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ビデオテックスで見る道路情報

建設省大分工事事務所
調査第二課長
大 井 健一郎

(株)福山コンサルタント
調査部主任
濱  久 人

1 プロローグ
Aさんは薬剤関係の営業マンだ。毎日大分県内の総合病院・個人病院に薬剤の注文をとりにそして注文品の配達に走りまわっている。大分市や別府市を回る日はよいのだが,湯布院,日田と山間部に行くときはたいへんだ。会社がある大分市から国道210号を会社の車で走るのだが,落石や崖崩れで片側通行止になっていることが多い。また冬は凍結でチェーンが必要なことも多い。これを知らないで行くとひどい目に会う。医者の先生方はうるさがたの人が多い。時間に遅れたりすると,散々文句を言われてしまう。しかたがないので,ずいぶんと時間に余裕を持って出発していた。
しかし,ビデオテックスでの道路情報提供が始まってから,ずいぶんと楽になった。朝起きてビデオテックスのスイッチをいれる。道路情報の項目を選択し,通行止と通行規制の情報を見ると国道210号の規制状況は一目でわかる。今日はどうやら大きな規制はないようだ。次に情報板による道路情報を選択すると,大分県のあちこちに設置された道路情報板に今表示されている内容を見ることができる。今日は水分峠付近で凍結があるようだ。少し早めに行った方がよいか。それにしても以前は天気予報に電話したり,地元の知合いに尋ねたりと面倒だったが,ずいぶんと楽になった。
Bさんは小学生の子供を2人持つ主婦である。子供を学校に送り出すと,マイカーで大分市の中心部にあるカルチャーセンターに行き,帰りにデパート・スーパー・商店街で買い物を済ませてくるのが日課である。最近,某デパートの買い物が自宅からできるというので,キャプテン端末を自宅にいれた。Bさんは機械に触るのは大の苦手だったが,キャプテンは画面に表れたとおりに入力するだけで利用できるので,便利に使っている。
ところで最近このキャプテンで,駐車場の情報と大分市中心部の一方通行の情報が確認できるようになった。毎日のように通っていても一方通行や駐車場の位置を未だに正確に把握できないBさんにとってこの情報はありがたい情報である。

仮想の道路利用者に登場いただいたが,これが建設省が大分地域で提供を行っているビデオテックスでみる道路情報の利用の一こまである。
建設省では道路に関わる情報を的確かつ迅速に把握し,適切な道路管理,道路利用者への適切な情報提供を目的に道路情報システムの整備を進めている。道路利用者への情報提供方法としては,現状では道路本線上に設置された道路情報板が主体となっている。しかし今後提供手段の多様化,提供内容の高度化をめざして路側放送(路側に設置された通信ケーブルからAM放送 1620KHzの電波を出して,車載のラジオで情報を聞く放送施設)や道路情報専用FM放送などがある,今回取り上げたビデオテックスによる道路情報の提供もこの道路情報システムの提供システムの一つとして,検討を進めているものである。本報告では,大分地域において実験的に行ったビデオテックスを用いた道路情報提供の状況についてまとめる。

2 ビデオテックスを用いた道路情報の提供
(1)提供の前提
道路情報提供の1手段として,ビデオテックスシステム(日本ではキャップテンシステムが中心;注1)を利用することで,利用者が自宅や事務所で自分がほしいと思うときに情報を得られる会話型のため自分の必要な情報だけを選択して確認できる,ラジオや情報板と違い目でしかも画像情報として確認できるなどの利点がある。
キャプテンシステムの利用は九州では昭和60年から始まったが,当初利用契約数(端末数)があまり増加しなかった。しかし昭和63年には6,870台,平成元年3月には1万台を突破し,未だ十分とは言えないが,情報提供手段としての有用性が高まっている。
そこで九州地区の中でもニューメディアヘの取り組みが積極的な大分地域において(総台数1,642台で福岡に次ぐ設置台数を持ち,世帯当たりでは240世帯に1台で九州で最も多い:平成元年2月時点,キャプテンサービス株式会社の資料による)道路情報の実験提供を行って,その有効性を検討することとした。

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注1)ビデオテックスシステムとはテレビジョンと電話網とコンピューターを組み合わせた新しい通信サービスである。会話型の双方向性を持つ,既に普及した電話回線とテレビ受像機を利用するため経済的かつ容易に実現できる,画像情報が利用できるなどの利点を持つ。このビデオテックスシステムという名称は世界統一の名称であり,世界ではヨーロッパのCEPT方式,北米のNAPLPS方式があり,日本では郵政省とNTTが中心になって開発されたキャプテン方式が普及している。

