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九州技報 第40号 論文

国営公園の維持管理効率化のためのGISの導入

九州地方整備局 戸田克稔
1 はじめに
国土交通省では,公園・緑化分野で取り組むべき技術研究開発項目を明らかにし,官・民・学が連携,協力して計画的,重点的に研究開発に取り組むために,公園・緑化技術五箇年計画を策定し,これに基づき研究開発を推進しています。
平成6年度に最初の公園・緑化技術五箇年計画がスタートして以来,これまでに三次にわたって計画が策定・推進されてきており,植物廃材のリサイクル技術,屋上緑化の基盤形成技術,環境教育プログラムの策定技術,市民参加による公園の整備・管理手法など,数多くの成果がまとめられ,これらの成果は公園緑地の整備・管理の現場や政策の立案過程などに活用されています。
本稿では,第三次公園・緑化技術五箇年計画(平成16~20年度)に掲げられた技術研究開発項目「No.14 情報を用いた効率的な事業推進技術」の中の五箇年間の目標「①GIS等による都市における環境情報等の蓄積と公開手法の確立」を受けて平成16年度から着手した,国営海の中道海浜公園の維持管理効率化のためのGISの導入の状況についてご紹介します。
表-1 第三次公園・緑化技術五箇年計画(平成16~20年度)の技術研究開発項目

2 国営海の中道海浜公園の概要
国営海の中道海浜公園は,北部九州地域における広域レクリエーション需要に応えるために,玄界灘と博多湾を隔てて志賀島に延びる半島,通称「海の中道」において整備が進められている都市公園です。
この地は,第二次世界大戦後,長らく米軍基地として利用されていましたが,昭和47年に米国からこの土地が返還されることとなり,「広大で良好なこの自然環境を公園として利用したい」との地元福岡県及び福岡市からの強い要望もあって,昭和51年度から,当時の建設省が,国営公園として整備を進めてきています。
当公園の区域は,東西約6km,全体面積は約539.4haと非常に大規模であり,昭和56年にその一部約59haが開園。以来,整備が完了した区域から順次開園してきており,現在ではその半分弱にあたる約249haが開園し,毎年170万~180万人前後のお客様にご利用頂いています。
【コラム】国営公国とは・・・
国営公園とは,国が設置する都市公園の総称です。
都市公園法(昭和31年4月20日法律第79号)上,
イ号:ひとつの都府県を超えた広域的な利用を目的とした国営公園
口号:国の記念事業や遺跡等の文化的資産の保存・活用を目的とした国営公園
の2種類があり,現在,全国で17箇所,うち2箇所が九州にあります。国営海の中道海浜公園は広域的なレクリエーション需要に対応したイ号の国営公園で,国営吉野ヶ里歴史公園は吉野ヶ里遺跡の保存と括用を目的としたロ号の国営公園です。

 

図-1 国営海の中道海浜公園(開園区域)

3 GIS導入の背景
公園管理者が都市公園を効率的かつ適正に管理するためには,当該公園の区域がどの範囲まで及ぶのか,また地形はどうなっており,どのような公園施設や占用物件がどのような状態で設けられているのかを常に把握しておくことが必要です。このため,都市公園法(昭和31年4月20日法律第79号)では,公園管理者に都市公園台帳(調書及び図面)の作成及び保管を義務付けるとともに,記載事項に変更があったときは速やかに訂正することを義務付けています。
また,国営公園については,国有財産としての増減を日々明らかにしておくために,国有財産法(昭和23年6月30日法律第73号)に基づき,国有財産台帳(調書及び図面)を備えることが義務付けられているとともに,国有財産に変動があった場合には直ちにこれを台帳に記載し,又は記録することが義務付けられています。
当公園では,従来から,両台帳を作成してきましたが,都市公園台帳については,主要な施設に関する調書と大まかな配置を示した図面等で構成されており,公園内の施設一つひとつについて,その位置や属性データが詳細に記載されているわけではありません。また,国有財産台帳についても,種目毎の集計結果のみを記載し,集計元や施設の位置は明記されていないというのが実情です。このため,両台帳を当公園の維持管理に十分に活用できていないというのが実態でした。
そこで,当公園では,公園内のどこに,何が,どのように,どれだけ存在するかをリアルタイムで把握できるようにするとともに,両台帳の作成・更新を自動化するために,施設の一覧(属性情報データ)と世界測地系に基づく図面(空間情報データ)を一元管理するGISを導入することとし,平成16年度からその検討に着手しました。
【コラム】都市公園台帳
◆都市公園法(昭和31年4月20日法律策79号)
(都市公園台帳)
第十七条 公園管理者は、その管理する都市公園の台帳(以下この条において「都市公園台帳」という。)を作成し,これを保管しなければならない。
2 都市公園台帳の記載事項その他その作成及び保管に関し必要な事項は,国土交通省令で定める。
3 公園管理者は,都市公園台帳の閲覧を求められたときは,これを拒むことができない。
 
