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九州技報 第42号 トピックス
風景デザインに関する取り組み
風景デザイン研究会
1 風景デザイン研究会の設立
『豊かな自然と人の情けに溢れる故郷を再び取り戻すためには、まずその器である公共空間を守り、育てることが大切です。人々が暮らす場所こそが、心地よく整えられておく必要があります。さらに、景観法の施行により、「美しい地域」を創ることが住民の目標となりました。しかし現実は、縦割りの事業計画による全体性の欠如、調査から施工まで引き継がれるべき設計意図の一貫性の喪失、官民の担当者のめまぐるしい異動による長期事業における責任の所在の不明確さ等々、問題は山積しています。これらの諸問題を解決するためには、風景に関わるすべての人が、自ら汗をかくと同時に、互いの垣根を取り払いともに働く必要があります。しかもそのような活動は、子供たち、孫たちの時代に実を結ぶような息の長いものになるはずです。まずは、志を同じくする人々が集い意見や情報を交換する場が必要であると考えました。また、そのような場をもとに、実際の仕事が動いていくような組織を作ることも重要です。さらに、このような活動を各地域で担っていく人材の育成も急を要する問題です。上記の問題意識に基づき、「風景デザイン研究会」の発足を決意した次第です。』
 
これは、2006年7月に産声を上げた「風景デザイン研究会」の会長小林一郎熊本大学教授および副会長島谷幸宏九州大学教授による設立宣言文です。
いわゆる「景観法」が制定されたことを契機に、まちづくりや公共施設等の整備に当っては、地域の風土や風景との調和を図り、もって良好な景観形成の促進、美しく風格のある国土の形成を図ることが強く求められるようになってきました。
それによく応えるには、各企業の技術者によるデザインに関する常日頃の研鑚はもとより、景観・風景専門の学識者や関係行政担当者との産官学一体となった取り組みが必要です。
風景デザインの定義は明白ではありませんが、これまでの景観デザイン、景観設計の意味を拡大し、美しい風景づくりを行うこととしてのグランドデザインを、公共施設の整備や保全や、公共施設以外においても人間の活動による公共空間のありかたを規制・誘導そして啓発すること等により取り組むことで、誇りをもてる生活空間やふるさとづくりを行うものです。
 
2 風景デザイン研究会の活動テーマ
このような取り組みの必要性を受け、平成18年7月「風景デザイン研究会」を設立しました。
設立総会、シンポジウム等をかわきりに、風景デザイン等に関する情報や技術の発信拠点として、また、各地で抱える景観デザインの相談受け皿として、技術力をフルに活かした地域貢献のための組織として、活発で、かつレベルの高い技術を提供していくことを目標に、学識経験者の方々を主体に、産学官一体となって取りくんでいます。
活動は、次の4つの柱を設け取り組んでいます。
 
風景デザイン研究会の活動の4つの柱
絶え間ない実践の中で美しい風景を創ることを理念としながら、九州及び周辺地域を主たるフィールドとして、地域の美しい風景の維持・育成・復元を推進するための諸活動を行う。
① 社会啓発活動
展示会・シンポジウム等を通じて、九州における風景の重要性や、風景を創る仕事はどのようなものかを社会に効果的にアピールする。
② 研究・調査・実践活動
様々な研究・調査・実践を通じて、風景の維持・育成・復元に必要な知識・ノウハウの蓄積を進めるとともに、風景を創る仕事とはいかにあるべきかを形で提示する。
③ 人材育成活動
研修会・勉強会を開催し、風景に関連した様々な分野の人材を育成する。(仕事の担い手としての専門家の育成、仕事の創出者・管理者としての行政マンの育成、仕事の主体者・監督者としての市民の育成、将来を担う人材としての学生の教育)
④ 専門家と行政・NPO・市民を繋ぐネットワークの構築
風景の維持・育成・復元を効果的に進めるために、関係する様々な立場の人々・組織の間でネットワークを構築する。①~③を通じてネットワークを構築する。
 
風景デザイン研究会 学識者メンバー
会 長 小林一郎(熊本大学大学院教授)
副会長 島谷幸宏(九州大学大学院工学研究院教授)
樋口明彦(九州大学大学院大学院准教授)
仲間浩一(九州工業大学工学部教授)
柴田 久(福岡大学工学部准教授)
田中尚人(熊本大学大学院准教授)
星野祐司(熊本大学大学院准教授)
高尾忠志(九州大学大学院工学術研究員)
石橋知也(福岡大学工学部助手)
 
