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九州地方整備局における入札契約制度について
宮成秀一郎

キーワード:総合評価、品質確保、担い手確保、生産性向上、働き方改革

1.はじめに

近年、建設業においては、担い手の確保が最大の課題となっている。このため、平成26 年6 月に品確法の改正がおこなわれ、「担い手の中長期的な育成・確保の促進」が新たに法律の目的に追加された。現在、同法の理念に則り、将来的な担い手確保のため、建設業界あげてi-Constructionを代表とする「生産性向上」や週休二日制の導入など「働き方改革」の施策を推進しているところである。
地域における災害対応や今後増え続ける老朽化構造物の維持管理を担う建設産業の役割は大きく、担い手の育成・確保という観点を、いかに現在の入札・契約手続きの中に取り入れるかが喫緊の課題である。
本稿では、平成30 年度の工事、業務における入札契約制度の概要について紹介する。

2.工事における総合評価落札方式について
2.1 総合評価落札方式の実施状況
(1)平成29年度の実施状況
総合評価落札方式は、価格と価格以外の要素(品質など)を総合的に評価して落札者を決定する方式であり、評価値(=技術評価点/入札価格)の最も大きい者を落札者とする。
九州地方整備局では、平成25 年度より総合評価落札方式(二極化)の本格運用を実施している。総合評価落札方式は大きく施工能力評価型と技術提案評価型の2 つのタイプに分けられ、それぞれⅠ型・Ⅱ型、S 型・A 型に分けられる(図- 1)

平成29 年度の総合評価落札方式の実施件数は、全体で1,075 件、その内訳は、施行能力評価型Ⅰ型244 件(約23%)、施行能力評価型Ⅱ
型811 件(約75%)、技術提案評価型20 件(約2%)であった(図- 2)。

(2)タイプの選定
総合評価落札方式の発注タイプは、図- 3 に示すように、工事規模や難易度により設定している。

(3)タイプ選定毎の配点割合
総合評価落札方式の配点は表- 1 のとおりであり、大きく①技術提案、②企業の能力、③技術者の能力を評価する。加算点合計は通常30 ~ 70点の範囲で設定される。

(4)施工体制確認型の評価
低入札工事においては、下請業者における赤字の発生や工事成績評定点における低評価が顕著になる傾向があり、適切な施工体制が確保されない恐れがある。このため、九州地方整備局においては、原則として随意契約を除く予定価格が1千万円を超える全ての工事に施工体制確認型総合評価方式を適用している(図- 4)。

2.2 平成30年度からの新たな取り組み
平成30 年度の改定点は次の2 点である。
①WLB(ワーク・ライフ・バランス)推進企業の評価
  平成30 年度から原則、WTO の一般土木及び建築工事について、WLB を段階的選抜方式で評価する取り組みを本格実施する。
②企業における工事成績評定基準の見直し
  近年、工事成績が上昇傾向であり、現行の評価基準では競争参加者の評点が上位ランクに高止まっており評価に差がつきづらい状況である。工事目的物の更なる品質向上を図る上で工事成績評定点が高い企業をより評価する必要があることから今回見直しを行った。

(従来)
7 段階評価、配点4 点、70 点以上を加点
(見直し後)
7 段階評価、配点4 点、75 点以上を加点

2.3 平成30 年度における試行工事の取組み
九州地方整備局では、次世代の担い手の確保や事務の簡素化等の観点から、様々な試行工事を実施しており、今年度は下記の試行工事に取り組む。
①新技術導入促進型(新規)
  総合評価落札方式の技術提案等において、新技術の提案を求め、その新技術を評価・採用することで、積極的な新技術の活用を推進し、効率的な施工管理、安全管理等による工事品質の向上等につなげる。
②働き方改革推進評価型(新規)
  建設業が社会資本の整備・維持管理等を継続的に実施するため、建設業の生産性向上や将来の担い手確保等を推進することを目的に、総合評価落札方式の評価項目で「働き方改革」関連事項を評価する。
③企業実績評価型(新規)
  災害復旧工事や施工環境が厳しい工事等、企業の組織力、機動力、技術的な経験を重視する工事において、企業の実績をより高く評価する。
④簡易確認型(継続)
  総合評価落札方式において競争参加者に提出を求める技術資料を簡素化することにより、競争参加者には資料作成に係る負担軽減、発注者には技術審査に係る事務量の軽減を図る。
⑤若手技術者評価型(継続)
  入札参加要件における監理(主任)技術者を若手技術者(45 歳以下)とし、若手の育成・登用を促す。
⑥技術提案評価型(自由テーマ型)(継続)
  本官工事において、当該工事の現地特性や目的物の構造特性を踏まえた課題及び技術提案を競争参加者に自由に求め、工事目的物のさらなる品質向上を目指す。
⑦一括審査方式(継続)
  複数工事の発注が同時期に予定されている場合、競争参加者からの技術資料(技術提案)の提出は1 つのみとし、発注者・競争参加者双方の業務軽減を図る。
⑧技術提案チャレンジ型(継続)
  受注実績の少ない企業や地域を支える建設業の入札参加意欲の向上を図るため、総合評価落札方式において、過去の実績と成績は評価の対象とせず、技術力の評価は提案された施工計画等により評価を行う。