◆都市公園法施行規則(昭和31年10月9日建設省令第30号)
(都市公園台帳〉
第十条 都市公園台帳は,調書及び図面をもって組成する。
2 調書には,都市公園につき,少なくとも次に掲げる事項を記載するものとする。
            (中 略)
六 公園施設として設けられる建築物(仮設公園施設を除く。次号において同じ。)及びその他の主要な公園施設についての次に掲げる事項
イ 種類及び名称
口 工作物であるものについては,その構造
ハ 建築物であるものについては,その建築面積
二 運動施設については,その敷地面積
            (以下略)
3 図面は,縮尺千二百分の一以上の平面図(法第二十条の規定により都市公園の区域を立体的区域とする場合は,平面図,縦断面図及び横断面図。第十九条第五項において同じ。)とし,付近の地形,方位及び縮尺を表示し,都市公園につき,少なくとも次に掲げる事項を記載するものとする。
一 都市公園の区域の境界線
二 公園保全立体区域の境界
三 行政区画名,大字名,字名及びその境界線
四 地形
五 敷地の土地所有者別の区分
六 主要な公園施設
            (以下略)
4 調書及び図面の記載事項に変更があったときは,公園管理者は,速やかにこれを訂正しなければならない。

4 GIS導入の流れ
平成16年度は,大きく分けて「GIS導入予備調査」と当該予備調査の結果を踏まえた「GISプラットホーム設計」の2点について実施しています。
第一ステップの「GIS導入予備調査」では,事務所内などに存在する膨大な資料を調査・収集するとともにGISに必要と想定されるデータの作成方法を分析・検討し,その検討結果をもとに,費用対効果の面等も勘案しながら,GISを導入することによって具体的に何をどのレベルまで行えるようにするのか基本方針を作成するとともに,併せてGIS導入の年次計画を作成しています。
第ニステップの「GISプラットホーム設計」では,当該予備調査の結果をもとに,エンジンとなる市販GISソフト「Mapinfo professional」並びに「Map Basic」により開発したアドオンソフトウェアを用いて,必要なデータをGISに投入できるようにするためのプラットホームの設計を行っています。
また,平成17年度からは,当該予備調査で検討したGIS導入の年次計画に基づき,各種データの作成・投入を順次開始しているところです。
5 GIS導入の基本方針
既存資料の質や量,並びに建設CALS/ECへの対応や費用対効果の面を勘案しつつ検討した結果,「都市公園台帳」及び「国有財産台帳」の作成・更新の自動化に加えて,全ての公園施設について管理用図面等を随時参照できる「管理台帳」の作成・更新の自動化等を主目的として,GISシステムを導入することを基本方針としました。
また,第三次公園・緑化技術五箇年計画の計画期間や予算面等を考慮して検討した結果,「都市公園台帳」の作成・更新の自動化については第三次公園・緑化技術五箇年計画の最終年度である平成20年度未までに完成させることを目標とし,「国有財産台帳」及び「管理台帳」の作成・更新の自動化については平成21年度末までに完成させることを目標としています。

図-2 GIS導入の検討フロー

6 GIS導入の年次計画
「GIS導入の年次計画」については,上記の「5 GIS導入の基本方針」並びに予算面などを踏まえて,表-2のとおり作成しています。
当該年次計画に基づき,平成16年度は,上記の「4 GIS導入の検討の流れ」に掲げた内容を実施し,平成17年度は,基盤データとして,デジタルオルソ画像,近赤外デジタルオルソ画像,等高線,敷地境界位置,敷地面積などのデータ作成を行ったほか,敷地内の用地データ,施設実体データの一部を作成するとともに,都市公園台帳に活用する法規制データの作成を行っています。
また,平成18年度以降については,平成20年度の「都市公園台帳」の作成・更新の自動化,平成21年度の「国有財産台帳」及び「管理台帳」の作成・更新の自動化を目指し,表-2のスケジュールで計画的にデータ投入を行っていくこととしています。

