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「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の
九州における取り組み状況について

国土交通省 九州地方整備局
企画部 技術管理課長
久 保 朝 雄

1.はじめに
平成17年3月30日参議院本会議において,「公共工事の品質確保の促進に関する法律(以下「品確法」という)」が成立し,4月1日より施行されました。さらに,平成17年8月26日には法第8条第1項の規定に基づく「公共工事の品質確保に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という)が閣議決定されました。
本稿では,品確法制定の背景やその概要,この法律を推進するための九州における取り組み状況について述べたいと思います。

2.品確法制定の背景
公共工事は,国民生活及び経済活動の基盤となる社会資本を整備するものとして社会経済上重要な意義を有しており,その品質は,現在及び将来の国民のために確保されなければなりません。
しかしながら,公共工事に関しては,厳しい財政事情の下,公共投資が減少している中で,受注をめぐる価格競争が激化し,著しい低価格による入札が急増するとともに,工事中の事故や手抜き工事の発生,下請業者や労働者へのしわ寄せ等による公共工事の品質低下に関する懸念が顕著となっています。また,競争参加者の技術的能力の審査や工事の監督・検査等を適切に実施することができない脆弱な体制の発注者が一部に存在することも,公共工事の品質低下に関する懸念の一つとなっています。
品確法ではこのような背景を踏まえ,公共工事の品質確保に関し,基本理念を定め,国等の責務を明らかにするとともに,公共工事の品質確保に関する基本的な事項を定めることにより,公共工事の品質確保を促進することを目的としています。

3.品確法の概要
品確法では,次の3つのことを公共工事の品質確保の促進のためのポイントと位置づけ,そのための次に示す施策が規定されています。
1)公共工事の品質確保に関する基本理念及び発注者の責務を明確化
公共工事の品質は,価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより確保されなければならない。
また,公共事業の品質確保に当たっては,①受注者として適格性を有しない建設業者の排除など入札・契約の適正化,②民間事業者の能力の活用,③発注者と受注者の対等な立場での合意による公正な契約の締結,その誠実な履行,④公共工事に関する調査・設計の品質確保に配慮が必要としています。(第3条)
発注者の責務として,発注関係事務(仕様書・設計書の作成,予定価格の作成,入札・契約方法の選択,契約の相手方の決定,工事の監督,工事中・完成後の確認・評価等)を実施しなければならないとしています。(第6条)

2)『価格競争』から『価格と品質が総合的に優れた調達』への転換
この法律の最も特徴的なところで,品質を確保するための発注手続きとして発注者は,競争参加者の技術的能力(工事の経験,施工状況の評価,配置予定技術者の経験等)を審査しなければなりません。(第11条)
発注者は,競争参加者から技術提案を求めるよう努力し(工事の内容からみて必要がない場合は除外),中立・公正な審査・評価が行われるよう必要な措置を講じて,これを適切に審査・評価。提案内容によっては公共工事を確実に実施できないと認めるときは,その提案を不採用とすることができます。この際,評価方法等に関する情報を公表しなければなりません。(第12条)
発注者は,技術提案についての改善を求め,または改善を提案する機会を与えることができます。但し,その過程の概要は公表しなければなりません。(第13条)
発注者は,高度な技術等を含む技術提案を求めたときは,技術提案の審査後に予定価格を定めることができます。この場合,学識経験者の意見を聴くものとします。(第14条)

3)実施にあたり発注者をサポートする仕組みの明確化
発注者は,自ら発注関係事務を適切に実施することが困難であるときは,他の地方公共団体その他の者の能力を活用するよう努力しなければなりません。その際,知識・経験,法令順守・秘密保持等の条件を備えた者を選定する必要があります。
国・都道府県は,発注関係事務を適切に実施することができる者の育成等に努力しなければなりません。(第15条)
また,政府は施策を推進するための「基本方針」を定めなければならないと規定されています。(第8条)
さらに,各発注者は,「基本方針」に基づき必要な措置を講ずるよう規定されています。(第9条)

4.基本方針の骨子
基本方針は,政府が品確法第8条第1項の規定に基づき,公共工事の発注者である国,特殊法人等及び地方公共団体が公共工事の品質確保の促進を図るため取り組むべき基本的な方針として定めたものです。(平成17年8月26日閣議決定)
基本方針では,公共工事の品質確保を図るため,発注者が主体的に責任を果たすことにより,経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮して価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされること(総合評価方式の導入)が重要と位置づけ,発注者が実施すべき具体的施策やその実施方法などが明記されています。
以下にその骨子を紹介します。
1)発注関係事務の適切な実施
2)技術的能力の審査の実施に関する事項
 ①有資格業者名簿作成に際しての資格審査
 ②個別工事に関しての技術審査
3)技術提案の審査・評価の実施に関する事項
 ①技術提案の求め方
 ②技術提案の適切な審査・評価
 ③技術提案の改善
 ④高度な技術提案等を含む技術提案を求めた場合の予定価格
4)中立かつ公正な審査・評価の確保に関する事項
5)工事の監督・検査及び施工状況の確認・評価に関する事項
6)発注関係事務の環境整備に関する事項
7)調査及び設計の品質確保に関する事項
8)発注関係事務を適切に実施することができる者の活用
 ①国・都道府県による支援
 ②国・都道府県以外の者の活用
9)施策の進め方
なお,「施策の進め方」については,この施策を効率的かつ確実に実施するためには,各発注者の体制等にかんがみ,段階的かつ計画的に推進していくことが必要としています。
このため,政府は,基本的な施策の実施状況について調査を行い,その結果を公表することとしています。
また,発注者間の協力体制を強化するため,連携を図るよう明記されています。

