令和6年度の災害対応について
~九州管内における災害対応~
~九州管内における災害対応~
国土交通省 九州地方整備局
防災室長
防災室長
坂 本 二 俊
キーワード:防災、南海トラフ地震、風水害、地震災害、山林火災、TEC- FORCE
1.はじめに
我が国は、国土の位置、地形、地質および気象などの環境条件によって、暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、噴火、地すべりなどの自然災害が多い国である。近年、全国各地で自然災害が激甚化・頻発化し、毎年のように甚大な被害が発生しています。
特に、九州は気候変動の影響を受けやすく、平成29年の九州北部豪雨から7年連続で大規模な水害に見舞われ、甚大な被害が発生している。令和5年7月9日から10日にかけて発生した豪雨では、筑後川支川巨瀬川が氾濫し約3,000 戸以上の浸水被害が発生している。雨による被害だけではなく、地震による被害もまた大きく、平成28年4月熊本地震を始め、令和6年8月には宮崎県日向灘で震度6弱の地震が発生し、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表されたところである。
2.九州地方整備局の防災体制
(1)防災体制について
災害が発生または発生のおそれがある場合、九州地方整備局では災害対策本部を設置し、災害対応を行います。また、災害対策本部のほか、地方公共団体等からの支援要請等や、他地方整備局への応援要請により、災害対策用機械や資材の貸与や、リエゾンやTEC-FORCE等の人的支援を行う場合には、災害等支援本部や応援対策本部を設置します。なお、災害の規模・対応内容により、注意体制・警戒体制・非常体制の体制をとり、災害対応を行う災害の種類は地震災害、津波災害、風水害、火山災害、雪害、海上災害、河川水質事故、港湾危険物等災害、原子力災害、大規模火事等災害、道路災害、全11 種類、有ります。
3.令和6年度の災害について
(1)1年を通しての災害
九州で発生した地震は、4月の宮崎県南部地方での震度5弱をはじめ、豊後水道で震度5弱の地震が発生し、熊本県芦北地方並びに宮崎県北部で震度4が発生、8月には宮崎県日向灘沖では震度6弱が発生し、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表されました。その後、1月には日向灘を震源とする震度5弱の地震も発生しました。
風水害では、6月中旬から7月上旬の梅雨前線に伴う豪雨、8月下旬には台風第10号等、10月下旬、11月上旬にも宮崎県、長崎県、佐賀県、福岡県で季節はずれの大雨となりました。
冬期においては度々、大雪注意報が発表され、多くの道路事務所では雪害対応を行っております。
そして令和7年3月、4月においては、全国的に山林火災が多発しており、九州地方でも、宮崎県並びに長崎県で山林火災が発生しております。
なお、地震・風水害等の自然災害以外においても、鳥インフルエンザ対応をしており、1年を通して災害対応を行った年となりました(図- 1)。

(2)地震災害
令和6年度の地震災害で注目すべきなのは、8月に発生した日向灘地震です。8月8日16時42分、宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1 の地震が発生しました。
宮崎県日南市で震度6弱、宮崎市や都城市、串間市、鹿児島県大崎町で震度5強を観測し、その他宮崎県・鹿児島県各地で震度5弱を観測しました。宮崎市の宮崎港では50センチの津波を観測するなど、九州から四国の各地に津波が到達しました。
その後、気象庁は南海トラフ地震の想定震源域で大規模地震が発生する可能性が平常時と比べて相対的に高まっているとして「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。
臨時情報の発表は平成29年11月に気象庁が運用を開始以来、初となります。
地震の被害としては、国道220号宮崎県日南市において、落石(写真- 1)が発生し、8月8日17時40分から延長約11.2kmの全面通行止めを実施しました。落石除去は、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されている中、安全な施工を確保するため、簡易遠隔操縦装置(写真- 2)を用いて、落石の撤去を実施しました。


また、港湾施設における被害も発生しており、宮崎県日南市油津港にて、荷捌き地の液状化や岸壁のひび割れ、また鹿児島県志布志港では、野積場の液状化の被害がありました(写真- 3、4)。

