九州における今後の社会資本整備のあり方
公益社団法人 土木学会 西部支部長
古賀徹志
古賀徹志
土木学会は1914年(大正3年)に設立され、会員数約3万5千人余りの我が国でも有数の規模の学会であります。土木工学や土木技術の進歩に関する貢献を通じて、社会の発展に寄与することを目的とし、全国に8つの支部組織があります。
当西部支部は、九州沖縄地区を対象に約2,800人の個人・法人会員が所属しています。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、未曾有の大災害となり、日本はかつて経験したことのない事態に遭遇し、津波の恐ろしさを再認識させられました。平成23年4月に開催された内閣府の中央防災会議においても、防災基本計画に震災・風水害・火山災害・雪害の4項目に加えて「津波対策」に関する記載を充実し、見直しを図ることが示されています。
九州地方は、台風等の風水害、雲仙普賢岳、新燃岳といった火山災害、また平成17年3月20日に発生した福岡県西方沖地震という大地震など、自然災害のリスクを数多く抱える地域であります。また、今世紀前半にも発生する可能性が高いと予測されている東南海・南海地震に備え、「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が平成15年7月に施行されており、それに基づき平成15年12月には「東南海・南海地震防災対策推進地域」として、九州では大分県、宮崎県の沿岸市町村が指定されています。
このような中、九州における社会資本整備においても、地震・津波を念頭に置いた整備が課題となり、いかに被害を最小限にとどめるかの努力が必要とされます。そのためにも、予防保全として、住宅、公共施設の耐震化を進め、陸海空の交通網の整備・耐震化という地震に強いまちづくりが求められます。
また、人々の地震に対する意識を高める必要もあると考えられ、地域のリスクを知るとともに、防災知識の普及や防災教育の充実を図るなど地域防災力の向上が求められます。避難地・避難路を確保するのみならず、ハザードマップを整備し避難対策を図るなど、ハード・ソフトが一体となった対策を構築しておくことが重要であります。
当西部支部としても、学校や職場にお伺いし、防災をはじめ、構造物、環境、まちづくりなどをわかりやすく説明する「おでかけ講座」を開催し、幅広く一般の方々に土木に対する興味を持って頂けるよう、情報発信を行っています。
自然災害から人々の暮らしを守り、社会・経済活動を支える基盤を作り、良質な生活空間を創るという本来の使命を達成するため、土木学会としても学会員一人一人としても技術者の良識に基づいた活動が重要であると考えます。
これからの土木の発展のためには、種々の事業、プロジェクトについて、客観的かつ謙虚に未来志向で発想し、また、そのシステムを整備していくことが重要であり、その実現のため、私も微力ながら尽力したいと考えています。
今後とも、土木学会の発展のため、皆様のご理解、ご支援をよろしくお願い致します。