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九州地方における無電柱化の取り組み

国土交通省 九州地方整備局
 道路部 道路管理課長
沓 掛  孝

キーワード:無電柱化、スピードアップ、PFI、セキュリティ対策

1.これまでの取組と現状
道路上の電柱や電線は、道路に設置された占用物件である。戦前は、電線管理者が自ら電線の地下埋設を行っていた時期もあった。しかし、戦後、急速な近代化や戦災復興に伴う電気需要の充足等の観点から、道路法上、電柱及び電線がいわゆる義務占用物件として位置づけられ一定の法的保護が与えられるとともに、安価で速やかに整備可能な架空配電・通信網の整備が進められてきた。
昭和60年(1985年)、電線類の地中化について有識者、関係省庁及び電線管理者が検討する協議会が設置された。昭和61年(1986年)から始まった第1期及び第2期電線類地中化計画の下では単独地中化式が最も多く実施されており、単独地中化方式が全体の約50%を占めていた。
平成7年(1995年)に電線共同溝法が施行されると電線管理者による単独地中化は激減し、道路管理者が費用の3分の2を負担する電線共同溝方式が無電柱化の大半を占めるようになった。(第5~6期計画期間では、約90%が電線共同方式。単独地中化方式は約1%)。これまで6期にわたり計画が策定され、約9,500㎞の無電柱化が実施されてきた。
しかし、現在、日本には、3,500万本の電柱が林立されており、削減に取り組んでいるにもかかわらず、逆に毎年7万本のペースで電柱が増加している。

写真1 国道3号千早・名島付近(現況)

図1 無電柱化の整備延長推移

図2 電線共同溝の構造形式と費用負担

2.近年の情勢の変化
阪神大震災(平成7年(1995年))や熊本地震(平成28年(2016年))では、数多くの電柱が倒壊し、架空線の被災率は、地中線に比べ数倍から数十倍も高くなっている。また、台風や突風による電柱の倒壊等の被災も生じている。災害時における道路の通行確保の観点から、無電柱化を推進する必要性が高まっている。

写真2 熊本地震(平成28年4月)における電柱被害

また、景観形成及び観光振興の観点から、無電柱化を推進する必要性が高まっている。
こうした中、平成28年(2016年)12月、無電柱化法が成立・施行され、国、地方公共団体、関係事業者(電線管理者)、国民の責務等が明確化され、それぞれの適切な役割分担の下、無電柱化を総合的、計画的かつ迅速に進めて行くこととされた。
社会的機運の高まりは、無電柱化の推進が単に電柱というネガティブな存在を道路空間から排除するだけの取組にとどまるものではなく、無電柱化を契機に、地域の防災や交通安全への意識の向上、良好な景観形成の効果を生かした地域振興施策等にも寄与することが期待されている。

3.無電柱化の推進に関する具体的な施策
(1)多様な整備手法の活用、スピードアップの試行、コスト縮減の促進等
①多様な整備手法の活用
地中化に際しては、収容する電線類の量や道路交通の状況、既設埋設物の状況等に応じ、浅層埋設方式や小型ボックス活用埋設方式、直接埋設方式の採用によるコスト縮減を検討することが必要であり、その際は、メンテナンスを含めトータルコストの視点も必要。さらに、電線管理者等が既設の地中管路等を有する場合には、これらの既存ストックの活用が可能か検討し、効率的に無電柱化を実現することが望ましい。このほか、民間の技術・ノウハウや資金を活用するとともに、地方公共団体の財政負担の平準化にも資するPFI手法を積極的に採用すべきである。

図3 低コスト手法の普及

図4 新技術・新材料の活用(技術公募)

②無電柱化のスピードアップ
電線共同溝事業の事業期間は平均7年と事業期間が長いことが課題となっている。設計、支障物件移転、本体工事、引込管路工事、事業調整を包括して発注することと等により、同時施工や調整の円滑化を図り、事業期間の短縮・発注者の負担を軽減する。直轄国道において、本格実施に向け令和元年度モデル事業にて試行中。

③電線共同溝事業におけるPFI方式の導入
予算の平準化、民間の技術・ノウハウの活用促進を目的として、電線共同溝事業においてPFI方式による事業を実施。設計、工事に加え、維持管理を含め包括的に委託。全国の直轄事業で試行中。九州においても大川市における事業について取組中。

図5 PFIの導入について

・九州におけるPFIの取組

図6 九州での取組(大川市榎津共同溝) 図7 PFIのメリット

(2)財政的措置等
①個別補助制度の創設
「無電柱化の推進に関する法律」に基づき、国により策定された「無電柱化推進計画」に定めた目標の確実な達成を図るため、地方公共団体において定める推進計画に基づく事業を計画的かつ集中的に支援する。

図-8 無電柱化に関する個別補助制度の創設

②観光地域振興無電柱化推進事業
観光による地域振興に向けた無電柱化の推進を図るため、電線管理者が実施する無電柱化を支援。具体的には、観光地において電線管理者が実施する単独地中化や軒下・裏配線を国と地方公共団体が補助。

図9観光地域振興無電柱化推進事業

③税制措置(特別措置の拡充・延長)固定資産税
一般送配電事業者、電気通信事業者、有線放送事業者が無電柱化を行う際に新たに取得した電線等に係わる固定資産税を軽減。2019年度税制改正で対象に交通安全上の課題がある道路等を追加。

④占用料の減免措置
直轄国道については、無電柱化の推進の観点から道路の地下に設けた電線類に対し占用料の減額措置を実施してきたところであるが、さらに、令和2年度から単独地中化に係わる占用料は徴収しない措置を追加。地方道については、令和元年6月時点で、18都道府県、119市町村が国に準じた措置を実施しているが、未実施の自治体においても減免措置を導入するよう依頼。

⑤電線敷設工事の資金貸付金制度の活用
緊急輸送路など防災上重要な経路を構成する道路の区間において電線の地中化を図るための電線共同溝の整備に伴う電線管理者の財務負担に配慮し、国と地方公共団体が無利子で資金を貸し付け。令和2年度より、歩行者利便増進道路における電線共同溝も対象に追加予定。

4.電線共同溝におけるセキュリティ対策
(1)蓋構造の対応
ハンドホール内蓋及びセキュリティ対策として、シリンダー錠ロック構造付き蓋を設置。

写真3 シリンダー錠

(2)耐セキュリティ性
防犯性能試験「特殊開錠用具所持の禁止に関する法律第7条に基づき、指定建物錠の防犯性能に関する基準に定める試験結果について、①耐ピッキング性能、②耐かぎ穴壊し性能、③耐カム送り解錠性能に適合するものを設置。
九州地方整備局では、計画的にセキュリティ対策を実施。

5.おわりに
無電柱化の取組は、一朝一夕になし得るものではなく、継続的な取組が必要であり、また、他の計画や事業とも連携しつつ、総合的、計画的に推進することが求められている。無電柱化の事業と効果的な制度の改正・運用が車の両輪となって、電柱がないことが当たり前の世の中になり、無電柱化の分野においても一日も早く国際社会の一員として肩を並べることができるよう願うものである。(「無電柱化推進のあり方検討委員会」抜粋)

写真4 整備前 福岡市東比恵付近 写真5 整備後 福岡市東比恵付近

参考文献
国交省道路局環境安全・防災課、路政課「無電柱化推進のあり方検討委員会」

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