5.総合評価方式の概要
これまで述べたように,品確法の適切な履行のため,総合評価方式の導入が重要なポイントといえます。
総合評価方式とは,落札者の決定において,価格のみでなく品質(性能)をあわせて評価する入札方式で,国士交通省では数年前より試行を行ってきました。
国土交通省では,今回の品確法の制定や基本方針の策定を踏まえ,特に小規模な工事等その内容に照らして総合評価方式を適用する必要がないと認められる工事を除き,すべての工事において総合評価方式を適用することを基本として,技術提案の審査・評価を行うこととしています。
そこで,総合評価方式の拡大と充実を図るため「簡易型」を新たに設け,「標準型」「高度技術提案型」の3つに分類し,工事の難易度(技術的な工夫の余地)や予定価格(工事規模)等に応じて選定することとしています。
なお,地方公共団体においては地方自治法施行令や同施行規則等により従来から総合評価方式の実施,落札者決定,落札者決定墓準を定めるときは,あらかじめ2人以上の学識経験者の意見を聴取することとなっています。
今回の基本方針では,中立かつ公正な審査・評価の確保を目的として,国においても学識経験者の意見を聴く場を設けることが明記されましたが,地方公共団体において学識経験者の意見聴取するにあたっての運用として,各発注者ごとに,又は各発注者が連携し,都道府県等の単位で学識経験者の意見を聴く場を設けるなど運用面での工夫も可能となっています。また,学識経験者には意見を聴く発注者とは別の公共工事の発注者の立場での実務経験を有している者等も含まれると明記されているところが特徴と言えます。
総合評価方式の概要について図ー4に紹介しますが,詳細については,「国土交通省直轄工事における品質確保促進ガイドライン(平成17年9月30日);国土交通省ホームページhttp://www.mlit.go.jp/tec/nyuusatu/keiyaku.html」をご覧下さい。

6.基本方針を踏まえた九州の取り組み
九州地方整備局,九州各県・政令市では,「公共工事の品質確保に関する九州連絡会議(構成;九州地方整備局,九州各県・政令市の技術管理主幹課長等をメンバー)」を平成17年2月2日に設置し,公共工事の品質確保のための情報交換を行ってきましたが,基本方針の策定を踏まえ,国・県等による市町村支援がより重要であるとの観点から,支援のための施策を具体化し,実践しているところです。そのいくつかの取り組みを紹介します。(11月末現在)

1)地方整備局と県・政令市による連絡調整会議の設置
◆「公共工事の品質確保に関する九州連絡協議会」設置(平成17年11月25日)
・基本方針を踏まえ,発注者間の協力体制の強化を目的
・構成;九州地方整備局長,九州各県・政令市土木(担当)部長等をメンバー
・各県毎に「各県部会」を設置することで各県準備中

2)公共工事の品質確保に関する自治体向け講習会,説明会の開催
◆整備局と九州各県,政令市が連携して実施
・平成17年10月~11月に九州全県で334市町村を対象に開催
※381市町村中の9割程度が参加(平成17年11月8日時点)
・その後もフォローアップ及び更なる周知のため随時開催中

3)国,県等で実施する研修への自治体職員の受け入れ
◆平成18年度より九州地方整備局研修に自治体職員を受け入れ予定
・品確法に関する2つのコースを新設予定
・九州各県,政令市より延べ40名程度を受け入れ予定(指導者を養成)

4)地方整備局での総合評価技術委員会の設置
◆九州地方整備局に合総評価技術委員会を設置(平成17年12月20日)
・総合評価の評価項目,評価基準などを議論

5)発注者支援組織の認定制度の創設(試行)
◆公共工事仕木)品質確保支援技術者認定制度(仮称)の創設
・発注関係事務(技術的の能力審査,技術提案の審査・評価,検査,監督,積算等)の支援業務等を適切かつ公正に実施できる機関及び支援業務毎に配置する管理技術者等を認定する制度
・「公共工事の品質確保に関する九州連絡協議会」が試行的に運用する任意制度

6)地方自治体向け工事成績評定要領(案)の試行
◆自治体向け工事成績評定要領(案)の配布・試行(平成17年9月)
・平成17 年11月1 5日現在123市町村より試行の希望(九州8 県)
・さらに希望を募っているところ
◆評定要領の周知のため説明会等を実施中
・今後 整備局や県の工事検査への市町村職員の臨場研修を実施予定 (12月~)

7)その他の取り組み
◆インターネットを活用した「公共工事品質確保の相談窓口」の開設(平成17年4月)
・管内の市町村の設計,積算,入札契約,監督,検査などの技術的な発注支援を行うため,九州地方整備局企画部に設置
Eメール:hinkaku@Qsr.mlit.go.jp
◆九州地方整備局ホームページに「公共工事の品質確保法」を開設(平成17年7月)
・品質確保法に関する情報発信
http://www.qsr.mlit.go.jp/hinkaku/index.html
◆「公共工事の品質確保の促進に関する法律Jの業界団体等向け説明会開催
・平成17年10月27日開催(12団体より165名参加)
→以後も,出前講座等により説明を実施中

7.おわりに
品確法を適切に履行し,公共工事の品質確保を促進するためには,基本方針の施策を確実に推進していくことが必要で,特に国・県等による市町村への支援が重要であると考えています。
九州地方整備局,九州各県・政令市は,市町村を含めた全ての発注者が、自ら主体的に公共工事の品質確保に適切に取り組むことができるよう,今後も協カ・連携を図りながら,公共工事の品質確保の促進に向けて施策を進めて参りたいと考えています。

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