 
3 景観デザインに関するこれまでの流れ
公共施設の計画・設計をする際に、施設単体としてのデザインや、景観への配慮としての景観設計・景観計画ということはかつてから行われてきました。特に、景観設計という名のもとに行われてきた一部の間違ったデザインの考え方を見直すため、建築デザインや工業製品のデザインであるプロダクトデザインとは別に、「シビックデザイン」という言葉を生み出し、公共施設特有のデザイン論を展開することが10年ほど前に行われました。建設省(当時)では、産官学の協力による「シビックデザイン導入手法研究委員会」を発足させ社会資本整備の中心的役割を担う公共土木施設のシビックデザインを導入する方策について検討を行い、シビックデザイン導入推進のための提言を取りまとめています。
この「シビックデザイン」とは、国土と都市の基盤形成を担う公共土木施設のデザインであるとし、次のような考え方を基本としています。
シビックデザインの定義は「地域の歴史・文化と生態系に配慮した、使いやすく美しい公共土木施設の計画・設計」であり、シビックデザインは公共施設を対象とするものであることから、それが備えるべき要件は、永続性、公共性、環境性の3要素といわれ、他のデザインの概念との比較を明確にしなければならないとうたっています。
このように、公共施設のデザインの基本については、この議論の中で十分に語られています。
「風景デザイン」は、ある意味、これらの基本的なコンセプトを十分に理解したうえで、視点を計画すべき公共施設から景観を考えるのではなく、逆に、施設を取り巻く風景から施設単体を見るということなのかもしれません。
これについては、九州工業大学の仲間教授が第1回のシンポジウムで語られたメッセージ「コンストラクションからインスタレーション」がそのものだと思います。以下に、仲間先生のメッセージの概要をご紹介します。
 
「公のチカラを集め風景のカタチへ」というタイトルで話をされた九州工業大学工学部仲間教授の話です。
 
『僕は九州に来てからというか、大学の教員として来てもう12年たちました。「空間をつくる風景を生み出す」というテーマで、この話から僕はスタートして、5年、10年後やっていきたいという気持ちでいます。
建設工学はモノをつくりますから、constructionですが、そうするとどうしてもモノの話になってしまう。構造令でこれだけの容量があって、どんな道路をつくるかとか、橋で親柱をどんな形にするか等、モノの属性を議論することになる。従って、スペックや基準を満たしているかという話になる。そうなってくると、次に、色はどうする、化粧をどうする、という話になっていきやすい。実際にそうなってきた歴史もある。
僕はこのconstruction という考えをもうやめて久しく、installationにしましょうといっています。インストールするということは、例えばソフトウエアをインストールするとかのように、もともとそこにある環境がないと機能しないものです。モノを独立して議論することができないのです。つまり、公共施設をinstallationするということで、対象となる施設を地域にどうやって組み込むかという発想でやってきました。例えば、人間には履歴書というものがあるように、場所にも必ず履歴書というのがある。その履歴にそぐわないモノを持ってきたって組み込まれやしません。モノの価値、モノの属性で風景の価値を語るのではなくて、関係の多彩さで風景の価値を語りましょうという話で、皆さんが人と接して、人を見ているのと同じように、風景と接して、風景を見てほしい、そういうことだと思います。
結局、モノをつくりながら、そこの暮らしはどうなるかとか、何を思い出してくれるかとか、その場所で本物は一体何なのか、そこでとれる材料を使った職人さんの生活文化というのが大事なんじゃないのか・・。モノそのものじゃなくて、その場所でどんな関係がたくさん持てるか、たくさんつくれるかということが大事で、それが公共デザインで一番大事な目標なんじゃないかと思います。どれだけ関係をつくっていけるかということです。
僕らは空間をつくって、その空間の中で、どんな人間と環境の関係が豊富になるか、その場所を通じて人間同士の関係が豊富になるかということを考えるべきなのです。』
 
