一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
宮崎港津波避難施設
津波洪水逃げるが勝ち~命の丘~

谷口泰弘

キーワード:津波避難施設、避難高台、ICT活用工事

1.はじめに
宮崎県の中央部に位置する宮崎港は大淀川の河口部に位置し、昭和 48 年に港湾計画が策定されて以降、防波堤や係留施設の整備が順次進められてきた。平成 2 年に大阪とを結ぶフェリーが就航して以来、RORO 船の就航等、貨物航路も充実し、現在、フェリー輸送による内貿貨物を中心に港湾取扱貨物量は県一を誇っている。特に、本県の主要産業である野菜や肉等の農畜産品については、海上輸送により大都市圏へ供給されており、本港は、南九州の物流拠点として重要な役割を担っている。また、港の北側に位置する一ツ葉地区においては、海洋性レクリエーションの拠点として人工ビーチやマリーナを有する「みやざき臨海公園」があり、市民の憩いの場として親しまれている。

2.宮崎港の地震津波対策
宮崎県では、東日本大震災での津波被害を踏まえて、南海トラフの巨大地震モデル及び宮崎県独自モデルを選定した上で、「津波浸水想定」を平成 25 年 2 月に公表している。また、大規模地震及び津波による災害時の港湾機能の迅速な回復や企業活動の早期再開を目的とした「宮崎港港湾事業継続計画(BCP)」を策定し、この BCP を確実に実行するためには、港湾労働者の安全確保が重要であるため、臨港地区の港湾労働者等が津波から安全かつ迅速に避難する方策を「宮崎港港湾事業継続推進協議会」等で議論の上、「宮崎港津波避難計画」を策定している。その中で、避難所および避難ルートを検討した結果、避難困難者を解消するため、宮崎港東地区緑地に 2 箇所、一ツ葉地区緑地に 1 箇所に避難高台を整備することとなった。

3.津波避難施設(避難高台)の概要
(1)避難施設の構造及び形状
避難施設の構造は、津波避難ビルや津波避難タワー等の堅固な構造物や、築堤・盛土等による高台が考えられる。津波避難ビルや津波避難タワー等の構造物は、維持管理や保守点検に費用がかかることから、維持管理が容易で構造が経年とともに安定し経済的である盛土構造を採用している。避難施設の形状は、津波の流れや向きに関わらず、漂流物の施設への衝突エネルギーを低減できる等の利点を考慮して、円形を基本としている。なお、一ツ葉地区は計画位置の平面形状と避難面積の関係上、堤状となるが端部を円形に構築するものとしている。

(2)天端高の考え方
盛土天端高の設定にあたって、津波避難施設の天端高は、津波に先行する地震による沈下後においても、津波の最大水位以上となるように設定する必要がある。津波に先行する地震による地殻(基盤)変動量と、基盤から地表までの堆積層(盛土含む)の沈下に分けられ、更に基盤から地表までの堆積層(盛土含む)の沈下は、液状化に伴う残留変位量と、地震後の過剰間隙水圧消散による排水沈下量を考慮する必要がある。
沈下量のうち、①地殻変動量は津波シミュレーションによって、②残留変位量は地震応答解析によって、③排水沈下量は過剰間隙水圧の消散による沈下量で既往の知見を基に砂の堆積ひずみと最大せん断ひずみの関係から求める。

計画天端高>津波最大水位+①地殻変動量
+②残留変位量+③排水沈下量+余裕値α
ここで、余裕値αは 2m 以上を確保して 0.5m ラウンドに切り上げる。

(3)津波に対する盛土高台の検討
陸域に遡上した津波による被災形態を想定し、盛土本体に生ずる影響について各種検討事項を整理した。

1 )盛土法面が流水のせん断力により侵食され、これが進行するとすべり破壊が懸念される。津波浸水シミュレーションを用いて、津波の流況から法面の侵食深さを算出した結果として、法面の植生を管理することで、津波の流水による損傷を軽微なものに留めることとし、芝張りにより法面を保護することとした。

2)盛土により生ずる隅角部では流水が集中することから、そこから洗掘が進み、法面のすべり破壊が懸念される。本施設においては、対象施設を円形にすることで流水の集中を防止しているので、周辺地盤の洗掘は生じないものと判断した。

3)浸透に対するすべり破壊は、せん断強度が小さく浸透しやすい材料で盛土を行った場合には、津波による浸透を考慮した条件下で、円弧すべりによる安定解析を行い、安全率を確保する必要がある。本施設では、盛土材の土質定数としてφ 30°のせん断抵抗角を有する締め固められた材料を使用することで、安全な構造とすることができるものとした。また、地震に対する安全性確保の観点から、常時、レベル 1 地震動作用時の円弧すべり検討、液状化検討、地震応答解析についても検討を行っている。

4)盛土上端部では津波の越流により侵食が生ずることが考えられる。本施設においては、津波高さが天端高を超えることを想定していないので検討不要とした。

(4)避難対象者の推計
東地区の避難対象者は、東地区に事業所を置く企業や事務所等の労働者と来訪者、分譲地での企業立地を前提とした将来の避難者も含めて推計し、一ツ葉地区の避難対象者は、みやざき臨海公園の利用実態に基づき利用者数を推計している。避難必要面積は、避難者数に対し 1㎡/人を確保した。

(5)整備供用
整備工事は平成 27 年度に着手し、東地区の 2 箇所は平成 28 年度までに完成、一ツ葉地区は令和 2 年に完成予定である。

4.ICT工事の活用
建設業は社会資本の整備の担い手であると同時に、社会の安全・安心の確保を担う、国土保全を行う上で必要不可欠な「地域の守り手」であるが、人口減少や高齢化が進む中にあっても、これらの役割を果たすため、建設業の賃金水準の向上や休日の拡大等による働き方改革とともに、生産性向上が求められている。その思想に基づき、県においては、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指すことを目的としたICT 活用工事の試行を行っている。今回の避難高台の盛土と法面整形においても、ICT 活用工事(発注者指定型)を採用している。
ICT 活用工事における現場の声として、”3 次元測量データを取得すること及びICT 建機を用いることで、細部まで高い精度の施工が出来た。また、安全性においても、重機接触災害のリスクの削減や転落防止機能のついた重機使用など、従来施工に比べ作業日数や作業人員の削減効果が現れている。” とのアンケート結果が出ている。

5.今後の課題
避難高台の完成後は、東地区の事業所を対象に定期的に避難訓練を実施している。訓練は、県の呼びかけで実施する「県民一斉防災訓練『みやざきシェイクアウト』」と連動し、一斉に安全確保行動を実施した後、大津波警報が発令された想定で実際に高台へ避難するものである。避難ルートの確認や避難後に避難者が利用する災害時トイレの設営も実践している。
今後は、東地区に続き、一ツ葉地区の避難高台が完成予定であり、避難対象者がみやざき臨海公園の利用者で、東地区と比べますます土地勘のない方であることから、公園利用者に対する円滑な避難誘導が求められてくる。そのためには、わかりやすい避難誘導看板の設置等に取り組むとともに定期的な避難訓練の実施などにより、「常在危機」の意識を持ち続けることが大事だと肝に銘じている。

6.おわりに
宮崎港東地区では、津波避難施設の整備により安全が確保され、東地区の分譲地において売却が進み、新たに企業が進出するなどその整備効果は目覚ましいものである。また、2022 年には宮崎と神戸を結ぶカーフェリーが大型化へのリプレイス予定であり、宮崎の海の玄関口として更に躍進している。宮崎県として、これからも安心安全な港づくりを進めていく所存である。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