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プレストレストコンクリート橋の新しい技術

プレストレストコンクリート建設業協会
 九州支部
小 林 康 人

1.はじめに
プレストレストコンクリートは,昭和20年代に,官,民学の協力によって実用化の試みがなされ,昭和27年にJIS桁の原型となる国内最初のプレテンションの橋梁が建設されました。
それ以来50有余年,新しい技術の導入,材料の発展を重ね数多くのプレストレストコンクリート橋(以下,PC橋)が建設され,最近においても新しい技術の試み,より良い材料の開発が続けられています。
本文においては,PC橋において最近採用されている新しい構造と新しい材料について,その概要を紹介します。

2.PC橋における新しい構造
(1)外ケーブル構造
世界で最初(1937年)にドイツにおいて建設されたPC橋が,コンクリート部材の外にPCケーブルが配置された外ケーブル方式のPC橋であったように,外ケーブル構造は新しい構造ではない。しかしながら,PC鋼材の防食技術が十分でなく,また,終局耐力の評価に問題があったため本体構造には採用されなくなり,架設用や,既設構造物の補修·補強に一部使用されるにとどまっていた。
近年,PC斜張橋が多く建設されるようになりPC鋼材の防錆技術と構造解析手法が格段に向上するにいたった。それに伴い1980年後半より外ケーブル構造の橋梁本体への採用が増加してきている。
外ケーブル構造は,
・部材の中にPC鋼材を配置しないので部材断面を薄くすることができ自重を軽減できる。
・PC鋼材を直接目視できるので施工管理維持管理が確実容易である。
などの利点がある。一般に.部材断面内にPC鋼材が配置される内ケーブルとの併用が合理的であるとされるが,最近,外ケーブルのみの全外ケーブル方式の採用も少なくない。
道路橋示方書においても2001年版より外ケーブル構造に関する記述が加えられている。

(2)大偏心ケーブル構造
外ケーブル構造を桁高の範囲外まで拡張してPC鋼材を配置した構造を大偏心ケーブル構造という。大偏心ケーブル構造の代表的なものとしてエクストラドーズド橋がある。中間支点上に支柱を設けて外ケーブルを桁高の範囲以上に大きく偏心させた構造で,景観的にはPC斜張橋に近いものである。PC斜張橋が主桁を塔から吊る構造であるのに対して,エクストラドーズド橋の斜材は主桁に軸力と偏心曲げモーメントを導入するためのPC鋼材である。したがって,塔の高さはPC斜張橋の場合の1/3~1/4である。PC斜張橋に比べて経済的なため,桁橋と,PC斜張橋の中間を埋める支間長100~200mの橋梁での実績が多い。

エクストラドーズド橋が中間支点部での負の曲げモーメントに対して大偏心させるのに対して,支間中央部の正の曲げモーメントに対して大偏心させた構造が張弦橋あるいは大偏心外ケーブルトラス橋と呼ばれるもので,主桁の両端で定着された外ケーブルで鉛直材を介して主桁を支持し,主桁に軸力と負の曲げモーメントを発生させる構造である。
支間中央,中間支点両方とも大偏心させた構造のものも建設されている。写真ー2は,その例である。

大偏心ケーブル構造は,
・主桁の曲げモーメントを軽減するため部材断面を小さくできる。
・長支間化が図れる。
・斜張橋に比べ塔の高さが低いため施工性が良い。
・斜張橋に比べ斜材の応力変動が小さく,疲労の影響が少ないので許容値が大きく取れ経済的である。
などの利点がある。

(3)PCと鋼との複合構造
断面レベルでの複合構造としてPC桁のウェブを鋼材に置き換えた波型鋼板ウェブPC橋が,近年,高速道路を中心に活発に建設されている。
波型鋼板ウェブPC橋は,
・ウェブを軽量な波型鋼板で置き換えることにより自重を軽減できる。
・長支間化が図れる。
・波型鋼板は軸力に抵抗しない(アコーディオン効果)ためプレストレスの導入効率が高い。
・波型鋼板は平鋼板に比べ高いせん断座屈耐力を有するのでスティフナーの必要が無い。
などの利点を有し,合理的で経済的な構造として注目されている。