 
4 風景デザインと地域づくり
風景というものが自然と人間との営みのなかで生まれてくるものであることを踏まえ、研究会の先生方は、風景デザインを行うときに、「場を読み解く」という表現で説明されます。施設が整備されることになる場所あるいは空間の履歴を理解・認識するだけでなく、その場所が現在ある姿に至った経緯やその地域特有の社会システムのようなものを、表装的な理解のさらに先の深いところを捉えることが大切であるということだと考えられます。
しかし、このような地域固有の現象については、よそ者である計画者や設計者には十分に理解できないところが当然あります。
その課題を解決できる唯一の方法は、地域の人々の参加による情報収集や計画検討だと考えられます。
住民参加や市民参加の公共事業の手法は、すでに当然のことと言われるようになりました。しかし、そこで合意形成が意味するものは、住民のかたに計画者の立てたプランを納得してもらうためのプロセスとして採用していることも数多くあるように思えます。
風景デザインを進めるにあたっての市民参加・住民参加とは、説得するための手段ではなく、その地域の人でなければわからないその場所の履歴や社会システムを聞き出し、計画者が認識するための場であり、これは、第2回シンポジウムの特別講演で話をいただいた中村良夫先生がおっしゃる「ローカル・ナッレジ(地域特有の情報)」をいかに掘り起こし、計画者の理解を深めるかという目的で必要な手段として考えるというものです。
また、地域参加には、地域のコミュニティの醸成という効果もあると考えられます。公共事業に地域が参加することで、自分たちのかかわりのある中で地域づくりが進んでいくという気持ちが、地域への愛着や誇り、そして地域の人々の間で連帯意識につながるというものです。これについては、福岡大学の柴田准教授が同じく第1回のシンポジウムで語られたメッセージ「地域を育てる-風景という力」で熱く語られています。以下に、柴田先生のメッセージの概要をご紹介します。
 
「地域を育てる-風景という力」で話をされた福岡大学工学部柴田准教授の話です。
 
『自分の専門領域を一言で申しますと、住民参加型の景観デザイン、つまりコミュニティ・デザインという言い方になります。コミュニティ・デザインとは、対象空間の設計、計画プロセスに住民を取り込むことで、魅力ある空間形成のみでなく、地域コミュニティの醸成を図ろうとするデザイン方法論と考えています。
昔は、空間や景観、空間設計の専門家と呼ばれる人たちがチームで対象空間に対して完成に導いていたと思いますが、今は、ユーザーである住民の意見を取り込んで造り上げる。しかし、我が国の住民参加というのは、この計画プロセスに住民の意見をどう反映させるかということばかりに意識が集中し過ぎている。
実は、コミュニティ・デザインというのは、この対象空間を介して全然知らなかった住民同士にネットワークを生み出させること、こういうところまでやはり目標に置いて住民参加のプログラムはつくっていかなければならない。
 

 

 
それと、自分たちでつくったという感覚がその対象とする空間への愛着や関心を喚起させ、ポイ捨てなんかはすぐなくなり、暮らしぶりが変化したりということがあります。
さて、コミュニティ・デザイナーが習熟していなければいけない4つの手法があります。
まず、共同作業として、どういう目標を持って、個々のワークショップでどういうプログラムをつくっていくかというグループプロセスの手法について。
2つ目に、ボランティアの組織化とか、コミュニティを取り囲む地域権力構造の把握・利用。例えば、意見を聞きたい人が、なかなか意見を言ってくれないので、状況を確認すると、実はオーナーがすぐ横にいて話を言いにくかったということがありました。そういう権力構造みたいなものも把握して利用するという手法というか能力について。
3つ目は、明確なデザインをするためデザインの基礎的な理解から実際の設計技術に、コミュニティ、住民の意見を実際の空間にどう集約させて統合させていくかというツール・手法を持つこと。
4番目に、明瞭なコミュニケーション。デザイン上の問題を、普通の人が理解できる形に翻訳して、考えられるように表現してあげること。コミュニティに専門家としての考えを知ってもらうことの重要性は絶対に重要で、模型で自分たちの考えとかを住民の人にどうわかりやすく伝えられるかということが必要になってくるのです。』
 
 
5 九州から発信する風景デザインの取り組み
九州は、今、風景デザインあるいは景観デザインに関しては、きわめて恵まれた状況にあると考えられます。そのひとつに、その専門の先生方がここ九州に多く結集されていること。そして、もうひとつが、九州という風土がもつ、優れた風景資産があるということです。
 
これについては、九州大学の樋口准教授が同じく第1回のシンポジウムで語られたメッセージ「美しい風景は九州の誇るべき資産」で熱く語られています。

 

