「九州インフラカード」の発行
山下正昭
キーワード:九州インフラカード、観光ビジョン、広報
1.はじめに
2016 年3 月30 日、『明日の日本を支える観光ビジョン構想会議』(議長:内閣総理大臣)において、『観光先進国』への新たな国づくりに向けた観光ビジョン* が策定され、『世界が訪れたくなる日本』を目指すとともに施策実行のために政府一丸、官民一体となって取り組んでいるところである。
九州地方整備局では、「地域振興に資する観光を通じたインフラの活用」を実現するための一助として2018 年度に「九州インフラカード」を作成し配布を開始したところであり、その取り組みについて紹介する。
2.作成準備
九州インフラカードの作成にあたっては、先行事例のダムカード等を参考としてカードの作成ルール、シンボルマーク、カードデザインの統一ルール、配布場所や配布ルール等について九州地方整備局の関係する部署で組織したプロジェクトチームにより議論を行った。議論は2018 年度4 月にスタートしたところであるが、九州インフラカード配布開始を夏休み前の7 月中旬を目標としたことから、職員自らがアイディア出しから作業までを行った。
なお、2018 年度は第一段階とし、九州地方整備局が整備・管理する河川、道路、公園、港湾・空港、営繕を対象として特徴的な施設を抽出し作成することとした。
3.デザイン
カード自体がインフラ施設への訪問を促すひとつのインセンティブとなることを念頭に、おもて面にはインフラ観光、地域活性化につながるであろう写真、裏面にはインフラ施設の広報ツールとなるよう施設に関する基礎的な諸元や役割等の様々な情報を記載し、簡易パンフレットをイメージしてデザインを決定した。
シンボルマークについては、九州7 県をイメージし、太い線で縦横に結ばれている図柄により、様々な九州のインフラが調和よく整備されていく様子を表現した。
なお、本シンボルマークについては特許庁へ商標登録出願を提出し、既に受領され現在審査を受けているところである。
背景色は、カード収集者の趣向も踏まえ、インフラ施設ごとに色を分けることとした。7 月の配布開始時は5 つのインフラ施設としていたが、8月上旬には機械系カードをラインナップに追加している。
また、カードの作成、増刷、更新等のルールについては以下のとおりとした。
・カードは1 施設1 種類を原則とし、対象とするひとつのインフラ施設が広範囲かつ複数の施設で構成されている場合は、この限りではない。
・更新は、原則として各施設における大きな転機があった時点(管理○周年、大きなイベントなど)に限り行うものとする。
・おもて面のバージョン情報については、更新するたびに1.0、2.0、3.0・・・としていくものとし、軽微な変更の場合には、1.1、1.2・・・、2.1、2.2・・・とする。写真の差し替え、記載内容の全面改訂は軽微な変更にあたらないが、一部の文言の修正程度は軽微な変更とする。
・年月は、バージョンを変えた年月とする。なお、増刷および修正の場合には変えないものとする。
4.配布ルール
カードの配布については以下のルールを設けた。
・カードは、配布施設への来訪者のみへ配布するものとし、原則として手渡しにより1 人1 枚とする。
・各施設での配布は、当該施設のカードまたは最寄りのインフラ施設のカードに限るものとする。
・原則、受け取るための条件(施設見学をする、先着○名など)は設けない。
・職員間の取り寄せによるカードの受け渡しは行わない。
また、カードは、インフラ施設広報用の簡易パンフレットという位置づけであることから、下記の点に留意することとした。
・多くの方にインフラ施設等に関する理解を深めていただくという趣旨であること。
・売買の対象となることのないようにすること。(プレミア性を演出しないこと)
・作成費用の低減に努めること。
5.配布開始とその後の反応
インフラカードの統一デザイン決定後、九州地方整備局の各部にて施設毎のおもて面の写真や裏面の情報収集について急ピッチで作業を進め、2018 年6 月下旬には、河川系20 種類、道路系28 種類、港湾空港系14 種類、公園系2 種類、営繕系1 種類の計65 種類のカード原稿が出来上がった。配布に向け、全種類のカード各々1,000枚の印刷を進め、7 月19 日には記者発表を行い7 月23 日より九州各地にて配布を開始した。カードの配布場所は対象施設がある直轄の事務所および出張所のほか、協力いただける公共施設や道の駅等とした。
各カードの配布場所については、九州地方整備局ホームページにアクセスすることで確認することができる(図- 8 参照)。
配布開始後は、報道機関からの問い合わせや取材を受け、建設系専門紙だけでなく九州各地の一般地方紙を含め16 紙に記事が掲載され、様々なWeb ニュースでも取り上げられた。また、一般者のSNS で多くの反応があり、直接電話での問い合わせもあるなど盛況であった。
6.おわりに
今回、九州地方整備局が整備・管理しているインフラについて一層の理解と関心を深めるとともにインフラ観光、地域活性化の一助とするためインフラカードの発行を行った。整備局単位でインフラを横断的に網羅したカードを発行するのは全国的にも初の取り組みとなったが、短時間で作り上げるためにダムカード等の先行事例を参考としながら九州地方整備局職員が手作りで進めた。配布開始後は一定の反響があり取り組みは成功したといえる。
2018 年度は第1 弾として直轄のインフラ施設をカードにしたが、趣旨に賛同いただける九州管内の他の機関においても同様のカードを作成・配布することを可能としている。現在、九州地方整備局内では公園施設や九州技術事務所の災害対策用機械も種類を増やしており、その他機関において土木遺産カードも作成されることとなっている。
インフラカードは、単なるインフラ施設の紹介だけでなく土木の魅力を発信するツールとしてかなり有効だと考えているところであり、フォトジェニックとなる写真の撮り方や記載する情報の工夫等改善を図りながら今後も継続した取り組みを行うこととしている。
「九州インフラカード」が、地域振興および観光・まちづくりはもちろんのこと、建設産業の担い手不足解消にも貢献していくことを期待する。