波型鋼板ウェブPC橋と同様の目的で,ウェブを,鋼管を使用した鋼トラス構造とするトラスウェブPC橋も試みられている。
またPCと鋼の複合構造ではないが,同様の目的から,ウェブをプレテンションコンクリート部材とするプレテンションウェプ橋も最近では提案されている。

これらの構造は,いずれもウェブにPC鋼材の配置ができないため,外ケーブル構造が必須条件となる。
断面レベルでの複合構造とは別に,主桁のある区間だけを鋼桁にする場合を混合構造と呼んでいる。たとえば,エクストラドーズド橋において斜材の軸力を受ける中間支点部付近をPC桁とし,軽いほうが有利な支間中央付近は鋼桁とする場合などである。塔をコンクリートとし主桁を鋼桁とした斜張橋,アーチリブをコンクリートとし補剛桁を鋼桁としたアーチ橋なども混合構造である。いずれも長支間化を意図したものである。

(4)プレキャスト化
従来よりプレテンション桁はプレキャスト部材であり,プレキャストセグメント工法は1960年代より我が国においても実用化され,多くのPC橋がこの工法で建設された。しかしながら,経済性の面からその後適用されなくなり,わずかに一部,現場製作が厳しい条件の場合にT桁等に滴用されるにとどまっていた。しかし1980年代になって沖縄県における離島架橋が進み,長大海上橋が急速施工,品質管理の面からプレキャストセグメント工法によって建設され,また,1997年に完成した松山自動車道で延長1.9kmの重信高架橋で採用されたのを機に長大橋への適用が進められている。
また最近では,PCT桁橋,PC合成T桁橋など従来現場で製作されていた桁も,工場でセグメントとして製作されて現場で接合される方法が一般的になってきており,PC合成T桁橋は主桁はプレキャストセグメント,床版はプレキャストPC版を用いたPC合成床版としたPCコンポ橋として多く採用されている。
プレキャスト化は,施工性の向上,工期短縮に有効な方法であり,現場における環境負荷の低減,将来の労働力不足にたいする対策という面からも今後ますます推進されていくものと考えられる。

3.新しい材料
(1)高強度コンクリート
PC構造は,その構造特性からRC構造に比べ高強度のコンクリートが使用されてきた。それでも,一般的には現場施工では30~40N/mm2,工場製品では50~70N/mm2が使用されてきた。
1960年代に高性能減水剤が開発され,1973年には設計基準強度800kgf/㎠コンクリートがPCトラス橋に使用されたが,きわめて粘性が高く打設が困難であり,生コンとして使用することが困難であったため,その後はあまり使われてこなかった。
1990年代になり,高性能AE減水剤が開発され,現場においても600kgf/㎠以上のコンクリートが使用されるようになってきた。1993年にはシリカフュームを加えて設計基準強度1,000kgf/㎠の超高強度コンクリートによる歩道橋が施工されている。
平成8年の道路橋示方書では600kgf/㎠のコンクリートの許容値が加えられ,JIS A 5308-2003にも高強度コンクリートとして50~60N/mm2が加えられておりコンクリートの高強度化への環境は整ってきている。
シリカフュームなどの反応性微粉末を混合したコンクリートをRPC(反応性粉体コンクリート)というが,最近ではこれに鋼繊維などを加えて,圧縮強度が200N/mm2をも超える,高じん性,高耐久性の超高強度繊維補強コンクリートを用いた橋梁も施工されている。粗骨材を使用しないのでモルタルであり,微粉末を混入しているので自己充填性に優れており締固めの問題は無い。
より高強度のコンクリートに大きなプレストレスを加えることにより,部材厚の薄い,低桁高で軽量の梁の製作が可能になる。また,高強度コンクリートは密実であるために耐久性が高く,橋梁はもちろんのこと,それ以外の構造物への展開なども大いに期待できる。

