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灰土を用いた高盛土の調査・設計・施工

建設省川辺川工事事務所
 ダム第二出張所長
勝 木 和 徳

建設省川辺川工事事務所
 調査設計課地域整備係長
中 川 英 一

西日本技術開発㈱
 地域開発部部長代理
木 寺 佐和記

西日本技術開発㈱
 地盤調査部材料試験第一課長
中 尾 憲 治

1 はじめに
川辺川ダム建設に伴う代替地の一つである「高野代替農地」は,頭地代替地造成の切土を利用して最高約27mの高さに盛り立て,約3.9haの農地を造成するものである。切土の大部分は,阿蘇火砕流堆積物の非溶結部(いわゆる灰土)であり,その量は約80万m3である。
「高野代替農地」の盛土材料の主体とする上記灰土は,阿蘇火山第4回目の噴火によって堆積したもので,溶結することなく粘土化したものとされており,阿蘇火山を中心として東西南北の九州中北部に広く分布している。灰土は,火山灰質粘性土に分類され,高含水比で軟質であり,乱せば強度が著しく低下する性質を有しており,建設機・械の走行性(トラフィカビリティ)が問題となりやすいこと,すべり安定性に関する強度も小さいことが知られている。1)
また,盛土の基礎地盤には軟弱な新期崖錐堆積物が分布していること,盛土の前面が貯水池であることから貯水位の変動を受けること,農用地面積の確保から盛土勾配を緩くできないことなど厳しい制約条件下での盛立となっている。
調査・設計の過程において,灰土を無処理のまま施工することは,すべり安定性の確保,トラフィカビリティの確保に問題があることが明らかとなり,石灰添加による安定処理を実施することとした。
本報文は灰土の性状と石灰安定処理の方法・効果を中心に報告するものである。

2 地形・地質概要
「高野代替農地」は,川辺川の右支川の五木小川の左岸側に位置し,右岸側とともに一連の河岸段丘を形成している地区である。当地区の河岸段丘の標高は250~260m程度であり,幅200~300m前後で細長く発達している。
当地区に分布する地層を表ー2.1に,模式断面図を図ー2.1に示す。

3 調査・試験の内容
(1)現地調査と室内試験
灰土の性状を把握するために,頭地地区においてボーリング調査,標準貫入試験を行った。また,テストピット掘削を行い,深度1m,3m,5mに分けてのサンプリングを行った。
このサンプリング試料に対し,以下の室内試験を実施した。
 ① 物理試験
 ② 締固め試験
 ③ コーン貫入試験
 ④ 三軸圧縮試験
上記②~④の各試験は,石灰を40kg/m3,80kg/m3添加した試料に対しても実施した。
(2)現場盛土試験
安定処理に関しては,すべり安定性に必要な強度の確保および建設機械の走行性の確保を前提に経済性,施工性を追求するために,石灰添加量と締固め機械を組み合わせての現場盛土試験を実施した。

4 室内試験結果
(1)物理特性
物理試験の結果を表ー4.1に,粒度分布を図ー4.1に示す。これらの結果により,灰土の物理特性について以下のようなことが言える。2)
① 灰土の土粒子の密度は,一般の砂,粘土の値(2.65~2.70g/cm3)に比べ小さい。
② 含水比は,いずれの試料も60%以上と高い。特に深度3mの試料は高い。
③ 深度1mと5mの試料はシルト・粘土の細粒分が多く,60~70%を占める。一方,深度3mの試料は細粒分は37%であり,標準的な灰土より砂分が多い。
④ 深度5mの試料は液性限界よりも自然含水比の方が大きく,乱せば強度が著しく低下し,流動化する可能性がある。

(2)締固め特性
締固め試験の結果を図ー4.2に示す。
一般の土は最適含水比が明確に現れるが,灰土はこれらの結果からわかるように,最適含水比があまり明確でない。自然含水比は最適含水比に比較して,深度1mの試料では約10%,深度5mの試料では約30%湿潤側にあり,施工性に難があることがわかる。

(3)強度特性
母材と安定処理土のそれぞれについて,三軸圧縮試験を非圧密非排水試験(UU試験)と密圧非排水試験(CUバー)の両者で行い,短期強度,長期強度を求めた。個々の試験結果は紙面の都合上割愛する。試験結果を考察し,後述の「円弧すべり計算用に定めた物性値」を,基礎地盤の物性値とともに表ー5.1に示しているので参照されたい。
(4)トラフィカビリティ
建設機械が軟弱な土の上を走行する場合,土の種類や含水比によって作業能率が大きく変わり,時には走行が不可能になることもある。建設機械の走行性(トラフィカビリティ)は一般にコーン指数qcで判断され,各種の建設機械について,同ーわだちを数回走行可能な場合のコーン指数が示されている(表ー4.2参照)。

