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「新たな公」と道守さんたち
道守九州会議事務局長 森将彦

最近は「新たな公」また「新しい公共」などの言葉をよく見聞きするようになりました。
「公私」と「官民」、本来は異なる意味合いの言葉でありますが、近年の社会意識の中でややもすると、公=官(行政等)、一方の私=民で公(官)とは相対する立場で、苦情や注文等をすればいいもの・・・・として意識されてきた感があります。たとえば、家前の歩道投棄ゴミを管理者に「管理が悪い」と責める民と、このためより費用を投じ細かな管理を実行する官・・・・これらに類する光景はしばしば見受けられるものであります。
反面、最近は「公的資産は私達の共有財産・・・みんなが心地よく美しいものに・・・・私達も出来ることをしよう・・・・」といった市民意識も広がりつつあり、道路等においても、ゴミ回収や花木の育成など身近な公空間における私(民)の自主的な活動が増えてきています。
これらは冒頭の公私、官民など難しく考えるものでなく、ただ身近な地域や社会のため何かお役に立てることを・・・・出来ることを出来る範囲で・・・との想いからの行動であります。
私達は、このような「道」という舞台やテーマに関連して活動をされる方々を「道守」さんと名付け、各々の活動の様子や苦労、喜び等々の情報交換や交流を通じ、活動への元気付け、新たな仲間の広がり、市民意識等への啓発などを行っていこうと、多くの市民団体やNPO、企業等の活動者(道守さん)によるネットワークとして各県レベルで「道守会議」を結成し、行政との協働のもと、また多くの個人、企業等の皆さまの賛助支援のもと活動を推進してきています。
道守活動は清掃美化や花木の育成等の活動から街道や宿等の道資産の保全・活用活動、異常や危険等のモニター活動など多様な活動が見られますが、それぞれ地域や生活を思っての自主活動であります。
道守会議での道守さん同士の交流やネットワーク活動などを通じ最近では、より地域に貢献できるように、自主的な個々の道守活動をベースとしつつ、より広域的な視野で協力・連携した活動にも取り組もう・・・・といった意識や裾野の広がりも見せつつあり、「道」という回廊ツールをベースに地域の有する景観や自然、文化、歴史等々の資源を磨き・繋ぎ、より豊かな交流と地域の元気化をめざす「日本風景街道」運動への取組にも発展してきています。
またこれらの活動や連携の広がりの中で、子供からお年寄りまで含めた地域のコミュニティー再生などにもその波及が見られてきています。
冒頭の「新たな公」でみれば、従来の公=官(行政)と私=民との間に、民(or民官協働)が担う公という領域が見えてきますし、道守さん等はまさにこれら「新たな公」の主役であります。
また九州では道守会議という個々の道守活動者のネットワーク活動組織が存在することから、これら「新たな公」の構成も、市民団体やNPO、企業等の個々活動者のステージと、ネットワーク活動を通じての個々活動の発展、活動者間・地域間連携による活動の広がり、新たな活動の発掘・育成などのより広域、高質的な活動隊のステージの2つの領域を有し、これらが有機的に連携できる環境が育っています。
特に後者の活動ステージは、例えば、河川での上流から下流域の個々活動者を繋ぐ流域連携活動などにも例を見ることができますが、全国的にもまだ稀な存在で、今後の「新たな公」の役割や活動の内容や質を考える上で、また官民協働という公私調整の場の円滑な運営の面においても重要な存在になってくるものと思われます
特に近年は、予算や体制面等の行政力量の制約、行政ニーズの多様化・細部化、民視点からの行政評価、民参加等々、官民と公私の関わりのあり方がクローズアップされてきており、「新たな公」が意識されてくる所以であります。
しかしながら、このような民活動の円滑な継続や発展においては、例えば、活動参加者への保険、苗や種子、作業用具、給水、廃物処理、通信事務等の個別活動運営費用やネットワーク活動でのワークショップ、連絡調整等々費用の円滑な調達は課題であり、またこのような民活動への官(管理者・行政等)の意識、気配り等も活動者の励み、元気付け、相互信頼等の面からも重要でありますが、現状においては一部の自治体や国において支援制度等も存在しますが、まだまだ課題も多く、行政制度や行政意識面から十分にこれら民活動に向きあえていない状況かと思われます。
行政のスリム化、行政ニーズの多様化・細部化、市民参加等々の方向の中で、この「新たな公」の役割や位置づけ、制度などは、今後の大きな行政テーマの一つであると思われます。
今後、様々に議論、検討される「新たな公」の姿においては、例えば、従来のPI等での民意識収集や審議会等での民参加、またボランティア活動支援・助成等々の領域(意見を聞いたり助成したりはするが権限までは委ねない領域)を脱皮し、従来の「公=官」の領域の一部を、官と民が契約又は協定等に基づき、その責任と権限の範囲等を明確にし経費を含め民に委ね、官民双方が責任と権限を分担し協働する・・・・などの新しい領域の姿も視野に検討されていくことも重要かと思われます。
いずれにしても経済・社会環境の変貌の中でk地域や社会に何か貢献できることを・・・・と想いを寄せる方々が増えてきている事実、また元気な高齢者や現役を退いた有能な人材の増大などの時代環境の中で、このような良識の民をうまく行政領域等の中に取込む知恵を求められている時代かと思われます。

平成21年10月、「あなたと私でつなぐ道~新たな公ってなんね?~」をテーマに開催された道守九州会議交流会。
上段は宮崎大学根岸准教授、吉武准教授、道守みやざき会議屋の副代表世話人による基調対談と会場風景。下段は青島パーキングにおける各県道守会議の記念植樹風景。

会員の情報ツールの「道守通信」、官庁の広報経費縮減の中で休刊状況となっていたが、企業からの広告支援のもとで再発刊の運びに。

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