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九州地方整備局におけるコロナ禍でのイベント開催報告

国土交通省 九州地方整備局
企画部 施工企画課
篠 田 賢 一

キーワード:コロナ対策、イベント、WEB配信

1.はじめに
九州地方整備局では、新技術の普及・促進に寄与するため、産学官建設技術セミナー、建設技術フォーラム等の各種イベントを例年開催している。
昨今のコロナ禍において、来場型のイベント開催が次々と延期・中止となり、情報の「発信」と「受信」、CPD取得の機会が激減していた。中でも、就職を控えた学生が建設業界の情報を得られる機会が減っており、その様な機会を何とか増やして欲しいという産、学からの強い要望を受けたことから、感染予防対策に配慮して開催する必要があると判断した。
本稿では、様々な感染予防対策、情報発信方法を用いて開催した取り組みについて報告する。

2.産学官建設技術セミナー(開催日 R2.8.26)
2-1 開催趣旨
九州における産業界、大学等、及び行政の関係者がオープンな形で集い、情報交換、意見交換等の活動を通じ、建設分野における新技術の開発、活用、普及の推進並びに産、学、官で共有する技術課題の克服等に寄与することを目的として年2回程度開催している。
今回は、従来の来場型の開催形式を見直し、参加人数を制限した対面形式に変更したほか、参加自由のオンライン形式を採用することとした。また、これまで交流会と称していた形式が難しくなったため、学ぶ場としての「産学官建設技術セミナー」と改称して開催した。

2-2 開催内容 
今回は、九州大学大学院工学研究院 安福規之教授により、建設業界の現状やSDGsへの貢献の視点から、新技術の展望について講演いただいた(写真-1)。
また、今年度から始まった新技術の義務化や新技術活用・評価における課題、アイデアについて産、学、官パネリスト((一社)日本建設業連合会、(一社)建設コンサルタンツ協会、九州大学、九州地方整備局)に加え来場者も交えた活発なディスカッションも行われた(写真-2)。

写真1 安福教授(九州大学)による講演

写真- 2 パネルディスカッション

2-3 コロナ対策の取り組み
新型コロナウィルス感染拡大防止対策として、来場制限、マスク着用(講演者、パネリストはマウスシールド)、検温、手指消毒、ソーシャルディスタンスの確保等の徹底はもちろんのこと、新たな取り組みとして以下についても実施した。

(1)Web受付
万が一コロナウイルスによる感染者が発生した場合は来場者への連絡が必要なため、Webによる事前受付を採用した。当日は、申込時に発行されるQRコードを提示するだけで受付が完了する仕組みを導入し、受付場所での滞留を避け、非接触でスムーズな受付を行うことができる体制とした。また、飛沫防止シートをあわせて設置することで感染予防対策を徹底した(写真-3)。

写真3 QRコード受付

(2)YouTubeLive 配信
 入場制限により来場できない方への情報発信のため、YouTubeLiveによる配信を行った。併せて、チャット機能により、Web参加者からの意見を募集しリアルタイムな意見交換を行えるようにした(写真-4)。
また、当日参加できなかった方へのフォローとして、基調講演・パネルディスカッションの録画映像のURLを関係機関及び九州地整職員へ案内し、セミナー後1ヶ月間視聴可能とした。

写真4 YouTubeLive 配信

3.建設技術フォーラム 2020(開催日 R2.10.21,22)
3-1 開催趣旨
新しい建設技術の開発・活用・普及の促進を図るために、産、学、官のそれぞれが新技術の開発・活用の取り組みについての情報を発信し、技術情報の展示、プレゼンテーションなどの形をとりながら連携を深め、九州における更なる建設技術の発展を目指すことを目的として、「次世代技術で築く持続可能な未来社会~建設技術の飛躍的な向上をめざして~」をテーマに開催した。

