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下水道整備の概成について
~環境首都・北九州市に向けて記念行事の開催~

北九州市建設局 下水道河川部
 下水道河川計画課長
藤 丸 正 司

1.はじめに
北九州市は,昭和38年の5市合併を機に,本格的に下水道整備に着手し,今日まで水洗化の普及促進に重点的に取り組んできた。その結果,平成17年度末には,人口普及率99.8%に達し,汚水整備は概成する見込みとなった。
かつて,本市では工業の発展と都市化の進展に伴って,極めて深刻な公害問題が発生した経緯がある。工業地帯の中心部に位置する洞海湾は,昭和40年代当時工場廃水と生活排水による汚濁で,「死の海」と呼ばれ,船のスクリュウも溶けてしまうほどであった。
また,本市の中心部を流れる紫川は,家庭からの雑排水の放流や下流域に占拠された不法建築のバラックから捨てられる汚水や汚物等により汚染し,「どぶ川」と呼ばれた。
しかし,その後の工場廃水の規制や下水道の普及に伴い,「死の海」洞海湾も現在では見事に蘇り,百種類以上の生物が確認できる「美しい海」に回復した。
そして,紫川も現在ではアユやシロウオが遡上し,上流では,ほたるが舞うようになった。
さて,このような本市の公害克服への取組や国際協力という形で貢献した実績が,国際的に大きく評価されている。
平成2年には国連環境計画から「グローバル500」という賞を,平成4年にはブラジルでの地球サミットで「国連地方自治体表彰」を受けた。
この背景には.公害対策に対する市民,企業,そして行政が一体となった取組がある。中でも.これまで多くの事業関係者が力を結集して取り組んできた下水道整備が果した役割は大きいものであったといえる。
このたび,本市では,安全で快適な生活環境を形成するため,43年にわたって取り組んできた,この一大事業の概成を記念するとともに,今後,下水道が取り組むべき浸水対策や合流式下水道の改善,高度処理などの課題を展望しながら,本市が目指す「環境首都・北九州市」をアピールするため,今年の11月~12月にかけて「概成記念行事」を開催することとした。
ここに本市の下水道事業が概成に至った経緯そして「概成記念行事」の内容について紹介することにしたい。

2.合併前の下水道事業の経緯
本市の下水道事業は,旧若松市が大正7年に事業認可を受け,着手したことに始まる。
次に小倉市が大正15年に事業認可を,昭和9年に八幡市が,昭和33年に戸畑市,昭和38年に門司市の順で事業認可を受け着手してきた。しかし,当時の下水道は,家庭排水と雨水を集めて流すだけのものであり,汚水処理を伴う本格的な下水道が開始されたのは,旧八幡市の皇后崎下水処理場が処理を開始した昭和38年からである。
この年にこの旧五市が合併し,今の「北九州市」が発足した。

3.合併後の下水道事業の経緯
合併以前から旧市がそれぞれ整備してきた下水道は,規格も制度も異なっていた。
昭和42年に始まる第2次下水道五ヵ年計画からは,北九州市として一元化した計画の見直しを経て,下水道事業が本格化してきた。
そして,昭和45年に小倉北区の日明下水処理場昭和47年に門司区の新町下水処理場,若松区の北湊下水処理場が,また昭和54年には小倉南区の曽根下水処理場が,あいついで完成し,市内5処理区にそれぞれ処理場が整備され,市内全域をカバーする体制が出来上がった。いずれも活性汚泥法を採用した。
その後着実に管渠延長を伸ばし,昭和56年度末には人口普及率が70%を超えた。
平成3年からは,「特定環境保全公共下水道」により認可区域を拡張し,市街化調整区域についても汚水整備を促進してきた。
本市では現在までに,雨水専用ポンプ場6箇所を含む全34箇所のポンプ場や約4,000kmの管渠を整備し,平成16年度末には人口普及率は99.3%に達している。また,雨水整備率は63.6%に達したところである。
このように拡張期に急ピッチで事業を進めた結果,確実に成果が現れてきた。そして,北九州市の中心部を流れる紫川は,かつては「どぶ川」といわれるほど汚れていたが,下水道普及率の増加に伴って水質が良くなってきた。これは,紫川に流れていた汚水が,下水道の整備により,削減されたことが大きな要因である。
以上の結果,平成6年度に,下水道整備等により紫川の水質改善を図った取組として,「第3回建設大臣賞(いきいき下水道賞)」を受賞した。
また,平成12年度には,「下水道整備の推進により水環境を保全し又は回復させた部門」として「よみがえる紫川」が建設大臣賞である「蘇る水百選」にも選ばれた。
このように,本市の下水道事業の成果は,公共用水域の水質改善に大きく貢献していると認められ,高く評価された。

