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スポーツ公園建設におけるコスト縮減と環境対策

大分県 土木建築部
 公園下水道課長
森 本 恵 助

大分県 土木建築部
 スポーツ公園建設部長
池 辺  理

1 はじめに
きたるべき21世紀は,今までのような仕事中心の生活から,豊かな自由時間を活用したスポーツやレクリエーション,さらに文化活動などの人間性の成熟に向けたライフスタイルになることが予想されている。このようなニューライフに対応できる拠点施設として,スポーツ公園の計画が立案され,大分市の中心部から約7kmの里山と称す広葉樹林が残る丘陵地に,都市公園として整備されている。公園建設の理念は,恵まれた自然環境の中で,県民がそれぞれのライフステージにあったスポーツを楽しむことにより「スポーツ文化」創造のための基盤整備をし,2002年のワールドカップサッカーや2巡目国民体育大会のメーン会場としても使用する予定である。

2 計画
(1)造成計画
計画地の里山は,人が自然の摂理を利用し,薪,炭,シイタケの原木用として伐採更新を重ねてきた広葉樹の2次林を主体とする森林植生で占められ,分布割合も55%に達している(表ー1)。このような環境に,レッドデーターブックに絶滅危惧Ⅱ種として記載されているオオイタサンショウウオが生息し,保護には,現存の生態系を守る必要があり,谷部を中心とした樹林の保全が求められ,造成計画を変更し,保全エリアの拡大をした。

公園を拡大する195haのうち,谷部を中心とする2次林60haをそのまま保全し,一度造成した法面などは樹木の移植と苗の植林により,復元林40haを再生し(図ー1),合計すると100ha,51%が樹林に覆われて,造成以前の2次林55%に近い値となる。復元する樹林は,保全エリアと同種の樹種を植栽し,一体化して生態系の保全を図れる計画とした。

(2)施設計画
施設整備は,1期計画を2002年のワールドカップサッカー開催に必要な施設,2期計画を平成20年の2巡目国民体育大会に必要な施設,3期計画で完成する段階的な整備をし,全体の施設計画は,図ー1のとおりである。1期計画は,195haの用地買収,造成工事,スタジアム,サッカー・ラグビー場,園路,駐車場などを整備する。特に,スタジアムは,スポーツ公園の中心施設としてふさわしいデザインを持ち,スポーツイベントだけでなく文化イベントにも使用可能な機能を持つよう,スポーツを「する」「みる」人に安全で快適に,しかも定時制を確保できる簡易開閉式屋根を持つ全天候型の施設とした。なお,県民が,くつろぎ,憩える温泉を活用した方策も検討している。スタジアムは,平成10年に着手し,平成12年度に完成の予定である(写真ー1)。

3 コスト縮減対策
(1)スタジアムの提案競技
スタジアムは,多目的な利活用と天然芝の育成を考え簡易開閉式屋根構造としたため,世界でも当スタジアムの規模を持つ簡易開閉屋根構造の施設例がなく,オランダのアムステルダムに建設予定であるサッカー専用アヤックス・スタジアムを参考に上限価格を設定し,設計施工一体型の提案競技を実施した。提案競技の方法は,2段階方式による公開競技とし,第1段階はプロポーザル方式により,基本的な取組みを問い,選抜されたものが第2段階に進むこととした。第1段階では,12共同体(設計と建設会社で構成)が応募し,審査の結果第2段階に進んだ共同体には,日本だけでなく,イギリス,イタリア,アメリカ,オランダ,フランスを含めた6共同体が最終審査に臨み,国際的なコンペの様相を示した。スタジアムの提案競技要件は,規模を43,000人収容で,世界サッカー連盟(FIFA)基準と第1種陸上競技場としての条件を満足し,全天候型の開閉屋根を持つ,本体総工事費250億円以内の施設とした。最終審査で最優秀に選定されたKTグループ(黒川紀章建築設計事務所・竹中工務店・県内の2企業)が,今年の5月に工事着手した。
大分スタジアムは,実質工事積算額で250億円を上回っており,ワールドカップサッカーを開催する自治休の建設費(表ー2)と比較して,安価で全天候製を実現していることにより,利活用の面でも,他の自治体より,有利となっている。スタジアムの設計施工一体型の提案競技は,コスト縮減対策として有効な手段であることを示す一例であると思われる。

(2)復元林の手法
復元林は,スポーツ公園として拡大する195haの中で40ha(20.5%)を占め,平面・法面部とも20haを整備する(図ー2)。

復元林の平面部は,重機が進入可能な場所で,造成する部分の樹木約1万本を大型重機により移植する工法とした(図ー3)。この工法の特色は,樹木とともに成育していた土壌(縦2m,横2m,高さ0.9m)を移動させるため(写真一2),樹木1本だけでなく,周囲の小木,草花,土壌中の生物を含み,小規模ながら,もとの環境が新たな場所に移転するともいえる。また,通常の樹木移植は,樹木の水揚げの少ない時期に行なう例が多いが,この工法は,四季を通して造成の工程を勘案しながら随意に実施できる。コスト面では,樹木の購入費が不要となる分だけ安価となる。

法面部の植樹は,2割勾配の造成面に公園周辺において採取した種子から発芽させ,成育環境と同じ無肥料の状況で,約1年間育苗し,植栽する工法とした(図ー4)。公園周辺の地質は,大分層群の砂礫とシルトの互層で,表層に森林土壌が薄く分布しているため,広い面積の維持管理と保全林との一休化を考慮し,その土地に適合した種からの育成方法が最適と判断した。樹種は,表ー1の植生分布にある,2次林のコジイ,アラカシ,クヌギ,コナラを中心にヤマモモ,モチノキ,ヒサカキ,ヤマザクラ,ネムノキ,ヤマハゼ,アキグミ,ハギ,コウゾなど80数種を植樹し保全林と同じ里山の復元を図る(写真一3)。
造成法面の植栽は,短期間に里山にならないが,経費節減の折,厚層基材による法面緑化よりも安く,特に,当公園のように広い面積(約20ha)を樹林に復元する工法としては,有効な手法と考えている。

4 環境対策と住民参加
里山は,広葉樹林としての組成の多様性と森林,湿地,草地,水域など,生物の生活の場として最適であり,様々な地域に生息する種が豊富で環境の豊かさに貢献してきたといわれている。このため,里山にすむ多くの植物,動物,菌類の生態系を活用し,環境に配慮した公園作りを碁本方針とした。工事着手にさきがけ,環境アドバイザーとして開発,動物,植物,鳥の4人の専門家に就任していただき,毎月環境と建設状況に関する検討会を開催するとともに,研修会,見学会,オオイタサンショウウオの保護池(16か所造成)などの対応をしている。また,小学校4年生は,社会科の授業で環境を学ぶため,地元の学校と提携し,公園を身近な題材に選び,授業の中でアドバイザーと県職員が2時間の講義と半日の現地見学会を開催した。環境対策として,樹木の移植,法面緑化,オオイタサンショウウオの生態と保護対策を学び,公園作りの意義とともに環境に配慮した計画の理解を深めた。
なお,環境に配慮した公園作りを理解し,自らも公園作りに参加したいと,周辺の住民が,公園の法面に「地区の森」づくりをしている。10月に公園周辺の種子を拾い,家庭において育苗して,次の年の9月にその苗を公園の法面に植樹するもので,今年も,子供から老人まで約200人の地区民が参加し(写真一4),住民と行政が一休となった公園作りの一例であると考えている。

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