頻発する激甚災害に向き合い生活を支える
九州のインフラ
九州のインフラ
(前)国土交通省 九州地方整備局 局長
森 戸 義 貴
九州は、地形、地質、気象等の自然条件から災害が発生しやすく、平成29年の九州北部豪雨以降令和5年まで7年連続で大規模な浸水被害が発生しています。
本年1月1日に発生した能登半島地震においては、1月3日に港湾班が当局所有の「海翔丸」に支援物資を積んで出航、これ以後、テックフォース隊員を派遣し、道路、河川をはじめとする被災調査等を行い、3月末まで延べ2270名の隊員が現地で対応にあたりました。中でも当局テックフォースではドローンの操縦に秀でた隊員を擁しており、まとまったドローン班の出動は当局における特色であり、被災地では上空からの撮影、映像データの処理にAI を活用、VRを用いた情報の公開・共有等、デジタルを用いた新たな災害調査を実施しました。
昨今の頻発する激甚災害に対応する治水対策の強化が急務です。ハード整備の加速化、充実化や治水計画の見直しに加え、上流下流や本川支川の流域全体を俯瞰し、国や流域自治体、企業・住民等、あらゆる関係者が協働して取り組む流域治水を進めていく必要があります。本年3月には気候変動を踏まえた流域治水の取り組みを更に加速化・深化させる為、九州20水系で「流域治水プロジェクト2.0」を策定しました。
また、防災・減災にとどまらない九州内のインフラ整備として、九州中央自動車道、東九州自動車道等九州の南北・東西軸を繋ぐ「クロス」の道路を中心に、「リング」で新たに連携する高規格道路ネットワークの整備を推進しています。災害時には強靱で信頼性の高い道路として機能することは元より、沿線地域では、企業誘致や新規雇用の促進、物流拠点へのアクセス強化等が期待されます。また、経済安全保障を担う国家プロジェクトとして、世界的半導体企業であるTSMCの新工場が日本で初めて熊本県菊陽町に建設され、第2工場の建設も決定されたところであり、「新生シリコンアイランド九州」を実現し、その効果を九州全体に波及させる為にも、スピード感を持って道路整備に取り組んで参ります。
建設産業は、地域の安全・安心を確保する「地域の守り手」として大変重要な役割を担っていますが、
建設業に従事する者の高齢化の進行や若年入職者の減少が続いており、担い手の確保・育成が喫緊の課題です。また、本年4月から建設業においても時間外労働の上限規制が適用開始されており、長時間労働を是正していかなければなりません。
担い手の確保、また若い人達が希望をもって働けるよう、週休2日制の推進等「働き方改革」、CCUSの更なる普及促進等「処遇改善」、i-Construction2.0、建設DX 等「生産性向上」の取組、インフラツーリズムをはじめとする建設業の魅力を向上させるイベントを更に推進して参ります。
頻発・激甚化する自然災害に対応する為、国土強靭化、社会インフラの整備を進めるとともに、デジタルをフル活用した災害発生時の対応力の強化、生産性向上を進めることにより安全安心な地域社会を支える社会資本の整備に取り組んで参ります。