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九州技報 第41号 整備局だより

九州地方整備局の「公共事業のコスト構造改革」の取組状況

九州地方整備局 江口秀典
1 はじめに
公共事業を巡る不祥事等をきっかけとして、国民の公共事業に対する不信感が高まったことにより、国土交通省は事業執行の適正化、効率化、透明性の向上を図り、国民への説明責任を果たすことを目指して様々な対策を講じてきた。この一環として、平成6年12月に、必要な社会資本整備を行ううえでますます高まっているコスト縮減の要請に対応すべく、これまで以上に徹底したコスト縮減に向けた取組を開始したものである。
公共事業のコスト縮減は、平成9年度から11年度の3年間の取組において、全省庁の連携や公共工事担当省庁等(国土交通省は、工事コストの低減で取組)における創意工夫の強化により、当初の数値目標値の10%をほぼ達成した。
しかし、依然として厳しい財政事情の下で引き続き社会資本整備を進めることを求められたことから、平成12年度からは工事のコスト低減だけでなく、工事の時間的コストの低減、施設の品質の向上によるライフサイクルコストの低減、工事における社会的コストの低減、工事の効率性向上による長期的コストの低減を含めた総合的なコスト縮減について、「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」を策定し、取り組んできたところである。
さらに平成15年度からは、新行動計画だけでは限界があることから、公共事業の全てのプロセスをコストの観点から見直す「コスト構造改革」に取り組むこととし、「事業のスピードアップ」「設計の最適化」「調達の最適化」を見直しのポイントとし、プログラムが策定されたものである。今回「公共事業のコスト構造改革」について、これまでの取組状況等について報告するものである。

公共事業コスト縮減の経緯
 
2 コスト構造改革プログラムの対象事業
平成15年3月に策定された「国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム」(以下「プログラム」という)は、公共事業の抜本的改革を目指すものであるため、プログラムには直ちに実施できる施策のみでなく、検討、試行、関係省庁との調整を行ったうえで実施に移行する施策を含めるものとした。
プログラムの対象は、基本的には国土交通省直轄事業、国土交通省所管の公団等が行う公共事業とし、以下の点についても取り組むこととした。
① 公団等は、事業内容や財源構成等にそれぞれ特性があることを考慮し、独自の施策が実施できることとする。
② 所管補助事業において同様の取組がなされることを促すこととする。
③ 関係省庁と連携して実施する施策も含むものとする。
 
3 コスト構造改革プログラムの概要
プログラムは、公共事業の全てのプロセスを例外なく見直すものであり、「事業のスピードアップ」については、事業の円滑な進捗を図ることに重点を置き、構想段階からの地域住民との合意形成手続きの導入や協議・手続きの迅速化・簡素化、事業の重点化・集中化等の促進を図る等の8施策である。
「計画・設計から管理までの各段階における最適化」については、地域の実情にあった規格
(ローカルルール)の設定の促進や設計の総点検、数値目標を設定し新技術を促進するとともに、低コストの維持管理を実現するために管理の見直しを行う等の14施策である。
「調達の最適化」については、民間の技術力が一層発揮されるよう、技術提案を重視する調達方式を導入するとともに、積算方式の説明性・市場性の向上を図り、民間の活力を期待した、積算業務の省力化等を推進する積算体系を導入する等の12施策である。これらの、プログラムの概要及び全34施策の内容を図-1及び表-1に示す。プログラムの実施状況については、具体施策の着実な推進を図る観点から、毎年度、施策の実施状況と数値目標についてフォローアップを実施し、その結果を公表してきたところである。

図-1 国土交通省コスト構造改革プログラム
 
表-1 プログラムの具体的施策


4 コスト構造改革プログラムの具体的施策(抜粋)
(1) 事業のスピードアップ
【1】構想段階からの合意形成手続きを導入、推進する。(図-2)

公共事業の実施に際しては、これまでも事業の計画案について情報公開、住民参加手続きを実施するなどの取り組みを積極的に行ってきたが、さらに具体的な計画段階に先立つ構想段階から情報公開、住民参加等による合意形成手続きを導入することにより、事業のスピードアップを図るものである。

図-2 公共事業の構想段階における住民参加手続
(2)計画・設計から管理までの各段階における最適化
【11】地域の実情にあった規格(ローカルルール) の設定を促進する。(図-3)
より効率的かつ効果的な行政運営を進め、整備効果の早期発現や整備コストの縮減等を図るために、従来の全国統一の基準・規格に加え、基準の緩和や地域の実情に応じた適正な規格(ローカルルール) を採用するものである。

図-3 地域の実情にあった規格の採用
(3)調達の最適化
【26】総合評価落札方式等の技術力による競争を一層推進する。
総合評価落札方式等の技術力による競争を推進する環境を整備し、コスト縮減を図るものである。
 
5 コスト構造改革プログラムのフォローアップ
総合コスト縮減率には、従来の工事コスト縮減を含む項目を評価し、下式により率を算出する。しかし、下記項目以外にも、用地費の縮減やCO2排出量の削減による環境への影響軽減等の取り組みも考えられるが、コスト推計が困難であったり、コスト計測手法が未確立であることから、今回の縮減率の対象からは除いた。(ただし、コスト縮減の取り組みは、今後とも進めていく)


6 平成17年度の取り組み状況
(1)これまでの取り組み結果
1)平成9年度~平成14年度(基準年:平成8年度)
平成9年度からの取り組み結果は下表のとおりであるが、平成14年度の国土交通省全体としての取り組みは新行動計画の30施策304項目にわたり、縮減額としては6,900億円に達するものであった。九州地方整備局としては、設計方法の見直し、建設副産物対策、積算の合理化、技術開発の推進等の施策で高い効果が得られ、縮減額としては478億円という結果であった。

2)平成15年度~平成17年度の実施結果(基準年:平成14年度)
平成15年度以降の取り組みは、これまで取り組んできた工事コストの縮減に加え、コスト構造改革プログラムの実施項目の①事業のスピードアップ、②計画・設計段階から管理までの各段階における最適化、③調達の最適化の34施策でも新たに取り組んで来ており、国土交通省全体としては3,900億円の縮減額であった。また、九州地方整備局としては、245億円の縮減額を達成したものである。

なお、平成17年度のコスト縮減の記者発表資料については、本省ならびに、九州地整の各HPに掲載しているので、参照していただきたい。
九州地方整備局HP:http://www.qsr.mlit.go.jp/kensetu_joho/
3)平成17年度の管内事務所の主な取り組み事例

 

7 さいごに
平成18年度のコスト縮減の取り組み結果については、これからとりまとめを行い公表を行う予定である。
プログラムは、全体的に継続的な取り組みが多く、新たな施策としての取り組みが少ない状況になっている。特に公共事業のプロセスの見直しについては、関係各分野における担当者の積極的な取り組みがますます重要と考えられる。また、コスト構造改革プログラムは、平成19年度が最終年度となることから、職員一人ひとりがさらにコスト意識をもって取り組むことが必要不可欠である。しかし、具体的施策の実施にあたっては、社会資本施設が本来備えるべき基本機能・品質の確保、下請け企業などへの不当なしわ寄せの防止及び談合などの不正行為の防止が前提となることから、これまでの取り組み結果や実施状況等を十分に勘案し実施していく必要がある。

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