4.北九州市下水道概成記念行事について
1)下水道概成記念式典
この概成記念行事のひとつとして,平成17年11月24日に事業関係者,自治会,議員,市役所OB政関係者他,事業に関わりの深い方々をご案内して「北九州市下水道概成記念式典」を開催した。最初に,本市の下水道事業に貢献のあった功労者の方々の表彰式を行い,続いて新北九州空港島に完成した空港北町ポンプ場の通水式を行った。
そのあと,下水道事業関係者の方々数名によるトークショーを行い,当時の苦労話を交えた対談をお聞かせいただいた。

2)下水道概成記念国際シンポジウム
翌日の11月25日には,海外から専門技術者を数名招聘し,「世界の環境首都を目指して」と題した「国際シンポジウム」を開催した。
この国際シンポジウムで,は本市の末吉市長が「世界の環境首都創造・洞海湾・紫川の再生」と題し,北九州市が公害克服の取組や環境都市への発展の経緯等を盛り込んだ基調講演を行ったあと,アメリカ,スイス,韓国といった国々からお越しいただいたパネリストの皆様から,世界の下水道,世界のウオーターフロントなどのご講演をお聞かせいただいた。その後本市の建設局長と講演者の皆様方により,「美しい水景都市の創造」というテーマでパネルディスカッションを行った。
開催に際しては国土交通省都市・地域整備局にもご協力いただき,藤木修流域調整官にはパネルディスカッションのコーディネーターを勤めていただいた。

3)下水道概成記念講演会
また,12月17日には,「下水道概成記念講演会」と題して,早稲田大学教授で,エジプト考古学者である吉村作治氏を迎え,「古代エジプト文明から見た循環型社会」と題した講演をお願いした他,本市の下水道河川事業関係者2名がそれぞれの本市の下水道とのかかわりについて講演を行った。その後講演者3名によるトークショーを行った。
この国際シンポジウムと記念講演会には,大勢の市民の方々にも参加していただき市民生活と下水道のかかわりについて深い関心を持っていただく良い機会になったと感じている。

4)下水道概成記念フェア
この他にも,11月23日~25日には,下水道概成記念フェアと題して「下水道のPRイベントや下水道関連資料の展示」をJR小倉駅JAM広場及び水環境館で行った。

一連の記念行事の開催に際しては,国土交通省や地方公共団体の方々,そして,下水道事業関係者として市役所OBや民間の方々に多大なるご協力をいただき,誠にありがとうございました。
この場をお借りして深くお礼申し上げます。

5.本市下水道の今後の取組について
昭和38年に本格的に事業着手した汚水整備は,平成17年度末の概成を迎え,ようやく,下水道の基本的な役割を果せる段階が来た。これもひとえに下水道事業への市民の方々のご理解とご支援の賜物であり,これまで多くの事業関係者が力を結集して取り組んできた努力の成果であると思っている。
今後,本市の下水道事業は,「災害に強く,安心で,安全なまちづくり」を進めるための雨水対策,未処理下水の放流削減のための合流式下水道の改善,そして,老朽化した下水道施設の改築更新,さらに高度処理等の新たな課題に重点的に取り組んでいくことになる。そして,「世界の環境首都・北九州市」の創造に向け,新たな行政としての使命を果すためさらに努力してまいりたいと考えている。

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