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九州技報 第40号 平成18年度九州国土交通研究会「学術賞」受賞作品

砂防CSG工法のさらなる活用に向けた現地試験施工について

国土交通省 九州地方整備局 雲仙復興事務所 砂防課長 稲崎道男

国土交通省 九州地方整備局 雲仙復興事務所 砂防課 長木豊臣

 
1 試験施工の目的
雲仙復興事務所では,噴火にともない発生・堆積した現地発生土砂の有効活用を目的とした砂防CSG工法(以下「本工法」という)を全国に先駆けて採用している。本工法は,現地発生土砂にセメントを攪拌混合したもの(ソイルセメント)を振動ローラで締め固め,構造物を構築する工法であるが,従来のコンクリート工法と比較すると,①建設副産物の発生の軽減,②建設コストの縮減,③工期短縮等の優位性が挙げられ,これまで当事務所では砂防えん堤袖部や導流堤等を対象に多くの実績を積み上げてきた。
今回の試験においては本工法のさらなる合理化を進めるため,骨材として用いる現地発生土の最大骨材寸法¢150mm程度の骨材混入率を高めるとともに,現在使用していない¢300mm以下の骨材を混入させたソイルセメントの実用性を検証した。また,確立されていない本工法における打継ぎ目の処理方法について,処理無し,セメント散布,敷モルタル等の各種処理方法の試験施工を行い,打継ぎ目の処理方法の有効性について比較検討を行った。
 
2 最大粒径緩和に関する試験
2.1 最大粒径緩和に関する試験内容
現在,本工法における母材料の敷均しは,層厚30~50cm程度を対象とし,この対象層厚を1層(30~50cm)又2層(15~25cm)としている。この場合の現地発生土砂の最大粒径は,敷均し層厚の1/2程度(2層敷均しの場合80m~150mm)を目安に設定されている。ここで,雲仙復興事務所の現地発生材は,良質であるため,使用材料の最大粒径の緩和がはかれれば,現地発生土砂の有効利用を促進できるとともに,これに伴う作業効率の向上が期待されるものと考えられる。
以上の実状を踏まえ,INSEM材の製造に使用する母材(現地発生土砂)の最大粒径を緩和し,より効率的な施工を行うための資料に資することを目的に試験施工を行った。
2.2 試験施工条件
最大粒径緩和に関する検討を目的として実施する試験施工(以下,単に「試験施工」と称する)における試験施工ケース及び試験施工条件を表-1に示す。ケース1~3は,現状の最大粒径150mmで大礫含有率を増加させた場合である。ケース4~6は,大礫含有率を増加させるとともに母材の最大粒径を300mmとした場合である。
表-1 試験ケース及び試験施工条件

 


2.3 最大粒径緩和に関する試験施工結果
2.3.1 打設面観察
試験施工を実施した各ケースの打設面の観察を行い,ジャンカや大礫の状況等,ケース毎の打設面の品質に関する調査を行った。調査は,各ケースの打設面をメッシュ(1m×1m)区分し,各々の面に対して不良箇所の面積を計測した。写真-1に打設面状況,表-2に打設面観察基準を示す。

写真-1 打設面状況

 

 

 

 

 

 

レベルⅠ

 

 

 

レベルⅡ

 
表-2 打設面観察評価基準

 

ケース1~3                              ケース4~6
図-1 各ケースの試験施工地の起伏状況
 
① 図-1左より最大粒径150mmとした場合,80~150mmの含有率が30%以下の場合,打設面に与える影響は小さいものと考えられる。
② 図-1右より最大粒径300mmとした場合,80~300mmの含有率が20%以下(80~150:150~300=1:1の条件下)の場合,打設面に与える影響は比較的小さいものと考えられる。
③ ケース3とケース6の結果より,最大粒径300mの方が最大粒径150mmよりも打設面に及ぼす影響は大きいことが確認された。
2.3.2 打設面の起伏量
打設面に大礫が密に混入していることや層厚程度の大磯が混入していることから平坦な状態となっていないことが確認された。また試験施工中は,振動ローラが傾くなど,施工者の安全性が損なわれるような状況も確認された。(写真-2,3)

