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お茶摘みに挑戦
平 野 沙 也 香
「日常茶飯事」という言葉は、毎日のお茶や食事の意味から、日々のありふれたことを表す。しかし、最近は急須がない家庭も少なくなく、お茶は毎日家庭で淹れるものではなくなってきているそうだ。そんななか、私が日本茶にハマるきっかけとなった出来事があった。
まだ肌寒さが残る 4 月末の朝 8 時、私は佐賀県嬉野町の山間部にあるお茶畑にいた。夫が仕事でお世話になった方のお茶園で、人生初のお茶の手摘みに参加することになったのだ。夫の話もよく聞かず、緑に囲まれて楽しそうだとノリで来てしまったが、今回のお茶摘みは観光客向けのお茶摘み体験ではなく、なにやら全国茶品評会なるものに出品するためのお茶摘みだったのだ。そんな責任重大な作業に、私みたいなド素人が参加しても良いものかと一瞬おじけづいたが、農協職員さんや地元農家さんにご指導いただき、いざお茶摘みへ。
お茶の木の枝は、先端に「芯」といわれる、まだ葉が開いていない芽の状態の葉があり、そこから下へと互い違いに葉がついている。このうち、芯とその下の 2 枚の葉の部分を「一芯二葉(いっしんによう)」、芯とその下の 3 枚の葉を「一芯三葉(いっしんさんよう)」という。
一芯二葉で摘む場合、一芯三葉で摘む量の半分しか取れないが、渋みの少ない生まれたての葉のみを使うため、甘みが強く繊細な味わいとなる。今回は、全国茶品評会での農林水産大臣賞獲得をねらうお茶なので、贅沢に一芯二葉で摘む。最初こそおじけづいていた私も、今や大臣賞を取りに行くモードになっている。気合十分だ。
開始から暫くすると、お茶を摘むのにも慣れてきて、周りをみる余裕が出てきた。私の左隣にはお茶農家のお嫁さんらしき若い女性二人組がいた。ドラマの話で盛り上がっている間も、手は迷いのない速さでお茶を摘んでいく。右隣には長くお茶栽培をされているらしいおじさんが、自分のお茶づくりの想いを熱く語っている。今日のお茶摘みには150 人もの人が集まっていた。一つのお茶農園の挑戦に、老若男女を問わずこんなにたくさんの人が集まっていることに驚いた。嬉野のお茶が全国で賞を取ることは、地元のお茶関係者にとっての挑戦でもあるのだと思った。
あっという間に時刻はもうすぐ正午。太陽はいつの間にか頭上高く昇り、気温も上がってきた。お茶摘みは中腰になって行うため腰が疲れてきたが、製茶に必要な量がまだ採れていない。これはなかなか大変だ。
腰をたたく人がちらほら出てきたところで、休憩の時間となり、水出し冷茶が振舞われた。お湯で淹れるお茶とは違い、鮮やかな緑色をしており、味は甘くてまろやかで、でも後味はすっきり。私は冷茶の虜となった。
休憩後、順調に作業は進み、無事に目標の収量を達成した。摘み取られたお茶は製茶の工程を経ると重さはわずか 6 分の 1 になるそうだ。お茶が作られるまでに、こんなに手がかかっているなんて知らなかった。
この日以降、雑誌や Web で日本茶がたびたび取り上げられていることに気づくようになった。急須で入れる日本茶が特別なものになったからこそ、コーヒーやワインのように、日本茶も単一産地や単一農園のものが注目されているそうだ。実際にいくつかの産地の日本茶を飲み比べてみると同じ品種でも産地毎に個性があり面白い。
お茶は家庭だけではなく、職場でも取り入れることが出来る手軽さがよく、いい気分転換になる。日々の生活の中には、きちんと気分転換するだけで物事がうまくいくことは案外たくさんある。さあ、皆さん、お茶の時間にしませんか。

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