 
『九州に来て今年で8年目になるんですけれども、土木という分野にいる関係でいろんなところを見て歩いて、特に土木構造物に目がとまるわけですね。
これは皆さんよくご存じで、竹田にあります白水ダムです。これはすごいなぁと。九州というのはもちろんこういうものもすごいし、自然環境もすごい。おまけに歴史も、邪馬台国が九州にあったのか近畿にあったのかもめていますけど、私はぜひ九州にあったことになってほしいと思うんですけど、すごくいいところがいっぱいある。

 

ところが、土木屋として目を向ける対象物の数としては圧倒的にこういうのが多いのが今の状況で、こんな風景ですよね。まちの中もこんな感じのところがどこへ行ってもある。それで、九州に限らず日本中こんな感じで非常に悲しくなってしまうわけです。
それで、それを何とかしたいということで、平成11年からいろいろやってきています。私の取り組み方の基本姿勢は「みんなでやろう」ということで、僕はできるだけ業者の人、施工する人、図面を引くコンサルさん、それからうちのスタッフの連中と、市民の皆さんの声を受けて、ああでもない、こうでもないをやります。ひたすら模型をつくって、自分の腕を磨きつつ世の中を勉強する。
要は土木屋さんが、例えばダムを末永く人々の役に立つように想いを込めてつくりましたということだろうと思います。私は土木屋ですので、そういう想いを今の時代に合う形でつくるものに込めて仕事をしたいなと。それも自分でやるんじゃなくて、先ほどお話ししたような、そこに住んでいらっしゃる方とか、仕事をされている行政の方とか、いろんな人と一緒にやりたいなと思ってやっています。
環境王国九州を九州人の知恵と努力で百年かけてこつこつと創っていく、その道のりを示し、先頭を走るのが我々の仕事だろうというふうな理解で、体育会系のノリでうちの研究室はやらせていただいております。』
 
また、最近、九州に赴任された熊本大学田中准教授は、ふるさと京都の話を話題とし、次のようなメッセージを語られました。「地域の風土を学ぶ、作る、育てる」をテーマに熊本大学大学院田中准教授の話です。

 

 
『修学旅行とかで京都へ行かれると、土木の人だったら結構知っていると思うんですけれども、南禅寺に琵琶湖疏水の水路橋がありますが、僕はおばあちゃんのうちがこのすぐそばで、きれいな橋やなと思いました。でも、この上を流れている水が、実は僕らが生活している京都の人の飲み水になっていると、いろいろと知るようになって、そういうところから私の風景デザインが始まっています。
私たちの生活を支えているインフラを整備する仕事というのは、みなさん、美しいものをつくりたいと思っておられると思うんです。それは何も今に始まったことではなくて、昔からこういうふうに考えておられて、こういうのがつくれると美しい風景もできる。
昔の人はこういう美しい風景を守るために、治水とか、生活とか、いろんなことを考えてそういう水辺をつくっていたんだなということがわかって、美しさもひとしおという感じで、土木の歴史を学ぶことは、いかにデザインにつながっているかということをいろいろと勉強してきました。
ちゃんとした技術、防災とか、治水とか、そういったものに裏づけられたアメニティというのをどうやって享受してきたかというときに、これは本来は建築的な空間かもしれませんけれども、こういう遣り水の文化みたいなものも、琵琶湖疏水を守っていたと。
使う側の作法というか、そういうソフトも合わせて継承されてきている。だから、風景といったときの場合に、必ずしもモノだけじゃなくて、そういう人の心というか、そういったものも含めてデザインしてきたんだなということがよくわかりました。』
 
 
6 風景デザインという仕事
風景デザインという概念がしっかりと九州に根付くには、大学の先生方が学生さんを教育したり、風景デザインに関する研究を進められることとあわせて、当然、公共事業に関わる技術者が、その考え方を理解し、必要な技術力や表現力を身につけねばなりません。特に、市民参加を基本としつつ計画を練っていくためには、地域に飛び出し、市民方々から信頼される技術者とならねばなりません。ひとりで黙々と仕事を進める従来の技術者像とは違った姿がここにはあります。
 
この風景デザインを仕事とすることについては、熊本大学星野准教授が、「風景をデザインする仕事」というテーマで話をされました。

 