写真-2 振動ローラによる施工状況

写真-3 振動ローラの走行に影響する大礫

Gmax=150mmとしたケース1~3では最も粗骨材の割合が大きいケース1で起伏量が最も小さくなる結果を得た。Gmax=300mmとしたケース4~6では最も粗骨材の割合の小さいケース4で起伏量が小さい,続いて粗骨材割合30%のケース6,粗骨材割合20%のケース5で起伏量が最も大きいという結果となった。
本工法の施工管理基準として,打設面の起伏量に関する規定はなく,一般的に起伏がある場合は,人力作業で礫の除去等を行われている。本検討では,巨礫の含有率が高い場合,起伏量が多い傾向があることを確認したが,振動ローラの走行時に運転者に危険をさらすような起伏については,施工の安全性という観点から,評価する必要があるものと考える。 
2.3.3 施工者へのヒアリング
試験施工を実施した施工者に対して,粗骨材(大礫)を含んだ条件における各種作業について作業性のヒアリングを実施した。そのヒアリング結果を以下に示す。
ⅰ)混合作業
混合作業では,大磯を含むことによる作業性及び混合枡への影響などについてヒアリングした。
今回試験施工を行った条件(Gmax=300mm以下,大礫含有率40%以下)では,混合作業において,違和感はあるものの作業が特にしにくいなどといった印象はなかったとのことであった。また混合枡の角に大礫が落下し,混合枡を破壊する恐れがあったが,十分注意して行うことで対応できるとのことであった。ただし,混合状況を見る限りでは,攪拌する大礫を考慮し高い位置から落下させ,混合しやすくなるように工夫しているようであった。
最大粒径およびその割合が変化しても,混合作業への支障はないものと考えれる。
ⅱ)敷均し作業
敷均し作業では,建設重機の機械力の影響が強いことからGmax=300m以下,大礫含有率40%以下の条件では,作業自体に大きな支障はないとこのことであった。ただし,仕上げを十分に行うためには時間がかかる,もしくは人力による整正作業に重点をおく必要があるとのことであった。また,転圧後の打設面が不良になることが想定されることから,実際に大礫径を含む仕様であっても,できる限り除去して施工する可能性が高いとのことであった。
大粒径を多く含む場合は,人力による整正作業に時間を要することが考えられる。機械の施工性への支障は小さいものと考えられる。
ⅲ)締固め作業
締固め作業では,Gmax=300mmとした場合,振動ローラの鉄輪が浮き上がる状態が確認された。このような作業は,安全上好ましくないとともに,振動ローラ転圧自体の必要性が不明確になるという意見が得られた。また,振動ローラが乗り越えにくい礫なども認められたことから,実際の仕様で採用されても大きな礫は,敷均し時に除去して作業することになるだろうとの意見があった。なお,振動ローラは礫を乗り上げる際,鉄輪はへこむなど変形するのではないかと確認したが,雲仙の礫は軟質であるため,そのようなことはないであろうとの意見であった。
大磯を含む(特にケース46)場合は,作業の安全性に支障がある。また大礫があれば,振動ローラが乗り越えにくいため,転圧に要する時間が長くなるものと考えられる。
2.3.4 コア圧縮強度試験
圧縮強度試験に用いるコアは,各ケースの施工性・品質等の特徴を把握することを目的とし,打設面の中で比較的起伏のない平坦な箇所(標準部各ケース3本)と凹凸のある巨礫ならびにジャンカの周辺(礫周辺部各ケース3本)のコアを採取し,強度試験を行った。コア圧縮試験結果を図-2~4に示す。
各ケースの圧縮強度は,一般的な粒度分布で実施したケースに比べて大きな結果となった。大磯を使用することにより,細粒分と混合されるセメント量が増加するためと考えられる。ケース4は大磯の割合が10%と一番少ないことから強度も小さくなっている。一般部(No.1~3)と礫周辺部(No.4~6)の密度は,それぞれ多少のバラツキはみられるが,概ね同程度の値を示している。

