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都城志布志道路供用と志布志港と連携した
地域の活性化について

鹿児島県 大隅地域振興局  
建設部 土木建築課 技術専門員
小 杉 淳 悟

キーワード:高規格道路、重要港湾、ストック効果、波及効果

はじめに
道路が整備されると定時性、速達性や走行性が向上し、人流・物流の効率化を図り、地域経済や生活を支援する。
港が整備されると、陸と海との交流・物流が生まれ、地域経済や生活を支援する。港は国内のみならず海外にも向いており、国際化が進んだ中で果たす役割が大きい。
本稿では、高規格道路である都城志布志道路、そして重要港湾である志布志港の連携による地域の活性化に関し、地域住民へのアンケートや沿線企業へのヒアリングを通して得られたストック効果について報告する。

1.都城志布志道路の概要
都城志布志道路は、宮崎県都城市から、鹿児島県曽於市を経由し、志布志港に至る約44㎞の高規格道路である(図- 1)。
本道路の整備は、九州縦貫自動車道宮崎線都城IC と志布志港とを連結し、物流の効率化や広域交通ネットワークによる地域間交流・連携を促進させ、地域の活性化に資することを目的としている。
鹿児島県曽於市や宮崎県都城市は、国内でも有数の畜産地帯であり、畜産産出額は全国でも上位にある。また、令和4年10月に開催された全国和牛能力共進会においては、種牛の部で鹿児島県が、肉牛の部で宮崎県がそれぞれ内閣総理大臣賞を受賞している。
都城志布志道路は、農畜産業が盛んな曽於市や都城市と、物流の一大拠点である志布志港とを結び、資料の安定供給、輸送コストの縮減など農畜産業に大きく寄与する路線である。

図 1 高規格道路網図

2.志布志港の概要
志布志港は、鹿児島県東部の志布志湾に位置する重要港湾である(図- 2)。国内・海外に定期航路を有するほか、港湾貨物取扱では畜産穀物飼料やゴム製品原材料の輸入、原木やゴム製品の輸出が多い。
畜産穀物飼料は、志布志港の品種別取扱量で最も多く、海外から志布志港に陸揚げ後、同港内の配合飼料工場で製造され、背後の曽於市、都城市などの畜産地域に供給されている。
志布志港は、九州で唯一、国際バルク戦略港湾(穀物)に選定されており、大型船で効率的な輸送を行うために、新たに大水深の岸壁等の整備が進められている。また、港内や隣接地には工業用地の造成が進められており、分譲が進むなど、志布志港の機能は向上し、周辺地域と一体となって成長している。

図 2 志布志港

3.都城志布志道路の開通
令和3年2月27日に、有明東IC ~志布志ICまでの「有明志布志道路」L=3.6㎞(写真-1)が開通し、3月28日に、宮崎県金御岳IC ~鹿児島県末吉IC までの「金御岳工区」・「末吉道路」L=5.8㎞(写真- 2)が開通し(図- 3)、宮崎県と鹿児島県がつながったことに、地元からは大きな歓喜の声があがった。

図 3 都城志布志道路全体図

写真 1 有明志布志道路(有明東IC)

写真 2 末吉道路(県境付近)

4.沿線住民アンケート
2 区間の開通から一定の期間が経過した令和3年11月から翌年2月にかけて、曽於市、志布志市や都城市などの住民約600 名に都城志布志道路の整備効果についてアンケートを実施した。
アンケート結果(抜粋)は図- 4 のとおりである。走行性の向上、速達性、定時性の確保という点で、ほとんどの方から肯定的な回答をいただいた。また、移動時間の効率化、行動範囲の拡大や運転負担の軽減といった具体的な効果も挙げられた。アンケートを通して、道路整備の効果について、住民の方の声を直に聞くことができた。

図 4 アンケート結果

5.企業ヒアリング
地元住民アンケートとあわせ、志布志市や曽於市内にある約30 の事業所へヒアリングを行った。

1)飼料荷役・畜産関係
志布志港で飼料の荷役・保管・運送を行っている事業所へヒアリングを行った。ヒアリング先には、今後の志布志港の機能拡充や、道路整備による志布志港の利便性向上に着目し、物流施設等の増設を行っている企業がある。
また、JAや食肉加工事業者などの畜産関係者へヒアリングを行った。

図 志布志港荷役業者の声

図 畜産関係者の声

日々、志布志港と畜産地帯とを往来する荷役業者にとっては、都城志布志道路の開通の効果は大きく、電話でヒアリングの依頼をした際、「道路ができて、助かっています。」との声をいただいた。更にヒアリングにおいて、時間短縮による日当たり運搬回数の増加、配達遅延の解消、ドライバーの負担軽減など具体的な効果が挙げられた。
畜産関係では、JA 関係者からは子牛のセリの活性化や営農指導等の効率化、食肉加工業者からは自社工場間での商品輸送の効率化による業務改善などの効果が挙げられた。また、職員の通勤時間の短縮や、遠方からの職員採用といった就労環境の変化も効果として挙げられた。要望として、早期全線開通を求める声もあった。