(3)風水害
例年大規模な水害に見舞われる九州ですが、令和6年度においても被害は大きいものとなりました。
8月に非常に強い台風(中心気圧935hPa)に発達した台風第10号は、29日8時頃に鹿児島県薩摩川内市付近に上陸し、熊本県、大分県と九州を横断しました。通過速度が10km/hと非常にゆっくりとした速度であったため、各地に大雨・強風や高潮・波浪による被害が生じ、道路被害による孤立が発生しました(写真―5)。

九州地方整備局は28日に非常体制を発令し、同日には国土交通大臣をはじめとした、国土交通本省とのテレビ会議を実施し、29日・30日の被害状況等の情報共有を図りました(写真- 6)。

10月22日15時07分には季節外れの線状降水帯が宮崎県に発生し、21日から22日にかけては鹿児島県、宮崎県、大分県に記録的短時間大雨情報が発表されました。この大雨により宮崎県延岡市浦城地区にて、土砂崩れによる家屋倒壊を被りました(写真―7)。

(4)雪害
九州でも山間部や九州北部においては、積雪の対応を行っています。
令和7年2月4日では九州各地で大雪が降り、各地で全面通行止めとなり、協定業者と連携した凍結防止剤散布や除雪作業を行い、ライフラインの確保を行いました。九州地方整備局では車両滞留が起こった際、乗員保護を行う準備をしておりますが、令和6年度の雪害対応では、協定業者との連携による速やかな通行止めの解消により、乗員保護の実施は有りませんでした(写真- 8、9)。


(5)山林火災
令和6年度は全国的に山火事が頻発しており、九州でも、令和7年3月25日に宮崎市鏡洲で、山林火災が発生しました。九州地方整備局では、情報収集のため、宮崎県庁へリエゾンを派遣し、情報連絡体制を構築しました。宮崎県より支援要請はありませんでしたが、消火用の取水地点の調整などを行い、体制を整えました(写真- 10)。

なお、翌月の4月7日には、長崎県五島市松山町で山林火災が発生しました。九州地方整備局では、長崎県庁とホットラインを結び、情報連絡体制を構築しました。
このように、山林火災による被害も近年注目されてきています。
4.災害対応について
(1)TEC – FORCE(緊急災害対策派遣隊)
大規模な自然災害への備えとして、迅速に地方公共団体等への支援が行えるよう、平成20年4月にTEC-FORCEが創設され、国土交通本省災害対策本部長等の指揮命令のもと、被災地に隊員を派遣し、「被災状況の迅速な把握」、「被災の発生及び拡大の防止」、「被災地の早期復旧」などに取り組むことで、地方公共団体等の支援を行っています。
全国で約17,000名(うち九州地方整備局で約1,300名)以上の職員がTEC-FORCE隊員に登録され、令和7年3月末時点で、150災害に派遣され、延べ約16万3千人を超える隊員が活動しています。
令和6年度においても台風第10号では、防災ヘリ「はるかぜ」による上空からの被災状況調査や、TEC-FORCE隊員を出動させ鹿児島県出水市での被災状況調査や映像伝送・通信確保を行いました。各県庁や自治体へリエゾンを派遣しています(図- 2)。

(2)災害対策車の派遣
広範囲に浸水した地域では、TEC-FORCE活動として排水ポンプ車を派遣し緊急排水を行い、応急復旧のための緊急車両の進入路・避難路を早期に確保しています。台風第10号においては大分県佐伯市、宮崎県宮崎市、延岡市、西都市などに排水ポンプ車を派遣しています。また、鹿児島県出水市においては、衛星通信車を派遣しています(図- 3)。

5.今後の災害対応に向けて
ここまで述べましたように災害のリスクが高い九州では、さらなる世界的な気象変動も危惧される中、南海トラフ巨大地震や福岡直下型地震への備えも進めているところです。国民の生命と財産を守り、被害を最小化させ、早期の復旧・復興が実現させるための体制や仕組み整えています。大規模な災害に対してこれまで以上に、行政や関係機関、学識者などあらゆる関係者が連携して“ 総力戦” で取り組めるように、九州地方整備局としてもしっかりと備え、役割を担っていきます。