2.4 ICT活用工事の推進
国土交通省では、i-Construction の一環として平成28 年度からICT 活用工事に取り組んでいる。各工種と発注方式は表- 2 のとおりである。このうち、施工者希望Ⅰ型については総合評価落札方式において「ICT 活用計画」を評価項目(配点:2 点)としている。

3.建設コンサルタント業務等における取り組み
3.1 入札契約方式
建設コンサルタント業務等の入札契約方式は、業務内容等に応じて「プロポーザル方式」、「総合評価落札方式」、「価格競争方式」に区分される(図- 5)。平成21 年4 月には、「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用のガイドライン」が策定され、その後、品質の確保・向上のため随時見直しを行い、最近では平成27 年11 月に改定されている。
この総合評価落札方式の中で各種の試行業務を実施している。

3.2 建設コンサルタント業務の実施状況
(1)発注方式別状況
平成29 年度における調査・設計業務の契約件数は約1,400 件であり、発注方式別割合は、全業種でプロポーザル方式が約2 割、総合評価落札方式が約5 割、価格競争方式が約3 割となっている。
業種別には、プロポーザル方式は土木で適用割合が約3 割と高く、総合評価落札方式は土木・地質・補償で適用割合が6 割、5 割、4 割となっている(表- 3、図- 6)。

(2)落札状況
平成29 年度は、落札率84.4%、低入札発生率3.4%となっている(図- 7)。
なお、平成29 年度の低入札発生率は、土木・補償以外が全業種平均を上回っている(表- 4)

3.3 平成30 年度の運用等の主な変更点
(1)企業・技術者の業務成績評価基準見直し
業務成果の品質向上対策として、設計照査の強化や適切な条件明示などの各種対策に積極的に取り組んできたこともあり、成果品の品質向上とともに業務成績も上昇傾向となっている。
このため、技術点の上昇・集中が進み、技術評価点に差がつきにくい状況であり、技術評価点の分散のため業務成績評価基準を今回見直した。
九州地整における従来の評価基準は、60 点以上で配点する5 段階評価であり、平成23 年度当時の業務成績分布状況を考慮していたが、近年は75点以上に大半の企業及び技術者が分布していた。
このため、平成30 年度より、75 点以上で配点する7 段階の評価基準に見直すことで、企業及び技術者評価の分散を図ることとした(表- 5)。
【対象】プロポーザル方式、総合評価落札方式

(2)手持ち業務における複数年契約業務の評価
従来は、技術者の手持ち業務の評価を、公告日時点の契約額(国債業務の場合は当該年度の支払限度額)を加算し「4 億円未満かつ10 件未満」を上限として評価していたが、履行期間が複数年の業務が増加してきており、技術者の稼働実態(期間)を反映した評価とは言い難い状況であり、全国的に実態に即した評価へと見直した。
具体的には、従来の「契約金額(国債業務は支払限度額)」から、「履行期間の総月数を分母として、当該年度の履行月数の割合に応じた金額」とするものである。
なお、設計共同体として受注した業務の契約金額は、総契約金額に出資比率を乗じた金額とする。(図- 8)(図- 9)に、算定方法の例を示す。

