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令和4年台風第14号の砂防施設効果事例について
~土砂災害を未然に防ぐ砂防施設~

宮崎県 県土整備部
砂防課 主任技師
髙 橋 祐 司

キーワード:台風被害、砂防堰堤、施設効果

1.はじめに
宮崎県は、九州南東部に位置し、西は九州山地、東は太平洋に面した、南北約160km、東西約70km、面積約7.7 千km2の県である。山林原野は総面積の76% を占めており、急峻な地形が多く、また、シラス等の特殊土壌が広く県土を覆っており、災害の発生しやすい地形、地質条件となっている。
降水量は、県全域で年間約2,000mmを超える雨が降り、2,800mmを超える地域が総面積の約3 分の1を占める全国有数の多雨地帯となっており、梅雨期をはじめ、毎年のように台風が接近・上陸し、多くの自然災害が発生している。

2.令和4年9月台風第14号による土砂災害
(1)台風第14号の概要
令和4年9月14日に発生した台風第14号は、大型で非常に強い勢力を維持しながら九州に上陸し本県西側を縦断した。本県では台風本体の雨雲がかかった18日昼前から19日未明にかけて局地的に猛烈な雨が降り、1 時間雨量94mm(渡川ダム:美郷町)、24 時間雨量957mm(同観測所)、総雨量1,146mm(奥村:椎葉村)を観測するなど記録的な大雨となった(図- 1)。このため、県内の広範囲で土砂災害の危険度が急速に高まり、県内市町村の9 割以上となる24 市町村に土砂災害警戒情報を発表し、さらに15 市町村には大雨特別警報(土砂災害)が発表された。

(2)台風第14号による被害状況
本県の主な被害※としては、死者3名、住家全半壊137戸、床上・床下浸水1,163戸、公共土木施設被災1,476箇所、国県道の通行規制100路線147区間となった。このうち土砂災害は、64箇所(土石流13箇所、がけ崩れ51箇所)で発生し、死者1名、家屋被害は全半壊5戸・一部損壊35戸、上水施設被災1箇所等となっており、県内広範囲に甚大な被害が及んだ(図- 2)。
※被害状況は速報値

図1 総降水量分布図・台風経路図

図2 土砂災害発生状況

このような甚大な被害の中でも施設効果を発揮し被害を未然に防いだ事例もあった。

3.砂防施設の効果事例
(1)竹之元川砂防堰堤
①事業概要
本県西部に位置する西米良村を流下する竹之元川では、令和元年9月台風第17号による大雨で総雨量738mm、時間雨量91mm(八重橋雨量観測所)を記録し、上流域の土砂崩壊に伴い床上浸水2 世帯、村道崩壊145m の被害が発生した。このため、「災害関連緊急砂防事業」の採択を受け、令和3年6月に砂防堰堤1基の工事が完了した(図- 3)。
・施設位置:2 級一ツ瀬川水系竹之元川 児湯郡西米良村大字板谷
・施設諸元:透過型砂防堰堤1 基(L=35.0m、H=6.0m)
・保全対象:人家6戸、村道、橋梁2 基

図3 竹之元川災害関連緊急砂防事業の概要

②施設効果
今回の台風第14号では総雨量672mm、時間最大雨量47mm(西米良(気)観測所)を記録し、上流域の山腹崩壊等により大量の土砂が流下したが、前年に完成した竹之元川砂防堰堤が約5,000m3(推定)の土砂を捕捉し、下流地域への被害を未然に防止した(写真- 1、2)。

写真1 竹之元川砂防堰堤(令和3年6月)

写真2 土砂捕捉状況(令和4年9月30日)

(2)ずり口谷川砂防堰堤
①事業概要
本県北西部に位置する椎葉村を流下するずり口谷川では、人家7戸、公共的建物2戸を保全するため「通常砂防事業」に着手し、平成21年に砂防堰堤1 基の工事が完了した(図- 4)。
・施設位置:2 級耳川水系ずり口谷川 東臼杵郡椎葉村大字松尾
・施設諸元:透過型砂防堰堤1 基 (L=40.0m、H=5.5m)
・保全対象:人家7戸、公共的建物2戸
・事業期間:平成18年~平成21年

