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国体関連道路の整備について

熊本県土木部道路建設課
 課長補佐
藤 原 康 幸

熊本県土木部道路建設課
 参事
伊 東  貢

1 はじめに
熊本県では,昨年の9月11日~14日と10月23日~28日の10日間にわたり,第54回国民体育大会「くまもと未来国体」が開催され,県内の59市町村で,39の正式・公開競技とデモンストレーションの7行事に気迫あふれる熱戦が繰り広げられ,数々の感動のドラマを残し閉幕した。
この大会には,夏季大会に延約20万人,秋季大会に延約100万人と全国から多くの選手,監督をはじめ,大会関係者や一般観覧者が参加し,大変盛り上がった大会となった。
この国体開催のため,国・県・市町村各々が,県内各地の競技施設の整備とともに,アクセス道路等の関連施設の整備に取り組んだ。
その中の一つとして,将来の交通需要の調査結果等を踏まえた熊本都市圏幹線道路網整備計画の中から,夏季大会と秋季大会の主会場へのアクセス道路ともなる,国体関連道路の東西線,南北線,主要地方道熊本港線,都市計画道路野口清水線の4路線について,熊本県,熊本市,菊陽町が役割分担しながら早急に整備を行った。
ここでは,この4路線と表-1に示す一級河川白川に架かる橋梁の中からみらい大橋について概要を報告する。

2 道路の概要
秋季大会の主会場,熊本県民総合運動公園へのアクセス道路の概要は以下のとおりである。

(1)東西線(7路線L=12.3km)
① 路線名,延長,事業主体
(都)熊本駅新外線  (L=1.2km)熊本市
(都)保田窪菊陽線  (L=1.2km)熊本市
(県)熊本空港線   (L=3.8km)熊本県
(市)長嶺町小山2号線(L=1.2km)熊本市
(町)曲手小山線   (L=2.8km)菊陽町
(県)曲手原水線   (L=1.5km)熊本県
(都)菊陽空港線   (L=0.6km)菊陽町
② 道路規格
 第4種第1級 設計速度:60km/h
 幅員:4車線(22m,25m,35m)

(2)南北線(2路線L=6.7km)
① 路線名,延長,事業主体
(県)益城菊陽線   (L=4.4km)熊本県
(市)鹿帰瀬戸島線  (L=2.3km)熊本市
② 道路規格
 第3種第2級,第3級 設計速度:50,60km/h
 幅員:2車線(12m,14m,15m)

夏季大会の主会場,熊本市総合屋内プール(アクアドーム)へのアクセス道路の概要は以下のとおりである。

(3)主要地方道 熊本港線
① 延長,事業主体
  L=5.1km(L=4.0km)熊本県:道路,街路
      (L=1.1km)熊本市:区画整理
② 道路規格
 第4種第1級 設計速度:60km/h

(4)都市計画道路 野口清水線
① 延長,事業主体
 L=1.2km熊本県:街路
② 道路規格
 第4種第1級 設計速度:60km/h

3 交通量の変化と整備効果
(1)東部地区の道路について
① 国体関連道路の供用後の交通量は,東西線の④地点(菊陽町曲手)で約9,000台/12h,⑤地点(熊本市小山町)で約11,000台/12h,⑥地点(熊本市保田窪)で約25,000台/12h,南北線の⑩地点(熊本市鹿帰瀬町)で約9,000台/12hである。
② 主要な幹線道路の内,国道57号東バイパスの①地点(熊本市弓削)と②地点(熊本市下南部町)で約4,000台/12hの交通量の減少が見られる。
 一方,熊本益城大津線については,益城熊本空港インター供用による増加と,国体関連道路供用による減少が相殺され,⑨地点で約31,000台/12hと大きな変化がない。
③ 東西線,南北線は,都市圏東部の交通分散化を図り,周辺幹線道路の交通混雑の緩和に大きく貢献するとともに,市街化が進む東部地区の新たな動脈として期待される。

(2)西部地区の道路について
① 新たに供用した道路の交通量は,熊本港線の⑬地点(熊本市近見町)で約21,000台/12h,⑭地点(熊本市砂原)で約12,000台/12h,野口清水線の⑯地点(熊本市城山)で約12,000台/12hである。
② 周辺道路の交通量は,熊本高森線の⑮地点(熊本市城山)で約6,000台/12h,並建熊本線の⑰地点(熊本市薄場町)で約4,000台/12h,畠口川尻停車場線の⑱地点(熊本市護藤町)で約1,000台/12h減少している。
③ 国道57号東バイパスと熊本港を結ぶ熊本港線,白川を横断する野口清水線の開通により,熊本市西部地区に縦横の幹線道路が構築され,熊本港の活用や西部地域の振興に大きく貢献するものと期待される。
 また,これまでJR鹿児島本線で分断され,小さな踏切を通っていた交通が,JR鹿児島本線の高架化と熊本港線の整備により安全性も大幅に向上した。