(3)試行業務(女性・若手技術者)
女性・若手技術者の登用、担い手の中長期的な育成・確保を図ることを目的に、担当技術者に女性技術者の配置を参加資格要件とする「女性技術者配置型」と、管理技術者に女性技術者を配置した場合、優位に評価する「女性技術者評価型」並びに、管理技術者(45 歳未満)および担当技術者(35 歳未満)の配置を参加資格要件とする「若手技術者配置型」を平成27 年度から総合評価落札方式で試行してきた。いずれも、十分な品質が確保されているため、従来の2 つの評価テーマ(業務内容に関するもの+固定テーマ)から「人材育成及び働きやすい職場環境等の取り組み」の1 テーマへ要件緩和した。なお、女性技術者の試行では、試行対象業務の限定を解除し、総合評価方式全般へ拡大し、若手技術者の試行では、参加資格要件を管理技術者(45 歳未満)のみに要件緩和した。

(4)一括審査方式の試行について
同一内容の業務で同時期に発注される複数業務を、一括審査により受発注者双方の事務負担の軽減及びスピーディーな業務執行を図る目的で、平成29 年度より総合評価方式で試行している。
本試行では、参加を希望した複数業務に対して提出された共通する技術提案書を、一括して審査を行うものであり、受注した業務において履行義務が発生することを受発注者双方が十分考慮する必要がある。本試行においては、複数業務に入札し落札決定通知を受けた場合は、それ以降に開札される業務の入札は無効となる。
複数業務に参加希望する場合は、同一の配置予定技術者・業務実績等とし、業務番号の最も早い業務に参加表明書と確認資料を含む全て資料を提出し、参加を希望する他の業務は、参加表明書のみ提出し、それ以外の資料提出を省略している。
また、複数業務に指名され技術提案書を提出する場合は、業務番号の最も早いものに技術提案書(鏡)と実施方針、評価テーマに対する技術提案等の資料一式を添付し、その他の業務では、技術提案書(鏡)以外の資料提出を省略している。
なお、技術提案書は、複数の業務に共通して対して履行義務が生じるため、特定の業務のみに限定して適用されるべき内容(手法、手順等)については評価の対象としないこととしている。

(5)試行業務(技術提案チャレンジ型)
地域の防災力の維持、既存インフラの維持管理を担う観点から、地場企業の技術力向上を目的に、受注実績のない企業へも同等に競争参加の機会を与える目的で、技術提案チャレンジ型試行業務を平成29 年度より取り組んでおり継続する。
この試行では、国土交通省等の受注実績がないことで加点がなかった企業並びに配置予定技術者の「業務成績」、「表彰」は評価しない。
対象業務は、「測量業務」「地質調査業務」のうち、従来「価格競争方式」で発注していた技術的に簡易な業務とし、一般競争入札方式(総合評価落札方式)での試行を行う。なお、品質確保の観点から「工程計画」、「安全対策」又は「品質確保」について、技術提案書への記載を求めている。

(6)民間資格の活用
国土交通省登録技術者資格については、平成30 年2 月に、維持管理分野(点検・診断等)並びに計画・調査・設計分野等を対象に40 の民間資格を新たに登録し、251 資格に拡大している。

3.4 建設コンサルタント業務等における品質確保対策
履行体制確認型総合評価落札方式の業務を対象に調査基準価格(予定価格1 千万円超えの業務)未満で落札した場合、次の対策を行っている。
①業務中の監督強化として、測量・地質業務では主任技術者、土木コン業務では現地調査を伴う場合に管理技術者の現場常駐の義務づけ
②測量・地質業務担当技術者に資格の義務づけ
③請負者負担による第三者照査の義務づけ
④予定管理技術者の手持ち業務量の制限 等
  履行中に管理技術者の手持ち業務量を超えた場合は管理技術者の交代措置を請求。
なお、500 万円以上1 千万円以下の競争入札業務を対象とする「品質確保基準価格」未満で落札された場合においても同様の措置としている。

4.おわりに
九州地方整備局では、品確法の趣旨を踏まえ、公共工事の品質確保に向けた中長期的な担い手の育成・確保の施策を行うと共に、地域を守る建設業の担い手確保を含めた建設業界の発展に寄与できるよう、各地方公共団体とも連携して発注者の責務を果たすため、引き続き様々な施策に取り組んでいく。なお、詳細については「工事業務における総合評価落札方式の実施方針について[平成30 年度版]」をホームページに掲載しているので参照願いたい。
http://www.qsr.mlit.go.jp/for_company/hinkaku/sogohyoka.html (アドレス)

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