 
『「みえてはいるが、誰もみていないものをみえるようにするのが、詩だ」。詩のある種の定義として詩人が語っている言葉です。鷲田清一という哲学者の本を読んだときに、この言葉はポエムの定義でもあるけれども、哲学の定義でもあるんじゃないかという形で引用していた言葉です。これを読んだときに、風景デザインというものの定義にもなるのかなと、すごくいい言葉だなと思って、自分のテーマとしていきたいと思っています。
まちづくりに取り組んでいるときに、地元の人ほど地元の風景を知らない、風景のよさどころか、地元の風景を見ていない、そういうことはあると思いますし、自分たちも、じゃ、家のすぐそばの風景をすぐにスケッチに起こせるか、意外とやっぱり見ていない。つまり、「みえてはいるが誰もみていないもの」というのが実は風景そのものなのかなというふうに感じました。
さらに「みえてはいるが、誰もみていない」というものを見えるようにするとは、詩なり、作品なり、空間づくりなりを通して、それを利用する人であったり、詩を読んだ人であったり、それとある種の環境をつなぐメディアでしかない、つなぐ媒介でしかないというところがいいなと。
それで、環境と人を結ぶインターフェースというものが風景なんじゃないかと考えます。その仕組みをよりよいものにするとか、使いやすくするとか、つまり、人と環境をつなぐ作業、それが風景デザインではないかということを感じています。』
 
 
7 風景デザインは誰のため
construction から installation へ」というテーマで語られた仲間准教授は、同じ講演の中で次のようにも語られました。
 
『責任があるのはだれか、だれに対して責任を持つかというと、今の住民も大事なんだけど、未来の住民だと考えます。未来の住民にとってクラシックになるモノをきちんと残そうということです。今の自分たちが欲しいものを与えるのではだめで、未来の住民が今の時代を振り返ったときに、何が自分たちのクラシックなのかということを与えるのが風景デザインというものではないのかなというふうに思っています。』
 
風景デザインには、恐らく多くの答えと多くのアプローチがあるのであり、決められた手法が確立するテーマではないと考えられます。しかし、その理念を理解し、デザインするという覚悟と、それに見合う情熱や自ら汗をかくことが必要であるということは共通の姿勢ではないでしょうか。この風景デザイン研究会の活動を通し、あるいはこの会の設立を契機に、先生方の熱い思いを多くの技術者や関係者に伝えることができればと思います。
 
8 研究会の活動の紹介
シンポジウム開催や景観関連の国際会議への支援、学生や社会人の風景デザイン教育支援にあわせて、会員の募集や、HPの立ち上げ等による研究会の認知・広報活動を行っています。
① 総会、シンポジウム・事例発表会の開催
毎年6月ごろ、九州大学西新プラザ大会議室において、会員による総会を開催しています。
総会後には、シンポジウム・事例発表会を行っています。平成18年度は、「九州の風景を動かす」をテーマに、また、平成19年度には、「風景はデザインできるか?」をテーマにシンポジウムを開催しました。

特別講演:中村良夫先生をお呼びして

 
 
 
② 九州デザインシャレット2006、2007の開催
九州デザインシャレット とは、KL2(Kyushu Landscape League/主に九州で景観デザインを学ぶ学生と卒業生のネットワーク)と風景デザイン研究会の主催による合宿型設計演習です。土木、建築、ランドスケープ、インダストリアルデザイン、環境等に関わる者を対象として、専門家の指導のもと、実際のまちづくり課題に短期間集中して取り組むものです。平成17年度は、佐賀県唐津で、平成18年度は、熊本県宇城市三角町で、平成19年度には福岡県北九州市門司港を舞台に全8日間の日程で開催しました。

 
③ 景観会議、景観講習会の支援 (主なもの)
● 平成18年11月3日~7日:2006日仏景観会議実 行委員会主催の日仏景観会議に対し後援
● 平成18年:国土交通省職員対象景観研修に対し 企画・講師派遣
● 平成19年1月10日:建設コンサルタント協会九 州支部主催の景観講習会に対し共催
● 平成>19年5月開催予定の社会人景観研修の企画 立案
④ HP立ち上げ等の広報活動
会員および一般市民等へ、研究会の広報および情報発信のためのHPを開設しています。
⑤ 景観デザインの教科書出版に向けた活動
平成20年8月発刊を目指し、執筆作業が続けられています。
⑥ 風景デザインサロンの実施
平成19年9月から毎月1回、風景デザインに関する話題を、フランクな形式で自由に議論しあうサロンを会員向けに開いています。
 
