一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
「道の駅」を地域活性化の拠点とする取り組みの支援について
山北賢二

キーワード:重点「道の駅」、重点「道の駅」候補、地方創生

1.はじめに
「道の駅」は、道路利用者への安全で快適な道路交通環境の提供と、地域の振興への寄与を目的とした施設であり、平成27年4月現在、全国で1,059 駅、九州地方整備局管内で121駅が登録されています。
「道の駅」に求められる基本的な機能としては、24時間無料で休憩できる「休憩機能」、道路情報や地域の観光情報、緊急医療情報等を提供する「情報提供機能」、文化教養施設、観光レクリエーション施設など地域振興施設の設置といった「地域連携機能」の3つがあり、これらは「道の駅」の登録要件となっています。
当初、ドライバーがトイレ等で立ち寄る“ 休憩施設” として整備された「道の駅」は、地域の特産物や観光資源を活かし「ひと」を呼び、地域の「しごと」を創出する核へと独自に進化を遂げ始め、それ自体が“ 目的地” となってきています。
国土交通省では、この「道の駅」を経済の好循環を地方に行き渡らせる成長戦略の強力なツールと位置づけ、関係機関と連携して特に優れた取組を選定し重点的に応援する取組を実施しています。
本稿では、国土交通省が実施している『重点「道の駅」』の制度の概要、および九州地方整備局管内で選定された『重点「道の駅」』3駅の取組を紹介するとともに、これらの支援方策等について報告します。

2.『重点「道の駅」』における取組
(1) 制度の概要
「道の駅」を地域活性化(地方創生)の拠点とする取組を発展させ、国土交通省では『重点「道の駅」』制度を創設しました。なお、この中で「道の駅」を、地域外から活力を呼ぶ「ゲートウェイ型」と地域の元気を創る「地域センター型」の2つに分類し、今後目指していく方向性として掲げています(図-1)。

本制度は、『全国モデル「道の駅」』と『重点「道の駅」』、『重点「道の駅」候補』の3 分類の「道の駅」によって構成されます。

九州地方整備局管内では、道の駅「うきは」、道の駅「鹿島」、道の駅「小国」の3駅が国土交通大臣によって『重点「道の駅」』として選定されました。また、道の駅「阿蘇」、道の駅「きくすい」、道の駅「北川はゆま」、道の駅「奄美大島住用」の4駅が『重点「道の駅」候補』として九州地方整備局長によって選定されています(図-2)。
以下に『重点「道の駅」』3駅の取組内容を紹介します。

(2) うきは[福岡県うきは市]《 地域センター型》
中山間地に位置するうきは市では、深刻な高齢化や、女性の活力の活用、九州北部豪雨災害等の災害の恐れといった課題を抱えています。
このような中、道の駅「うきは」を高齢者や女性がいきいきと働き・暮らすための拠点として位置づけ、農業支援センターや子育て支援施設などを整備していきます。また、「道の駅」を拠点とした、EV自動車による集荷・宅配やデマンドタクシーなど、ヒト・モノの流動活性化のための「EVネットワーク」の構築を目指しています(図-3)。

(3) 鹿島[佐賀県鹿島市]《 ゲートウェイ型》
道の駅「鹿島」は、日本一の干満差を誇る有明海等を活かした豊富なメニューの自然体験や、環境に関する教育、またニューツーリズム等による“ ひと“ の交流拠点など、地域の周遊観光の拠点としての役割を担っています。
また、地域活力の創造・産業活性化を図る施設「海道しるべ」と連携し、地域の特産品を活用した新たなオリジナル商品の開発や、地域密着型の宅配事業と空き店舗活用による宅配サテライト施設の整備などを行うこととしています。

(4) 小国[熊本県小国町]《 ゲートウェイ型》
小国町が環境モデル都市に選定されたことを契機に、地熱乾燥材(カーボンニュートラル材)による小国杉の多目的モデルハウスを「道の駅」に整備し、UIJ ターン希望者への宿泊体験等の支援を通じ、地元産木材の利用や移住定住を促進しています(図-5)。
また、三後の要(肥後・豊後・筑後)として、観光協会を1 本化し観光総合案内所を設置することとしています。

(5)重点「道の駅」候補について
地域活性化の拠点となる企画の具体化に向け、地域の意欲的な取組が期待できるものについても企画の具体化に向けて検討等を進めて行きます。
    ・阿蘇〔熊本県阿蘇市〕《ゲートウェイ型》
    ~阿蘇くじゅう観光圏の連携強化を図ります。
    ・きくすい〔熊本県和水町〕《ゲートウェイ型》
    ~田舎の「なごみ」の魅力をブランド化します。
    ・北川はゆま〔宮崎県延岡市〕《ゲートウェイ型》
    ~地域資源を活かした食の体験を提供します。
    ・奄美大島住用〔鹿児島県奄美市〕《ゲートウェイ型》
    ~外国人観光客が安心して訪れる機能拡充を図ります。

3.重点「道の駅」への取組支援
地域活性化の拠点として期待される『重点「道の駅」』が行う取組について、各協議会を立ち上げ九州地方整備局管内の関係機関との連携により取組の実現に向けた支援等を調整していく予定です(図-6)。

(主な支援内容)
 ・各重点「道の駅」へのアドバイザーの配置による取組企画への提案・助言
 ・関係機関との連携による支援方策の調整・整理
 ・取組みを広く周知するための広報計画の策定・実施
 ・協議会・合同連絡会の開催・運営等
また今後は、「道の駅」が「地域の課題を解決する場」になるよう、「地域の拠点機能の強化」と「ネットワーク化」を重視し、「道の駅」自体が目的地となるよう取り組んでいきます。

(具体的な取組み例)
 ①「道の駅」相互、設置自治体、駅長など関係者の連携強化
 ②「道の駅」ブランドの維持 (登録更新制度、ランキング、プレミアム認定など)
 ③訪日外国人旅行者2000万人を目指し外国人受け入れ環境整備を行うために各省庁と連携した、既存の「道の駅」への再投資、個性ある取組への重点支援(防災機能強化、EV充電器・無線LAN・外国人旅行者への案内など新しいニーズへの対応)

4.さいごに
地域の観光資源や魅力が集積し“ 目的地” となりつつある「道の駅」は、今後も、観光振興や地域づくりを学ぶ学生の課外活動や就労体験の場として活用することを進めており、将来の地域活性化の担い手となる人材育成、若者ならではの視点を生かした地域づくり、地域外の若者との交流による「道の駅」の新たな価値の創造等の効果や中山間地域等の日常サービスの提供を支援する「小さな拠点」や東日本大震災時の経験を活かし災害発生時の後方支援拠点等として、様々な役割が期待されています。
本稿にて紹介した制度等を活用しつつ、今後も引き続き機能強化を図ることができるよう取り組んでいく予定です。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