国道220号宮崎南バイパスにおけるコンクリート舗装の施工事例
国土交通省 九州地方整備局
宮崎河川国道事務所
道路管理第二課長
宮崎河川国道事務所
道路管理第二課長
伊 藤 直 哉
国土交通省 九州地方整備局
宮崎河川国道事務所
宮崎維持出張所長
宮崎河川国道事務所
宮崎維持出張所長
斉 藤 収 功
キーワード:舗装修繕、連続鉄筋コンクリート、長寿命化
1.はじめに
国道220号南バイパス(宮崎市郡司分甲地区(図- 1))において実施したコンクリート舗装工事について報告するものである。
国道220号は宮崎県宮崎市から鹿児島県霧島市を結ぶ主要幹線道路であり、当該施工箇所の既設舗装はアスファルト舗装で昭和62年に片側2車線の4車線バイパスが開通して以来約40年が経過するとともに、交通量約21,000台/日で大型車交通量約1,600台/日となっていることから、舗装の経年劣化が進んでいる。
当事務所で管理する道路延長は約230kmで、アスファルトの塑性変形による流動化やわだち掘れ等によるポットホ-ル補修など年間約1,800件程度の応急処理を実施しているため、耐久性を備えた舗装の長寿命化は喫緊の課題となっており、ライフサイクルコストも踏まえて検討し舗装修繕を実施したものである(図- 2)。
2.コンクリート舗装を採用した経緯
耐久性の高いコンクリート舗装を採用するにあたっては、①不等沈下等のリスクのない地盤であること②施工時の通行止め期間が通常のアスファルト舗装に比べて長期間となるため周辺に迂回路設定が可能であり道路交通網の変化による社会的影響が少ないこと③道路に電気やガス、水道管などの地下埋設物がなく将来の掘り返しの可能性が少ないこと④沿道に住宅や店舗、公共施設等がなく騒音対策への懸念が少ないこと等の条件を総合的に判断する必要がある(図- 3)。
当該施工箇所においては、沿道に住宅等がなく一部取付道路はあるものの迂回が可能であり、取付道路利用者にご理解を頂けたこと、また本線通行車両は4車線の片側2車線を対面通行にすることにより迂回路設定が可能となった(図- 4)。
以上のことからコンクリート舗装による舗装修繕を採用し、振動や騒音の軽減が期待でき、全国で活用事例も多い連続鉄筋コンクリート舗装を試行的に実施したものである。
3.施工に関して
(1)コンクリート
事前の試掘やFWD調査の結果から設計CBR12を確認できたため、舗装版厚については20㎝とし、使用するコンクリートについては曲げ強度4.5kN/㎟スランプ3.5 で当初計画した。スランプについては施工時の協議において4.0 に変更し、コンクリートの品質向上を図った。
(2)ICT施工
路盤の整正においては自動追尾式トータルステーション技術を用いた3 次元マシンコントロール(3DMC)技術を搭載したモーターグレーダ(図- 5)により施工をおこない、現場作業の効率化や品質確保の向上を図った。
また、コンクリート敷き均し、締固め、表面仕上げをおこなう施工機械スリップフォームペーバによる施工(図- 6)においてもICT を活用しており、周辺に配置した自動追尾式トータルステーションを通じて3 次元設計データに基づいた3次元位置情報を3DMCスリップフォームペーバ側に送り込み、コンクリート舗装面の高さやペーバの走行位置を自動制御することができる。これにより現場作業の効率化や安全性の向上、施工精度の向上や品質の確実性を図るとともに、出来形管理(図- 7)においても効率化に繋がった。
また、特殊な大型施工機械には熟練した技術者が必要となるが熟練技術者不足対策や建設現場イメージの改善にも寄与している。
(3)施工に関する工夫
宮崎市ではプロ野球やサッカーの春季キャンプが観光地として人気があり、また、12月には風光明媚な地域を走る「青島太平洋マラソン」が開催され、当該施工箇所もそのルートに入っているため工期の短縮が非常に重要な課題であった。
そこで、施工者である三井住建道路株式会社による下記に示した工夫や取り組みが実施され、これにより大幅な工期短縮が図られた。
(3)―1 施工機械の改良
コンクリートの敷き均し等に使用するスリップフォームペーバの脚について、通常の機械では脚幅約0.5mが一般的であるが、当該路肩幅が0.5mしかないため縁石の撤去が必要となっていたが、施工機械の脚の幅を0.25mまで狭く改良し(図- 8)、縁石撤去再設置などの作業を省くことで約60日工期短縮することができた。
(3)―2 鉄筋のユニット化
通常、連続鉄筋コンクリート舗装工事の鉄筋の組み立てについては現場で行われるが、今回は予め加工場で組み立てた縦方向と横方向の鉄筋をユニット化したFKメッシュパネルを用い、大型トラックにて施工延長400m分(8.0*2.2m/ユニット)を一度に現場に運搬し、テレスコクローラクレーンを使用し設置する(図- 9)ことで約8日工期短縮できた。
4.まとめ
施工の工夫により大幅な工期短縮が図られ、道路利用者や観光産業への影響も最小限に抑えることができた。また、対面通行規制に関しては関係各所(管轄の警察署・消防署・取付道路管理者・地区の区長等)との連携や工事看板・道路情報板による工事の情報周知を徹底したため大きな混乱はなかった。
品質に関しても、コンリート打設後は強度の確認ができるまで約1週間、毎日朝・昼・夕と散水によるコンクリート養生を行うことでひび割れの抑制等、品質の向上が図られた。
出来形における平坦性についても管理基準σ 2.4mm以下のところ上下線平均σ 0.88 ~ 1.11mmと良好な平坦性を確保することができた。
本稿にて連続鉄筋コンクリート舗装の事例について報告したが、ICT施工による生産性の向上は、現場の人手不足を補うことに貢献しているが、細部に渡る施工においては人力作業も多いため、現場従事者の技術力の維持、ベテランから若手技術者への技術の伝承は依然として重要な課題となっている。
今後の長寿命化を目的としたコンクリート舗装活用のための一助となれば幸いである。
謝辞:本稿の執筆にあたり貴重な資料や情報の提供を頂いた施工者である三井住建道路株式会社の工事関係者の皆様や、工事にご協力いただいた関係者の皆様に深く感謝申し上げます。