図-2 各ケースの圧縮強度試験結果
 

図-3 各ケースの圧縮強度と密度の関係(標準部)

図-4 各ケースの圧縮強度と密度の関係(礫周辺部)


2.4 打設面処理標準化のため試験
INSEM工法における打継目処理方法は,全国的に未だ検討されていないのが現状である。打継目処理方法を変化させ,打継目の処理方法の確立ならびにせん断強度の把握を目的とした試験施工を実施する。
2.4.1 打継目処理方法
既往の処理方法として,無処理・打設面清掃(散水有)・ボルトランドセメント散布・モルタル敷均し・グリーンカットとモルタル敷均しが挙げられる。
現地試験施工による打継目のせん断試験結果より,打継目処理方法の提案を行う。 
2.4.2 打継目処理方法検討ケース
試験施工条件を表-3に示す。打継目処理方法の検討ケースは,ケース1~4を基本として,試験施工を実施した。また捨てソイルと下層(1層目)との継目部についても,連続打設による無処理のケースとして試験を行った。なお,比較検討のために,ソイルセメント+コンクリート(清掃散水)およびコンクリートの打継面(グリーンカット+敷きモルタル)についても実施した。
表-3 試験施工条件

 

図-7 せん断応力と垂直応力関係図
2.4.3 せん断強度試験結果
図-7にせん断破壊した点におけるせん断応力と垂直応力の関係を示す。図-7より打継目処理方法の違いによるせん断強度の大きさは,(モルタル敷均し)>セメント散布>(レーキング清掃有り)>(清掃・散水)の順となることが確認された。
打継目処理方法を変えた各ケースにおける圧縮強度とせん断強度の関係を表-4に示す。なお圧縮強度は,ケース3より採取したコア(¢125mm×h250)の一軸圧縮強度試験結果である。各ケースの試験ヤードは異なるものの,粒径および配合等の打継目部以外の施工条件は同じである。
圧縮強度とせん断強度の関係では,せん断強度と圧縮強度の比がτ/σ=1/13~1/41と圧縮強度に対してせん断強度が非常に小さな値となっている。これは,摩擦係数(回帰線の傾き)が大きいため全体として純せん断強度が小さな値を示す結果となっている。またモルタル敷均しの摩擦係数は,f=1.9(¢=62°)と,コンクリートの実績が一般にf=1.0~1.2であるとされているのに対し,大きな値を示す結果となった。
表-4 圧縮強度とせん断強度の関係

2.4.4 せん断強度試験のまとめ
ⅰ)打継目の接合状況
打継目処理方法の違いにより,採取したコアの分断・接合状況から最適と考えられる打継目処理方法は,「セメント散布」あるいは「モルタル敷き均し」と考えられる。
ⅱ)せん断強度
せん断強度からみた打継目処理方法であるが,コンクリートと比較すると格段にせん断強度が低下していることから,設計上必要となるせん断強度を把握し,適切な打継目処理方法を決定する必要があると考える。
 
3 まとめ
今回の試験施工は最大粒径緩和に関する試験においては,¢150mm以上の礫を使用したソイルセメントの品質・施工性が確認できた。また打設面処理標準化の試験においては,打継ぎ目処理とせん断強度の関係が初めて明らかとなった。しかしながら,これらの試験結果の実用にあたっては,データ数が少なすぎることと,砂防CSG工法は,現地発生材の土質により性質・品質が大きく左右されるという特徴があることから,さらなる試験の実施,他地区での事例の収集が必要であると思われる。
また,今回の試験施工は全国的にも実施例の少ないものであり,他地区の事例について今回の結果を検討の一部として加え,砂防CSG工法のさらなる活用に利用されることを願い,本試験のまとめとする。
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