図 5 志布志港からの配合飼料の出荷状況

図 6 畜産産出額

海外から、曽於市や都城市などの農家へ飼料が運搬される一連の物流過程に、志布志港や都城志布志道路がある。志布志港は海外からの穀物飼料の受入れを担う一大拠点であり、都城志布志道路は陸上での効率的な輸送を担う路線である(図-5、図- 6)。それらが連携して、畜産業の振興を図り、地域経済を支えていることを実感した。

2)木材
志布志港の木材輸出量は、平成20年頃から右肩上がりで上昇し、令和2年度は平成21年度比で75 倍もの輸出量となっている(図- 7)。原木輸出量は全国1 位で、日本全体の約3 割を占めており、中国等へ輸出されている。曽於市、志布志市や都城市は原木の供給地帯となっている。森林整備、造材や運搬等を行う、地域の森林組合にヒアリングを行った。

図 7 志布志港からの原木輸出量

図 森林組合の声

都城志布志道路沿線には4つの森林組合(都城、曽於市、曽於地区、南那珂)があり、従前はそれぞれの組合が個別に原木輸送を行っていたが、志布志港からの輸出量の増加に伴い、4 森林組合で木材輸出戦略協議会を設立し、共同で木材輸送を行うことにより業務の効率化を図っている(図- 8)。
原木は、国内の産地から都城志布志道路を利用して志布志港に輸送され、海外の消費地に輸出される。都城志布志道路が開通したことで、運搬時間短縮、輸送コスト削減、雇用エリアの拡大がなされ、林業の活性化に資するものである。

図 8 森林組合の連携状況

3)経済(企業進出・設備投資)
志布志港内の県が整備した分譲地や、志布志港の隣接地に志布志市が整備した臨海工業団地への企業立地が進んでいる。
志布志港の機能拡充、志布志港内や臨海工業団地の造成、さらに都城志布志道路や東九州自動車道の整備によるアクセス向上を見据えて、企業進出や新たな設備投資が行われている。
進出企業は、農畜産品の加工工場・飼料製造工場・倉庫(写真- 3)などのほか、これらの関係者などが利用するためのホテルの立地も進んでいる(図- 9)。

図 進出企業等の声

写真 3 新設された倉庫

図 9 主な進出企業の位置図

地元自治体によると、近年の企業の設備投資額は約258 億円、新規雇用は約370 名とのことである。現在も臨海工業団地の区域拡大が進んでおり、今後も更に企業進出が見込まれるなど、地域全体へ多くの波及効果が期待される。

図10 志布志市臨海工業団地

4)消防・医療
志布志市や曽於市では高齢化に伴い救急医療施設への搬送が課題となっている。救急搬送を担う地元の消防組合へヒアリングを行った。

図 曽於地区消防組合の声

都城志布志道路の整備により救急医療施設である曽於医師会立病院および都城医師会病院等への搬送時間が短縮された(図- 11)。消防庁の資料による搬送時間と死亡率の関係を図- 12 に示す。救命率を上昇させるには一分一秒の搬送時間短縮が必要であり、都城志布志道路の整備による搬送時間短縮は大きな意味をもつ。

図 11 志布志市から医療機関への移動時間

図 12 搬送短縮時間の重要性

5)防災
海溝型巨大地震や異常気象による豪雨災害等が発生すれば、沿岸部を中心に甚大な被害が想定される。内陸部にある都城市は、バックアップシティとして、災害時の人的・物的支援を行う拠点となる。都城志布志道路は都城市のバックアップシティとしての機能を強化する役割を果たす。(図- 13)。

図 13 想定される津波の高さと都城志布志道路

おわりに
時代の流れとともに、人や物の流れは広域化・高速化が進み、それを支える広域交通ネットワークの重要性が増している。また、国際化が進み、輸出入の大部分を海上輸送が担うため、陸と海とを結ぶ物流拠点である港湾の機能強化が求められる。
経済活動において物流の効率化を図ることで、輸送効率の向上やコスト縮減のほか、地域活性化や新たな雇用を創出することができる。
広域交通ネットークを形成する都城志布志道路と、重要港湾である志布志港がそれぞれの機能を発揮し、それらが連携することで、地域に大きなストック効果や波及効果をもたらしていることを住民アンケートや企業ヒアリングを通して実感できた。
地域の活性化に資する都城志布志道路を早期に全線開通できるよう、引き続き、関係者一同取り組んでいく。

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