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(2)提供方法
キャプテンシステムを用いて情報を提供するための提供方法には以下のようないくつかの方法が考えられる。 ①自らビデオテックス網を構築する。 ②NTTを利用してキャプテンシステムの直接型もしくは間接型情報センターになる。 ③情報提供者(IP:Information Provider)となり,情報入力端末を設置して既存のキャプテンセンターに直接情報提供を行う。 ④情報提供者となり,画面の作成・修正はキャプテンサービス会社(NTTのキャプテンサービス会社もしくは地域のプライベートキャプテン会社)に依頼する。などの方法が考えられる。
① 自らビデオテックス網を構築
情報提供用のコンピューターを自ら設置し,独自のシステムを構築するものである。独自に設置するため費用は最も高くなるが,方式はキャプテン方式に限らず他の方式(北米方式など)でもよく,高密度モード(キャプテンのランク3モードで,普通の家庭用端末の4倍の情報がはいる)を標準として使用できるなどの利点があるが,端末・装置を独自に設置する必要があり,利用可能な端末が限られ利用が進まない可能性がある。高速道路のように利用者が限られている場合,この方式の利点が生かされる。道路公団ではこの方式を採用し,東名高速道路海老名SAでリクエスト型端末として利用者に道路の案内・交通の状況などを提供している。
② NTT利用のキャプテンセンター設置
自らキャプテンシステム用のコンピューターを設置し,同時に全国のキャプテン情報センターに接続して,利用者に提供する方法である。直接型は自らもキャプテン情報センターと同様の役割をはたせ(キャプテンセンターを経由せずに利用者が直接接続できる),間接型は必ずキャプテン情報センターを利用する必要があるといった違いはあるが,いずれも自ら提供画面の管理を行う面からは同様の方式と言える。大分ニューメディアなどのプライベートキャプテンがこの方式である。このような方式で道路情報を提供している例として,キャプテン信州・キャプテン山口がある。いずれもプライベートキャプテン会社である両社が道路管理者や道路情報センターから情報を入手して自らの責任で提供を行っている。もちろん道路情報の提供のために設立されたものではないので道路情報専用のシステムではない。提供内容は道路案内,道路の通行止め,有料道路情報などである。
③ 既存キャプテンセンターヘの直接入力
キャプテン情報センターもしくはプライベートキャプテンのコンピューターを利用して提供を行う方法で,情報入力端末装置を設置して提供画面の作成・修正はオンラインで行うことができる。費用的にはキャプテン情報センターの利用料と情報入力端末装置の費用だけで①,②よりかなり安い。キャプテン岡山において瀬戸大橋博覧会の交通情報を提供するため,道路交通情報センターに情報入力端末装置を設置して,交通規制・交差点の混雑をリアルタイムで提供していたが,それはこの方法でおこなっている。なおキャプテン岡山では交通規制・交差点混雑情報以外に,駐車場台数,パビリオン待時間などの情報を博覧会協会との協力で提供した。
④ 既存キャプテンセンターヘの情報提供
自らは特にハードウェアの整備をせず,提供画面の作成・修正ともキャプテンサービス会社に任せる方法で,費用的には最も安く,運用のための体制も簡単である。しかし,リアルタイムな情報提供は難しい。
そこで,今回のテスト提供では提供情報を分単位のリアルタイム性を必要としないものにしぼること,テスト提供のため本格的なハードウェアの整備は難しいことから,最も簡単な④の方法で提供を行った。

(3)提供内容
今回のテスト提供のために,利用の可能性や利用したい内容・利用方法などについてアンケートを行った。アンケートは事務所,一般家庭,有識者を対象に行ったが,その結果混雑,通行規制,災害,気象,道路案内などの情報で利用可能性が高かった。
提供内容はこれらや実験提供であること,また,現況の体制で対応できるもの等を考慮して表ー1のような内容を提供することとした。

なおテスト提供は昭和63年12月20日より始め,平成元年3月までを当初計画とした。
提供はテスト提供のため,図ー4のごとく2ステップに分けて提供した。
情報提供項目ごとの代表的な画面のプリント例(キャプテン端末付属のプリンターで出力したもので,一般の利用者も画面で確認するだけでなく,このようなプリントしたものを入手できる。)を図ー5に示す。

(4)利用者アンケート
今回の提供は実験としての提供であり,利用者がどのような反応を示すかを確認することが大きな目的であった。そこで大分地域の利用者の方々に表ー2のような形でアンケートを行った。
結果,表ー3に示すようにビデオテックスによる道路情報の提供に対する期待は大きく,今後も内容の充実をはかりながら提供を望む声が多かった。提供内容については情報のリアルタイム性(現実にあった情報),広範囲な(九州全域といった)情報,より詳細な情報などが望まれている。
また利用実績からみても,通行止めと通行規制の情報が多い。しかし一方で道路時刻表や問い合わせ,駐車場の情報も平均して利用されており,これらの情報へのニーズも高いといえよう。

3 まとめ
今後,本格提供に向けての解決すべき課題として,キャプテンシステム自身の持つ問題では,画面の精度(情報量)が現在家庭用として利用されているランク2の端末では不十分であること,情報の検索に手間がかかること,端末数が(年々増加しているものの)未だ不十分なことなどがある。また情報提供者としての建設省側の問題として,情報収集体制が不十分なため,なかなか情報が集まらないことや提供の体制が固まっていないことがある。またこれに関連する問題として費用負担をどこで行うのかという問題がある。大分のテスト提供ではキャプテンの利用費,画面の作成。入力費,画面の修正費いずれもテスト提供ということで建設省で負担したが,前述のキャプテン信州・山口ではキャプテンサービス会社が負担しており,キャプテン岡山では道路交通情報センターも負担している。
平成元年度にこれらの検討を含めて,本格的な実施に向け,テスト提供を継続する予定である。

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