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九州技報 第40号 平成18年度九州国土交通研究会「学術賞」受賞作品

別大国道急深部におけるコスト縮減について

国土交通省 九州地方整備局 大分河川国道事務所 調査第二課長 桜井敏郎

国土交通省 九州地方整備局 大分河川国道事務所 調査第二課 秋吉大輔

 
1 はじめに
一般国道10号別大国道は,国際観光都市「別府市」と東九州の中心都市「大分市」を結ぶ重要な道路であり,九州でも有数の交通量が多い(約70,000台/日)箇所である。
当該区間の事業である別大拡幅(別大地区)は,計画延長L=7.0kmの4→6車線拡幅事業であり,
① 都市機能の向上(渋滞緩和)
② 安全で安心な交通環境の確保(防災対策)
③ 広域交流・連携の支援
④ 道路交通環境の改善
⑤ 地域活性化プロジェクトの支援
を目的としている。また,代替路線が高遠道路しかなく,高速道路も霧や積雪での通行規制が多いため,別大国道で事故や越波等による災害が発生し通行止めになると多大な影響を及ぼすことが予想される。当該地区は平成10年度から6車線化へ着手し,平成16年度までにL=7.0kmのうちL=5.2kmを6車線供用し,平成19年度にはさらにL=1.0kmを供用する予定としている。残区間L=0.8kmは急深部と呼ばれる難工事,高コスト区間であるため,全線6車線化に向けて更なるコスト縮減と越波に対する通行車両の安全確保の検討が必要となっている。
本報告は,これまでのコスト縮減へ向けた取り組みと,水理実験による非越波型護岸と現況護岸との越波低減効果比較検証について報告するものである。

図-1 別大国道の位置図
 

図-2 別大国道と高崎山


2 高崎山地区の地形
高崎山は,標高580m山腹勾配は平均35°の急峻な地形を形成しており,沖合についても勾配40°の勾配が深さ60mまで続き,山と海に挟まれた僅かな場所に国道が整備されている。地質は海食性崖錐堆積物で,山側斜面の大規模地滑りの発生は予測されないものの,海底斜面は大規模地震による地滑りの可能性がある。
また,4→6車線化に伴い海側へ約15m張り出すと,地形上,消波ブロックが設置できないため,越波対策が課題の1つとなっていた。

図-3.1 高崎山地区(残区間L=0.8kn)
 

図-3.2 高崎山の勾配状況の地形


3 コスト縮減に向けた取り組み
3.1 護岸構造の決定経緯
H8年度に高崎山付近急深部検討委員会において当初,高崎山地区の地形や地質,海象条件を踏まえ,「鋼管矢板式護岸+グランドアンカー」(図-4)が最有力案となっていたが,当時は兵庫県南部地震規模の大地震に対する照査が行われていなかったため,大規模地震を考慮した設計のやり直しを行っている(図-5)。
しかし,工事費が137億/kmと高コストであるため,仮設杭の利用(仮桟橋杭をグランドアンカーの代わりに控え杭として利用)(図-6)や計画幅員の見直し(W=37m→33m)(図-7)を行いコストを縮減している(H15高崎山地区道路構造物検討委員会最終構造)。

 
図-4 検討会当初案

図-5 大規模地震考慮
 

図-6 鋼矢板式護岸+控え杭
 

 

図-7 幅員構成の見直し
3.2 フレア護岸採用によるコスト縮減
フレア護岸採用にあたっては,当該区間は越波による「特殊通行規制区間(L=4.9km)」に指定されており,波浪時の歩行者及び通行車両の安全性を確保する必要がある。従来型の護岸で計画した場合,越波量を制限するための消波ブロックが設置できないために壁高が高くなり,直壁では路面高が約5m高くなる。そのため,この高低差を解消するために曲面をもった張り出し構造の「非越波型護岸(フレア護岸)」を採用した。(図-8)非越波型護岸を採用する利点として,
① 材料費が減少し,コスト縮減が図れる。
② 天端高さを現道高まで抑えることができる。
③ 護岸を山側へ寄せることができ,海岸傾斜の厳しい高崎山地区では有効。
④ 当該道路拡幅後も車道及びJR車窓からの景観性を損なわない。等があげられる。
フレア形状護岸の採用にあたっては,検討会(H15)で承認を受けたが,新技術(NETIS登録済)であり施工例がないため,既往研究成果を踏まえ,当該海域の海象条件を考慮した水理模型実験により検証することが採用の条件となり,許容越波量を満足する護岸の高さを決定した。
また,同検討会(H15)において最終構造形式を
・一般部…前面フレア型の重力式護岸
・急峻部…前面フレア型の鋼管矢板護岸+控え杭(仮桟橋兼用)としている。

図-8 護岸形状による路面高の違い
3.3 更なるコスト縮減
さらに,急深部の構造形式については,鋼管矢板杭工と仮桟橋工がコストの7割を占めることから,この2点に着目し構造改良を加えることでコスト縮減を図った。具体的には,抑止杭の規模縮小(鋼管矢板を鋼管杭とし,平面的に千鳥配置とし断面効率を向上),杭打設工法の簡素化(砂置換掘削の省略)であり,工事費を98億/kmに縮減した(約28.5%縮減)。また,急深部の構造形式を鋼管杭+土留工+控え杭(仮桟橋兼用)とすることについては,検討会委員に再度承認を得ている(図-9)。

図-9 鋼管杭+土留工+控え杭
 

写真-1 実験状況(急深部フレア)

写真-2 実験状況(急深部現況)


4 水理模型実験
既に実施されているフレア型護岸の風洞実験結果の検証のため,既設護岸の風洞実験(30年確率)を実施し,その効果の比較を行うことを検討委員会にて提案されたため,模型実験を実施した。
4.1 実験概要
水理模型実験の実験波緒元及び許容越波流量(各限界状態時)を表-1に示す。
風速については現地既往最大風速の20m/sまでを対象とした。
表-1 水理実験概要

4.2 実験結果
一部区間でも越波が卓越すると車両通行が不能であることから,比較する現況護岸は,条件の厳しい急峻部の直立消波護岸で代表させるものとし,一般部及び急峻部のフレア型護岸の風洞実験結果と比較した。歩道部・車道部ともに,フレア型護岸(一般部及び急峻部)の越波流量は,風速約20m/s程度までは,現況護岸(直立消波護岸)の越波流量以下である。「車両の走行性」から設定されている許容越波流量(無風)に着目すると,直立消波護岸では満足できないが,フレア型護岸は一般部・急峻部ともに許容値を満足する。総合的に判断すると,フレア型護岸の越波低減機能は現況護岸である直立消波護岸と同等以上を有していると評価できる。

図-10 実験結果
 
5 おわりに
今回,大分河川国道事務所の代表事業である「別大拡幅(別大地区)」の高コスト区間である高崎山急深部について,コスト縮減,新技術の採用(模型実験による現況との比較検証)という取り組みを紹介したが,依然として事業費が高い。
しかし,6車線化の効果が大きく,全線6車線化に対する地元の期待も大きいため,工事施工段階における工夫等により更なるコスト縮減を図り,早期完成を目指したい。
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