3-2 開催内容
(1)基調講演
「建設業界におけるAI技術等の利活用による生産性向上と現在の最先端技術」について、富士通(株)プリンシパルエキスパートの渡部勇氏により基調講演をいただいた(写真-5)。
メイン会場はソーシャルディスタンス確保のため、収容人数1,000名に対し半分の500名に制限した。また、フォーラム専用ホームページにてYouTubeLiveのURLを公開し、YouTubeLive配信を産学官建設技術セミナーに続き行った。なお、今回は、資料と講師を1画面に表示し視聴しやすく工夫した(写真-6)。

写真- 5 基調講演

写真- 6 基調講演(YouTubeLive 配信)

(2)ブース展示・パネル展示
「安全・防災」「品質」「環境」「コスト」「維持管理」「ICT」のテーマごとにパネルや模型等を使った展示が行われた。今回は「密」にならないよう、ブース、通路ともに広くし、昨年の115ブースに対して62ブースに出展数を制限した(写真-7)。また、滞留を防ぐために監視員を配置し、長くとどまっている場合は声かけすることとし、入退場と会場内での動線を一方通行にした(写真-8)。なお、ブース出展者の「出展技術概要」は、フォーラム専用ホームページにアップしており、いつでも見ることができることとした。
また、主催団体や自治体によるパネル展示も行われた(写真-9)。
出展数:16(協会等:3、学会:2、行政[国]:1、自治体:10[福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・福岡市・北九州市・熊本市])

写真7 ブース展示

写真 8 動線を一方通行

写真9 自治体パネルの展示

(3)プレゼンテーション
「安全・防災」「品質」「環境」「コスト」「維持管理」「ICT」のテーマ別に計29技術の発表が行われた(写真-10)。メイン会場同様、収容人数の半分に制限し、隣同士の座席間隔を1m以上空け、ソーシャルディスタンスを確保した。また、発表者が入れ替わる毎にマイク等の消毒を行い感染予防対策を徹底した。

写真10 プレゼンテーション

(4)リクルーティングプレゼンテーション
昨年までは、建設業界関係機関によるリクルーティングプレゼンテーションの場を設けていたが、コロナ渦で学生及び学校関係者が集団で参加することが困難なため、建設業界への就職を希望する学生及び学校関係者を対象にフォーラム専用ホームページにてPRビデオを配信することとし、フォーラム関係者および九州地整各事務所の協力を得て関係する学校へ案内した(図-1)。なお、PRビデオはフォーラム終了後1年間視聴可能としている。

図1 リクルーティングプレゼンテーションのWEB配信

3-3 セミナーでの経験を踏まえたコロナ対策 
参加者100名程度のセミナーに対し、フォーラムは例年3,000人程度の参加が見込まれるため以下の対策を実施した。

(1)サーモグラフィーを用いた検温
来場者が多く、よりスピーディーな入場を行う必要があるため、サーモグラフィーの導入およびそれを確認する係員を配置し検温を行った(写真-11)。

写真11 サーモグラフィーを用いた検温

(2)センサーでの自動入退場管理
ブース展示が行われるホール内の人数を常に収容人数の半分(600人以下)に抑えるため、レーザーカウンターでホール内の入退場数管理を行った(写真-12)。

写真12 センサーでの自動入退場管理

4.おわりに
今回、参加人数を制限するために補完的に実施したWEB配信により、予想以上に広範囲に情報発信することができた。中には授業の一環として今回の動画・資料を利活用された学校もあると聞いている。視聴した方からは、「とても分かりやすく作ってあり、今後も利用したい」「学生には刺激になった。このようなコンテンツが増えることを期待します」などのありがたいコメントもいただいている。
また、感染予防対策を徹底したことで、イベントから2週間以上経過した時点において保健所からの感染者報告も出ていない状況である。
コロナ渦によるニューノーマルな社会においてはこの様な方式があたりまえになるものと思われ、今回の経験を踏まえ、今後も建設業界の発展に寄与できるよう、引き続き種々の新技術の普及・促進へ向けた情報発信を積極的に実施していきたいと考えている。
最後に、今回のイベントを運営するにあたり、ご尽力いただいた各実行委員会の皆様、スタッフの皆様及び参加された皆様に対し無事に開催できたことを厚く御礼申し上げます。

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