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久留米地区の舟運再生と久留米閘門の改築について

国土交通省 九州地方整備局
 筑後川河川事務所 建設専門官
宮 原 幸 嗣

1 はじめに
舟運は、筑後川において文化の伝播路や水上交通、物資運搬の貴重な手段として古くから利用されており藩政時代には年貢米等の大量輸送や日田の木材をいかだに組んで木工の町、現在の大川市や久留米等に運んでおり特に大正時代には製材したものを舟で運搬されていました。
また、明治~昭和初期には、舟運は重要な交通手段として栄えて62もの“渡し”が行われていましたが、現在では陸上交通の発展に伴い次第に舟運は衰退していき“渡し”も平成2年の下田の渡しを最後にその役割を終えています。
しかし、近年、大規模地震時等における緊急輸送路としての防災面や河川の持つ豊かな自然を生かしたまちづくりや観光面から舟運が見直されてきています。
本稿では、舟運再生とこれに伴う久留米閘門の改築について紹介します。

2 筑後川の概要
筑後川は、その源を熊本県阿蘇郡瀬の本高原に発し高峻な山岳地帯を流下して日田市において、くじゅう連山から流れ下れる玖珠川を合わせて典型的な山間盆地を流下し、その後夜明峡谷を過ぎ佐田川、小石原川、巨瀬川及び宝満川等の多くの支川を合わせながら肥沃な筑紫平野を貫流し、さらに早津江川を分派して有明海に注ぐ幹線流路延長143km流域面積2,860km2の九州最大の一級河川です。
筑後川の流域は、熊本県、大分県、福岡県及び佐賀県の4県にまたがり上流域には日田市、中流域には、久留米市及び鳥栖市、下流域には大川市及び佐賀市等の主要都市があり流域内人口は約109万人を数えます。

図-1 筑後川流域図

3 大規模地震時の緊急輸送路としての舟運の役割
日本列島は、非常に地震等の多い地域であり、特に都市部において大規模な地震が発生した場合、主要な交通網は一時的に麻痺し、負傷者や緊急物資、復旧資材等の輸送が困難になることが予想されます。
このため、大規模地震時における危機管理の面から、緊急輸送路の確保としての舟運の活用が見直されています。
平成7年の阪神大震災時には、地震直後、舟運は負傷者をはじめ緊急物資、支援要員の搬送等の緊急輸送路として活躍しました。
一方、久留米市街部周辺においても、山川地区で断層が確認されており679年にマグニチュード6.5~7.5規模の地震が起きたと推測されます。
このため、大地震等の危機管理の面からも筑後川を生かした緊急輸送路としての「舟運」の活用が求められています。

図-2 久留米地域における水縄断層と地震履歴

4 観光面における舟運
久留米市では、「筑後川を育む豊かな自然」を、まちづくりや観光へ活用することを目的に、平成12年度から「筑後川体験乗船等実行委員会」を設置し、舟運事業の可能性を検討しています。
現在までに体験乗船会や筑後川舟運シンポジウム等を開催し、舟運に対する多くの意見集約を行うとともに、多くの市民の方々に舟運事業を体験して頂いています。
これら体験乗船会では、毎回、定員を超える多くの方々が応募されており、有料ツアーにおいても、定員の10倍程度の応募もあることなど、舟運の事業化に向けた機運も高まりつつあります。

写真-1 筑後川における体験乗船会

図-3 久留米地区の筑後川沿川の観光地

5 舟運再生と久留米閘門の改築に向けて
舟運の再生と久留米間門(旧小森野閘門)の改築にあたっては、環境面、利用面の課題を整理する必要があります。
このため、国土交通省と久留米市では「久留米地域舟運再生検討委員会」を平成15年6月に発足しました。
この委員会では、学識経験者をはじめ漁協やカヌー等の利用者をはじめ観光面への活用として民間事業者のJRや西日本鉄道、商工会議所等が含まれており、今後の久留米間門の必要性をはじめ、事業化に向けた多くの意見を頂き、舟運再生に向けての検討が行われてきました。

6 航路確保と久留米閘門再生の必要性
舟の航路確保については、筑後川の現況河床状況を整理した結果(図-4参照)現在、河口から巨瀬川合流点付近まで、概ね2m程度の喫水確保が可能となっています。しかし、小森野床固においては、旧閘門(右岸)が破損しており喫水不足のため船の航行ができない状況となっていました。このため緊急輸送路として航路確保をするうえで久留米閘門の改築を行う必要がありました。
久留米閘門の再生にあたっては、旧閘門の課題や堤防の安全性等を考慮した結果、左岸側への設置としました。
また、閘門の整備に合わせ、震災時の緊急物資、復旧資材等の接岸場所として「船着場」を既設の施設と合わせて、計4箇所整備しました。

図-4 航路に関する現況河床の状況について

図-5 小森野床固め周辺

写真-2 破損した旧閘門

写真-3 完成した久留米閘門

7 今後の利活用にあたって
現在、久留米市周辺における筑後川の水面利用としては、漁業者・釣り・カヌー・水上バイク・自衛隊等多くの方が利用されているため水面利用協議会を組織し、一定のルールを守った利活用がなされています。今後、舟運を再生するうえで利用者の安全な航行と漁業者や水鳥をはじめとする生物の生息環境にも十分に配慮する必要があります。また、舟運の事業化に際しても民間事業者の意見等を十分に反映させたうえで実施していく必要があるところです。

8 最後に
平成19年3月21日に「筑後川菜の花まつり」と合わせて久留米閘門の開通式を行いました。
当日は、体験乗船会を行い乗船された皆様から大好評でした。この舟運が久留米市の観光の起爆剤となるよう願うものであります。

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