一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
“宝の海·有明海”再生への取り組み
~NPO法人「有明海再生機構」~

佐賀県 有明海再生課 課長
小 柳 忠 彦

1.はじめに
異変が続く有明海の再生に向けて,佐賀県では,「有明海再生特別措置法」に基づき「有明海再生に関する佐賀県計画」を平成15年3月に策定するとともに山~川~海に至るあらゆる関係者(住民事業者CSO,行政)が,それぞれの立場で取り組むべき内容を掲げた「有明海再生のための県民行動計画」を平成16年度に策定し,県民協働での取り組みを盛り上げているところです。
なかでも,有明海に関する調査研究体制を充実するため,専門性,機動性,効率性が期待できる組織としてNPO法人「有明海再生機構」の設置を提案し,有明海再生への志を同じくする多くの研究者等の参画を得て平成17年6月2日に正式に発足し,その活動がスタートしました。
有明海の再生を願う研究者の「知」を結集し,十年以内に再生への道筋をつける思いで動き出したNPO法人「有明海再生機構」について紹介します。

2.有明海の現状
有明海は,美しい景観と特有な生態系に加えて貴重な漁業資源の宝庫として人々の生活を支え,人々に安らぎを与えてきました。
しかしながら,有数の漁業生産性を誇ってきた閉鎖性内湾である有明海が,近年,赤潮の多発,ノリ生産の不安定化,タイラギやアサリなど二枚貝類の著しい減少など,海域環境の変化と生物・生態系の危機に直面しています。(図ー1)
このような事態に対処して,平成14年9月には「有明海及び八代海を再生するための特別措置法」が制定され,国及び関係県が有明海における環境の保全・改善と水産資源の回復の両面にわたり取り組んでいます。
なお,有明海の環境問題や水産資源の回復について,これまでも大学,国・県等において,個々の環境変化の現象解明や応急措置型の再生対策が実施されて,数多くの成果をあげてきましたが,今もって有明海問題の解決へ向けて,持続可能な道筋が明らかにされたとは言えません。

3.再生機構が目指すもの
NPO法人「有明海再生機構」においては,個々の現象を個別に解明し,知見を積み上げるという従来の手法から転換し,生物生息に必要な海域・底質環境の再生目標を科学的知見に基づいて設定のうえ,俯瞰的手法のもとに,国内外における研究成果をはじめとする環境情報を収集し,海域に止まらず,流域,干潟域までを総体として捉え改善すべき環境要素・条件を明らかにし,それに必要な再生技術を提案・検証していくこととしています。
このため機構においては,干潟域の物質循環など一部の未解明事象についての研究を行うもののもっぱら
・再生目標の設定と俯瞰的方法による問題解決型のアプローチ
・有明海に関係する機関や研究者のリエゾン機能
・有明海に関するデータベースと生物生息モデル等をサブモデルとする有明海モデルの構築
・海外との情報交換の推進および有明海から世界への情報発信
・再生技術の提案と検証
などの分野で多彩な研究者の英知を結集し,10年間の期限を設けて活動を行っていくものです。

4.再生機構の組織と体制
NPO法人「有明海再生機構」は大学等の研究者からなる正会員と法人や個人からなる支援会員で構成されています。名誉顧問に,元世界水会議議長のウィリアム・コスグローブ博土が,理事長には九州大学大学院の楠田教授が就任されています。
これまでに有明海沿岸域の大学の研究者20名が正会員として,また,流城内外に立地する企業,建設業,コンサルタント等の法人約70団体,個人の方,約30名が支援会員として参加いただいているところです。
再生機構の研究体制としては,陸域と干潟,生産(海域)のそれぞれの専門家で分科会を設け,その分科会毎に調査研究を進め,理事長,副理事長からなる研究企画委員会で方針を決定して進める体制となっています。(図ー2,3)

5.主な役割
NPO法人「有明海再生機構」は,大学や機関の垣根を越えて有明海再生への志を同じくする様々な専門領域の研究者で構成されています。この人的ネットワークを活かして,有明海再生への取り組みを体系化し,効率的にコーディネートします。

1)調査研究のコーディネート
これまで研究者や行政機関で個々に実施されてきた調査研究を横断的に把握し,体系化して有明海に関わる研究者や機関が有明海に関する情報を共有化し,それぞれが効率的に調査研究を進められるよう支援していきます。

2)再生への取り組みのコーディネート
これまで,有明海のような閉鎖性内湾における環境に関する調査研究では,個々の現象を解明し,積み上げて全体の現象を解明する,いわば現象解明に始まる積み上げ型で行われてきました。しかし,再生機構においては,はじめに再生ビジョンに基づく具体的な再生目標像を生物指標等により立てます。そして,これを支える環境と現状の環境の乖離解消についてシミュレーションモデルにより分析し,行政,NPO等へその乖離解消の施策を提案していく,いわば俯瞰型の取り組みをコーディネートしていきます。

3)研究者や民間等における再生に向けた取り組みへの支援
・有明海データベースによる情報提供
・公募による応用技術シーズ等への資金支援
・技術コンサルティング,技術認証評価
・講習会,研究会,国際会議等の開催

6.おわりに
有明海再生を目指してNPO法人としてスタートしたばかりの「有明海再生機構」ですが.これまでの主な活動実績は以下のとおりです。

■設立記念講演会
~有明海再生ビジョンについて~
(平成17年6月12日 参加者約250名)

■国際シンポジウム
~世界の閉鎮性水域の現状と再生への取組~
(平成17年9月19日 参加者約300名)

■底質環境の変遷調査
干潟・底質のサンプル採取

■調査研究促進事業
有明海再生に関する8件の調査研究等への助成

■分科会や研究企画委員会
・漁獲量の経年変化や貝類の生活史,類似外国海域との対比などを踏まえた有明海の“再生目標”や“環境目標”の検討。
・これまでの国や大学等で行われてきた調査研究等の整理を踏まえ,再生に向けて調査研究が足らない分野等の把握,分野毎の課題の整理,その課題への対応等の検討

今後とも,佐賀県としては,有明海再生への道筋を明らかにするために国や関係県との連携を図るとともに,NPO法人「有明海再生機構」を全面的に支援し,一日も早く有明海を,豊穣で人々に安らぎを与えることのできる,生物が豊かな海として再生するよう取り組んでいきます。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