表-2 GIS導入の年次計画

 
7 これまでの成果
GIS導入のこれまでの成果として,平成17年度に作成・投入したデータの例を,以下,簡単にご紹介します。
7-1 基盤データ
基盤データとしては,上記の「6 GIS導入の年次計画」のとおり,デジタルオルソ画像,近赤外デジタルオルソ画像,等高線,敷地境界位置,敷地面積のデータ作成を行っていますが,ここでは,例として,デジタルオルソ画像,近赤外デジタルオルソ画像,等高線についてご紹介します。
① デジタルオルソ画像,近赤外デジタルオルソ画像
通常の空中写真では中心から離れるほど建物が外側に倒れるなどの歪みが生じますが,それを正射投影で補正したものがデジタルオルソ画像です。当該画像はGISの背景画像として,また当公園の経年変化等を把握するために活用するものです。また,近赤外デジタルオルソ画像は,植生分布や植物の活性度等の把握に活用する予定です。
両画像とも,平成17年の福岡県西方沖地震直後の平成17年4月に撮影されたライブラリー航空写真(1:8,000)をもとにデジタル写真測量システムを使用して地上解像度20cm/ピクセルで作成しており,また,作成したデータは国土基本図500(縦300mX横400m)の図郭サイズにて格納しています。
② 等高線
等高線は,デジタル写真測量システムを用いて別途作成した標高値データから自動発生(主曲線は1m間隔,計曲線は5m間隔で発生)するようにしており,また,等高線の数値は,別途手入力しています。
なお,標高値データ(グランドデータ)については,平成13年1月に行われた航空レーザー計測のライブラリーデータをフィルタリング処理するとともに,樹木やその他の地物を除去した上で2m×2mメッシュで作成しており,また,作成したデータは国土基本図2,500(縦1,500m×横2,000m)の図郭サイズにて格納しています。

図-3 デジタルオルソ画像

図-4 デジタルオルソ画像上に等高線を表示

7-2 用地データ
用地データとしては,当初,基準点,字界,地番に関するデータを作成・投入する予定でしたが,既存資料の調査を進める中で,基準点及び用地境界杭の座標値同士の一部に不整合な部分のあることが判明したため,現時点でそろう資料及びデータをもとに暫定的にデータの作成・投入を行っています。
7-3 施設実体データ
施設実体データとは,開園区域内に設置されている施設等に関するデータのことです。
データの作成・投入は,表-4の分類に基づいて行っており,平成17年度は,開園区域のうち福岡県西方沖地震(平成17年3月発生)の災害復旧工事範囲を除いた区域において,「1 建物」及び「2 工作物」等のデータ(国有財産属性を除く)の作成・投入を実施しています。
7-4 法規制データ
法規制データとしては,現行の都市公園台帳に掲載している当公園の都市計画決定区域・都市計画事業承認区域・都市公園を設置すべき区域・供用(既開園)区域,都市計画法に基づく用途地域,保安林,鳥獣保護区,国定公園,海岸保全区域,埋蔵文化財の包蔵地の各データを作成・投入しています。
表-4 施設実体データの分類

図-5 施設実体データの表示例
【建築施設組立設置工】
(属性データは白抜きの建物分)
 
図-6 施設実体データの表示例
【雨水排水設備工】
(属性データは白抜きの管渠分)
 

図-7 法規制データの表示例
【国定公国の普通地域(赤色ハッチ部分)】
図-8 法規制データの表示例
【埋蔵文化財の包蔵地】

8 今後の課題
GISを当公園の維持管理に有効活用していくためには,「GIS導入の年次計画」に基づいて計画的にデータの作成・投入を行い,「GIS導入の基本方針」に掲げた内容を着実に実現していくとともに,併せて
① 日常業務の中で利用可能な部分から実際に利用して使い勝手の悪い部分を逐次改善していくこと
② 施設の新設や撤去・更新の際には必ずデータの更新を行い,GISのデータを陳腐化させないこと
③ 平成17年度に作成・投入したデータのうち,精度が不十分なものについては,今後,必要な調査を行ったうえで,再度データを作成・投入していくこと
が非常に重要であると考えています。
また,GISをより使い勝手のよいものにしていく上では,データの作成・投入作業など簡素化できる作業を極力簡素化していくことも重要なポイントと考えています。今後,施工業者から電子成果品を納品してもらう際の仕様や作成方法等を定めた電子納品要領を策定し,工事の電子成果品をGISに自動的に投入できる仕組みを構築していくことも重要な課題のひとつとして考えています。

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