(2)PC鋼材
a.PC鋼材の高強度化
先に述べたようにコンクリートの高強度化が進んでいるが,それらの特性を有効に活かすためにはPC鋼材の高強度化が必要になる。1999年のJIS改訂では,太径のシングルストランド(19本より線の28.6mm)が新たに加えられた。また,現在一般的に使用されているPC鋼より線はA種(引張強度1720N/mm2),B種(引張強度1860N/mm2)であるが,引張強度2300N/mm2級の高強度PC鋼材の開発が進められている。
b.PC鋼材の高耐久化
近年,設計耐用目標期間が100年とされ,塩害に対する耐久性の向上が重要な命題となっている。また,外ケーブル構造の適用の増大などの状況もあり,腐食に対するPC鋼材の高耐久化が進められている。防食の方法としては,従来のPC鋼材に被覆や塗装を施したものと,耐食性の素材を使用したものに大別できる。
樹脂被覆PC鋼より線は,1980年代に米国で実用化された。当初は,外側のみが被覆されたものであったが,最近では素線間の空隙までも完全に充填されたものになっている。樹脂はエポキシ系のものとポリエチレン系のものがある。エポキシ系は硬くて丈夫であるが紫外線に長期的にさらされると劣化をおこすため,直接日射にさらされる場合には二重にポリエチレン被覆したものが用いられる。一方,ポリエチレン系は紫外線に対する対候性に優れるが,比較的に柔らかく傷つきやすい。7本より12.7㎜と15.2㎜を中心に実用化されており,外ケーブルや斜張橋のステイケーブル,グランドアンカーなどに使用されている。塩害対策として内ケーブルやプレテンションケーブルに使用することも考えられるが,プレテンションケーブルについては付着強度の低下,養生熱の影響などの問題が残っており,実用的に使用されるにはいたっていない。

単に被覆したPC鋼より線ではなく,ポリエチレンシースにPC鋼材を挿入しエポキシ樹脂で充填したものを配置してコンクリートを打設し,緊張時はアンボンド状態,その後硬化してコンクリートと一体化するプレグラウトPC鋼材がある。当初使用されていた温度硬化型は水和熱によって高温になる部材に滴用するには問題があり,床版横締めに限定して使用されていたが,最近は湿気硬化型のものが開発され19本より21.8㎜や28.6㎜の太径ものが主方向ケーブルにも一部で使用されるようになってきている。

素材自体が耐食性のものとして,鋼材ではないが,炭素繊維アラミド繊維などの連続繊維補強材をPC緊張材として用いることが行われている。
錆びる心配がないため耐塩害性の材料として期待されるが,特殊な定着体が必要など取り扱いの難しさや経済性などから採用されにくい。最近は先に述べた被覆PC鋼材の開発などもあり,PC緊張材としての適用よりも,補修補強の分野への適用が盛んに行われている。

(3)高強度鉄筋
現在JIS規格で規定されている鉄筋コンクリート用棒鋼ではSD490が最高強度の異形鉄筋であり,生産の大部分はSD295AとSD345である。
近年我が国においては,人口の都市集中,地価の高騰,利便性等から市街地に多くの高層住宅がRC構造で建設されるようになってきたが,このような背景から旧建設省が中心となって1988~1993年に実施された総合技術開発プロジェクト「鉄筋コンクリート造構造物の超軽量・超高層技術の開発」において高強度鉄筋の実用化のための検討が行われ,降伏強度685N/mm2の高強度鉄筋USD685が製造されるようになった。
高強度鉄筋は高強度コンクリートと併用することによって高層建築物に使用されるようになり,土木分野においてもPC橋の高橋脚に使用されるようになってきている。
高強度鉄筋の使用は,部材断面の終局耐力において有効であり,鉄筋量が減少して過密鉄筋の解消や施工性の向上に利点がある。一方,ヤング係数は従来の鉄筋と変わらないため,ひび割れの制御をプレストレスによっておこなう事が必要になってくる。このように高強度鉄筋と高強度コンクリートの組み合わせにプレストレスを加えることによってPC構造物の施工性,耐久性の向上が期待できる。

4.あとがき
以上,近年におけるPC橋に関する新しい構造,新しい材料についてその一部を紹介いたしました。
これらの技術はそれぞれの要素技術が単独に発展するものではなく,お互いに組み合わされ,ひとつの技術の発展が他の技術の発展を促すようにおなじ目標にむかって発展しています。
最後に,本文を掲載させていただく機会を頂いた関係各位に感謝し,今後ともプレストレストコンクリートの技術にご理解を賜りますようお願いしてあとがきとします。

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