4 みらい大橋整備概要
みらい大橋は,国道57号(菊陽バイパス)から一級河川白川を渡り秋季大会主会場の県民総合運動公園へ至る,南北線最終工区内のPC長大橋である。

(1)計画
本橋は,平坦な農地(熊本市)から台地(菊陽町)への高低差(約25m)のある区間に位置し,平面線形は緩やかな曲線である。縦断線形は,上空を横断する高圧電線の位置や白川の改修計画等の条件を考慮して,起点側は路面高を極力低く抑えるため緩勾配とし,終点側をやや急勾配とした。
橋種決定や支間割りは,白川の改修計画や終点側の県道瀬田竜田線へのアクセスに必要な取付橋の交差位置(ランプ部)も考慮して検討を行った。
また,架橋地点の白川は未改修で洪水の氾濫が予想されるため,左右岸をひえつ部として計画した。上部工形式は,河川部をTラーメン箱桁,ひえつ部を連続中空床版,高架部を連続箱桁とした。
以下に橋梁概要および計画諸元を示す。
 ① 架橋地   熊本県熊本市鹿帰瀬町~菊池郡菊陽町大字津久礼地内
 ② 渡河川名  一級河川白川
 ③ 事業期間  平成8年3月~平成11年3月
 ④ 橋梁事業費 約43億円
 ⑤ 道路規格  第3種第2級(設計速度60km/h)
 ⑥ 設計条件
  ・橋長:660.0m
  ・桁長:98.26m+93.66m+106.36m+89.16m+91.86m+179.74m
  ・支間:(24.03+2@24.6+24.03)m+(24.03+2@24.6+19.43)m
    +2@52.58m+(19.73+2@23.0+22.43)m+(22.43+2@23.0+22.43)m
    +(49.22+85.0+44.22)m
  ・幅員:14.5m 2車線(2@3.25)・両側歩道(2@3.5)
  ・橋梁形式:A~P8:連続PC中空床版(2連)
        P8~P10:PC・Tラーメン箱桁
        P10~P18:連続PC中空床版(2連)
        P18~A2:連続PC箱桁
・設計荷重:B活荷重
・平面線形:R=300m~A=125m~R=∞~A=175m~R=500m~A=175m
・縦断勾配:3.0%~0.5%~5.0%
・横断勾配:2.0%~4.0%
・斜角:起点θ=90°,終点θ=左60°
・下部構造:場所打杭基礎 逆T式橋台(A1
      直接基礎 壁式橋脚(P4~8,P10~19
      場所打杭基礎 壁式橋脚(P1~3,P9,20
      深礎打杭基礎 逆T式橋台(A2

(2)上部工の施工
左右岸ひえつ部およびランプ部については,施工上大きな支障物件等もないため,PC連続中空床版を標準的な固定式支保工で架設した。
河川部および高架部については,それぞれPCTラーメン箱桁および連続箱桁を,現地の施工条件に適した移動作業車(図-3,写真-4参照)による張り出し架設を行った。河川部のTラーメン箱桁(等径間)に対し,高架部については既設県道を跨ぐことから不等径間とし,橋脚位置の地質条件も大きく異なることから,上下部工を剛結合ではなく支承構造の連続箱桁とした。施工手順を図-4に示す。

(3)景観設計
みらい大橋は,地域の大いなる発展を期待して,「地域の発展と未来のシンボル」をテーマに,景観に配慮した設計を行った。
主な工夫点は,次のとおりである。
① ひえつ部と河川部および高架部の標準形式が上下部工とも異なるため,架け違え部における中空床版と箱桁の桁高および断面形状を合わせ,上下部工を一体の形状イメージとして連続性を強調した(図-5参照)。
② 橋脚(コンクリート構造部)の林立による冷たさ,硬さを解消するため,曲線を用いて暖かさ,柔らかさを演出した。
③ 橋桁高が比較的低く威圧感があるため,沓隠しを設けて橋脚を見せるようにした。

(4)みらい大橋公園
架橋地付近の白川右岸は「梅の木古墳」として知られ,今回の工事に伴う発掘調査により約2千年前の住居や墓,土器等が発見された。この遺跡を含む約1.8haで,良好な水辺環境の創出と橋下空間の有効利用を図るため公園整備が進められている。本橋の景観に配慮した設計により,この地域はもちろん,憩いの場である公園との調和が図られ,橋名にちなんで「みらい大橋公園」と命名されている。

4 おわりに
熊本都市圏では,他都市と比べて自動車分担率が高いことや環状道路等の整備が遅れていることなどから,朝夕には交通が混雑し,沿道環境の悪化や経済効果の低下等を招いている。
国体関連道路をはじめとする道路整備は,熊本都市圏の交通混雑の緩和に大きく貢献しているが,道路整備には莫大な予算と長い年月を要することから,増大する交通需要に追い付かないのが実状である。
熊本都市圏が更に飛躍していくためには,交通の円滑化が緊急の課題である。
そのため,体系的な道路ネットワークの整備と共に交通需要マネージメント施設等を積極的に推進していきたい。

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