図4 ずり口谷川砂防堰堤位置図

②施設効果
今回の台風第14号では総雨量713mm、時間最大雨量42mm(岩屋戸雨量観測所)を記録し、上流域で土石流が発生したが、整備したずり口谷川砂防堰堤により土砂・流木を捕捉し、下流地域の被害を未然に防止した。出水前に実施した施設点検時と比較すると、ずり口谷川砂防堰堤では計画したほぼ全量(約3,500m3)を捕捉したものと推定される(写真- 3 ~ 5)。

写真3 ずり口谷川砂防堰堤(令和4年6月)

写真4 土砂・流木捕捉状況(令和4年9月26日)

写真5 土砂・流木捕捉状況(令和4年9月26日)

(3)一ツ瀬川砂防堰堤
①事業概要
本県北西部に位置する椎葉村を流下する一ツ瀬川では、人家12戸、小学校1 校、集会所1戸、国道300m、村道100m、橋梁1 橋等を保全するため「通常砂防事業」に着手し、平成27年に砂防堰堤1基及び護岸工504mの工事が完了した(図- 5)。
・施設位置:2 級一ツ瀬川水系一ツ瀬川 東臼杵郡椎葉村大字大河内
・施設諸元:透過型砂防堰堤1基 (L=57.0m、H=8.0m)
・保全対象:国道300m、公共的建物2戸等
・事業期間:平成20年~平成27年

図5 一ツ瀬川砂防堰堤位置図

②施設効果
今回の台風第14号では総雨量765mm、時間最大雨量49mm(飯干山雨量観測所)を記録し、上流域の山腹崩壊等により大量の土砂が流下したが、整備した一ツ瀬川砂防堰堤では約6,000m3(推定)の土砂を捕捉し、下流地域への被害を未然に防止した(写真- 6、7)。
なお、当施設は令和4年2月に土砂撤去工事(緊急浚渫推進事業債)を実施し、施設機能回復を図っている。このことにより、7ヶ月後に発生した今回の土石流に対して、計画した十分な土砂量を捕捉することができた。砂防施設の早期整備はもとより、適正な維持管理の重要性を体現したものと考えている(写真- 8)。

写真6 一ツ瀬川砂防堰堤(令和4年2月)

写真7 土砂捕捉状況(令和4年9月25日)

写真8 堆積土砂撤去状況(令和4年2月)

4.おわりに
今回の台風第14号では、県内各地で砂防施設効果を発現しており、管理型堰堤で捕捉した土砂等については、次期出水期に向けて緊急浚渫推進事業債等を活用して撤去工事を順次実施している。今回紹介した3 施設においても捕捉した土砂や流木の撤去工事を実施しており、今後も施設効果発現が期待される(写真- 9)。

写真9 台風後の堆積土砂撤去状況(令和5年6月)

本県の砂防事業については、土砂災害危険箇所(要対策箇所)において施設整備を推進しているほか、小中学生向けの「土砂災害防止教室」、地域住民を対象とした「土砂災害防止講座」「マイハザードマップ作成講座」などの啓発活動も積極的に実施している。また、土砂災害警戒区域15,276箇所については、令和3年度末に指定率100% を達成し警戒避難体制の強化を図っている。さらに、本県が定期的に作成している「インフラのストック効果事例集(宮崎県)」等にて、今回の施設効果事例を掲載し広報活動を行っている(図- 6)。
今後とも、激甚化・頻発化する自然災害に対応するためには県土強靱化を推進する必要があることから、ハード・ソフト一体となった総合的な土砂災害防止対策に取り組んでまいりたい。

図6 宮崎県におけるインフラのストック効果事例集(令和5年1月)

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