今回,母材ならびに石灰安定処理土に対するコーン貫入試験を実施した。その結果を図ー4.3に示す。
これらの結果より以下のことが言える。
① 母材は3試料とも,締固めエネルギーの増大に伴ってコーン指数は小さくなる傾向にあり,施工性は極めて悪い。
② 深度1mと深度3mの母材については,いずれもコーン指数は3kgf/cm2以下であり,湿地ブルドーザーの走行も難しい。
③ コーン指数5kgf/cm2以上を確保するためには,石灰を最低40kg/m3添加する必要がある。

5 設計内容と結果
(1)円弧すべり計算
高野代替農地は川辺川ダム貯水池に面しているため,水位の条件として,常時満水位,第1期制限水位,常時満水位から第1期制限水位への水位低下時,洪水時の水位急低下時と様々なものが考えられる。また,地震力を考慮しておく必要がある。これらの計算条件の他,前述した「盛土材(灰土)の安定処理の有無と強度増加量」,「基礎地盤(新規崖錐堆積物)の掘削・再転圧の範囲」をパラメーターとして,数多くのケーススタディを行った。
すべり計算用地盤物性値の一覧を表ー5.1に,円弧すべり計算結果の代表例を図ー5.1に示す。

(2)対策工の必要性
上記のケーススタデイの結果,以下の対策を行う必要があることが明らかとなった。
① 盛土材(灰土)は安定処理による強度増加が必要である。安定処理材として石灰を40kg/m3添加する。
② 基礎地盤(新規崖錐堆積物)は掘削・再転圧による強度増加が必要である。

6 現場盛土試験とその結果
(1)盛土試験の概要
既に述べたように,盛土のすべり安定性とトラフィカビリティを確保するためには灰土の安定処理を必要としている。室内試験結果に基づき,石灰の添加量は,強度,トラフィカビリティの両面より40kg/m3を定めている。ただし現場では,施工方法の違いなどにより,室内試験の結果がそのまま適用できないことも考えられる。
そこで,すべり安定性に必要な強度を確保することを前提に,経済性,施工性を追求する目的で現場盛土試験を3次に分けて実施した。盛土試験での地盤物性値の目標値を表ー6.1に,試験の流れを図ー6.1に示す。また,盛土試験の規模を図ー6.2に示す。
なお,頭地地区に分布する灰土の含水比は追加調査の結果,40~80%が主体であることを確認したので,盛土試験の対象は含水比40~80%の材料とした。

(2)第3次盛土試験の結果
盛土試験の結果の内,乾燥密度・コーン指数と転圧回数の関係を図ー6.3に,総合評価結果を表ー6.2に示す。これらの結果より以下の事が分かった。
① 石灰添加量は,室内試験結果より40kg/m3必要であると判断していたが,石灰添加量30kg/m3以上あれば,21tブルドーザーを使用し,施工性,目標密度を満足させることができる。
② 石灰添加量30kg/m3の場合の強度は,Ccu=4.0tf/m3,φcu=20゜となるが,斜面安定解析の追加検討により,この強度でも斜面の安定性は確保できることを確かめた。
従って,石灰添加量は30kg/m3で,転圧回数は4回であれば設計条件を満足する。
なお,評価の前提として以下の条件がある。
① 石灰の混合後12時間程度放置した後に盛土施工が開始される。
② 盛土施工は,撒き出し,敷き均し,転圧の一連の作業が連続して行われる。

7 おわりに
盛土試験結果に基づき,表ー7.1に示す施工仕様を定め,現在本格的な盛立てを開始している。
今回の盛土試験から課題として挙げられることは以下のとおりである。
① 母材含水比と石灰必要混入量との関係(今回は母材含水比の影響は認められなかった)。
② 石灰混合後の放置時間が安定処理効果に及ぼす影響度合
③ 室内試験と現場施工との相違
これらの事項については,現場施工の中でさらに追跡調査を実施していく予定であるが,本報が灰土に関する調査・設計・施工の参考になれば幸いである。

参考文献
1 ㈳土質工学会九州支部:九州・沖縄における特殊土
2 久保朝雄・児玉博寛・中川英一・吉田英明・勝木和徳:高野代替農地造成における土質改良と斜面安定に関する解析,九州地方建設局第45回管内技術研究発表会,平成6年度
3 ㈳日本道路協会:道路土工 施工指針

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