されている。そこで、渋滞協やエリアWGにおいて渋滞や対策の状況等について共有・議論を行い、地域で連携した渋滞対策を実施してきた。
渋滞対策における手法として、物理的な対策であるハード施策が挙げられるが、完成には期間を要するため、通勤バスや時差出勤などのソフト施策も短期的施策として求められる。
当該地域では今後もJASM社の第二工場建設や関連企業の工場増設等の開発が予定されており、渋滞協やエリアWGを通じた官民連携で情報共有及び対策を行い、渋滞解消に向けて引き続き取組みを実施していきたい。

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