9 風景デザイン確立のための課題
民間企業として建設コンサルタンツ協会からは、風景デザインに対して、次のような意見が出されました。
1)風景デザインの教育の場・実践の場の確立
● 小中学校はもとより、高校等でも、デザインの教育というものはなされていない。ビオトープ等の自然界の生物への現場教育は、総合学習等の一環で始まってはいるが、風景や街並み等の視点での教育はなされていない。
● 建設系学科でデザインを学んだ学生の就職の場がない。
● デザインという職域が成立しておらず、土木デザインの仕事で実績を積んでも単発的な要請で仕事を受けるような状況である。
● 土木系の技術者は、デザイン関連の基礎をしっかり学んだ経験がない技術者がほとんどである。コンサルタント自身も、デザイン等についてしっかり学ぶべき。
● 企業(コンサルタント)も技術者も、デザインが重要との認識はあるが、デザインで人材育成しても飯が食えるのかという不安があり、しっかりした取り組みになっていない。
 
問題提起
デザインという技術で飯が食えるよう「デザインに関する職域」を確立しなければ、風景デザインのしっかりした技術者は育ってこない。しっかりした風景デザイン技術者が育たなければ、いい風景は生まれてこないし、いい風景を残せない。
 
2)「風景デザイン」の重要性の認識
● 個別の景観デザインを包括する、上位計画としての「風景に関するビジョン」のようなものがなければ、まとまりのある、よい風景は生まれてこないのではないか。
● 「風景デザイン」の必要性、重要性を認識することが大切である。
● 「風景デザイン」とは、単なる視覚的なデザインでなく、〈風〉〈せせらぎの音〉〈木の香り〉等の五感に働きかけるものである。
● 良い風景とはどんなものか、意識して考えた事がないのが実態ではないか?いい風景というものを理解するためにも、「九州の風景」のような写真集や、いい風景の場所の紹介を行う情報提供が必要でないか。また、そのような風景に接する機会を積極的に持つべきでないか。
● 公共事業が再編される中で、江戸時代には確かにあった日本人本来のデザイン観、地域性を取り戻す、時代の要請・転換期さらには需要があること。
 
問題提起
「九州の風景」、「心に残る風景」等、「風景」というものを、広く市民が認識し、理解するような仕掛けが必要ではないか。その上で、人々が望む風景のあり方のマスタープランのようなものを策定することが必要ではなかろうか。
 
3)「いい風景デザイン」の判定基準づくり
● 心象的なものも絡むであろう「いい風景デザイン」に対する判断基準はどうするのか?
● 絵画のような目利きが見極めるようなものなのか、客観的な評価尺度のようなものがつくれるのか?また、誰が、そのような判定をすべきなのか。
 
問題提起
きちんとした「風景デザイン技術者」であることを認定するような仕組みはできないものか(資格の制度づくり(風景デザイナー1級等)、実績(GOOD風景デザイン賞受賞技術者等)等)
 
現在、風景デザイン研究会は、会員数100数名、賛助会員15社、協賛団体1団体で活動しています。今後も、皆さんのご支援等により積極的に情報提供・技術的支援を実践し、九州の風景づくりに寄与して行きたいと考えています。
 
 
風景デザイン研究会 協賛団体(2007.10.25現在)
社団法人 建設コンサルタンツ協会九州支部
 
風景デザイン研究会 賛助会員(2007.10.25現在)
1. ㈱エスケイエンジニアリング
2. ㈱オリエンタルコンサルタンツ九州支社
3. ㈱環境調査技術研究所
4. 九建設計㈱
5. ㈱九州開発エンジニアリング
6. ㈱建設技術研究所 九州支社
7. 第一復建㈱
8. ㈱長大 福岡支社
9. ㈱東京建設コンサルタント 九州支店
10. 日本工営㈱
11. パシフィックコンサルタンツ㈱九州本社
12. 八千代エンジニアリング㈱ 九州支店
13. 西日本技術開発㈱
14. ㈱福山コンサルタント
15. 復建調査設計㈱ 福岡支社
(名前順)
 
風景デザイン研究会 事務局担当 矢ヶ部輝明

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