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九州技報 第40号 トピックス

新技術活用での開発者・施工者のメリット

九州地方整備局 永野 和博

 

1 はじめに
 新技術活用の経緯は,平成13年に「公共事業における新技術活用促進システム」実施要領を策定し,新技術の情報収集及び提供を目的に合わせて「新技術情報提供システム」(New Technology Information System)(以下「NETIS」という。)に取り組んできた。さらに,平成17年度には,再編強化を図ることから「公共工事等における新技術活用システム」を試行してきた。
 これまでと変わって平成18年7月5日付,国土交通省通達「公共工事等における新技術活用の促進について」(国官技第86号,国官総第237号)は,平成18年8月から新しくスタートした『「公共工事等における技術活用システム」実施要衝について』(以下「新技術活用システム」という。)は,カタログ的なNETIS登録技術を事後評価し,開発者及び施工者にインセンティブを付与することに大きな特徴がある。
 
2 新技術活用の課題
 豊かな国民生活の実現と安全・安心の確保,環境の保全と良好な環境の創出,自立的で個性豊かな地域社会の形成に向けて,すなわち,新技術活用のねらいは,くらしのサイフと直結しているといっても過言ではない。
 公共工事等(直轄の工事と業務をいう。)の課題は,コスト縮減(建設費,維持管理費,長寿命化),品質・安全の確保,環境の保全等,技術力に優れた企業,新技術開発に向けた取り組み等である。新技術活用には,新技術の試行,活用,評価までの道筋が不明確で使い勝手の良い環境づくりが求められている。頑張る開発者は,技術開発し,NETIS登録しても現場での試行,活用実績が少ない。また,頑張ってリスクを負う施工者は,NETIS登録技術を試行,活用してもメリットが少ないかほとんど無いに等しい。


3 新技術活用システムの運用
 前述の課題に対処する「新技術活用システム」の本格的な運用は,優れた新技術を峻別するため新たに事後評価を実施し,新たに「NETIS(評価情報)」に区分して事後評価結果を中心として公表し,幅広く活用促進することにある。
1)NETISの再構築及び事後評価の実施
 これまで,技術事務所等で受付けたNETIS(カタログ的な情報)を「NETIS(申請情報)」とした。また,地方整備局新技術活用評価会議((以下「評価会議」という。)での事前審査(施行の可否)の結果と事後評価(試行,活用効果)の結果からなる「NETIS(評価情報)」に再構築し,新技術の試行,活用を明確にした。 九州地整は,平成18年7月20日に「九州地方整備局新技術活用評価会議」を設置し,12月までに事前審査等を3回開催した。
 なお,NETIS登録技術の品質を向上させるための掲載期間として「NETIS(申請情報)」は,原則3年とし,「NETIS(評価情報)」は,原則5年とする。

写真-1 九州地方整備局 新技術活用評価会議
2)新技術活用の体系化
 ① 「試行申請型」は,NETIS申請者の試行申請に基づき,事前審査の結果を踏まえて活用の前に実施するものをいう。事前審査の結果は,NETIS(評価情報)に掲載し,公表する。
 ② 「施工者希望型」(総合評価方式における技術提案の場合)は,総合評価方式における技術提案に基づき施工者がNETIS登録技術の活用等の提案を行うことをいう。
 ③ 「施工者希望型」(請負契約締結後提案の場合)は,請負契約締結後における技術提案申請に基づき施工者が「施工計画書」に反映し,NETIS登録技術の活用等をいう。
 ④ 「発注者指定型」は,NETIS登録技術を対象に適用範囲と活用効果等の確認または「有用な新技術」の活用促進を目的に発注者が指定することをいう。
 ⑤ 「フィールド提供型」は,具体の現場を想定して求める技術要件を明確にした上で,広く技術開発者から技術提案の募集を行い,NETIS登録技術について審査・選考し,工事等の発注にあたって発注者が指定,試行することをいう。
・「試行」とは,技術の成立性等申請情報の妥当性を確認するため新技術を直轄工事等において用いることをいう。
・「活用」とは,新技術を直轄工事等において用いることをいう。ただし,「試行」を除く。
3)事後評価
 「試行」,「活用」後は,調査表に基づき必ず事後評価を実施(評価会議)し,事後評価を受けた新技術は「NETIS(評価情報)」に掲載し,公表する。平成18年度中には,事後評価された新技術がお目見えする予定である。
4)「有用な新技術」の活用促進
 技術の優位性が高く安定性が確認されている新技術については,「設計比較対象技術」として概略設計,予備設計,詳細設計において設計比較の対象を位置づけた。
 また,技術の優位性は高いとの評価ではあるものの,実績が少なく安定性が確認されていない新技術は,「少実績優良技術」として技術の安定性が確認されるまで,より広い範囲での「試行」を促進する。産学官で構成する評価会議では,優れた新技術について活用促進を図る目的で「活用促進技術」として指定し,申請者へ通知する。発注者は,「発注者指定型」等で計画的に「活用促進技術」等の活用促進を図る。
 なお,「活用促進技術」については,指定から概ね3年程度のフォローアップを実施する。産学官及び研究機閑で構成する国土交通省新技術活用システム検討会議(国土交通省)(以下「システム検討会議」という。)では,技術の水準を一層高めるため画期的な新技術について「推奨技術」,「推奨技術候補」として指定し,申請者へ通知する。
5)説明会等の開催
 ① 発注者への説明会は,事務所,現場への周知を図る目的で新技術担当者会議を平成18年8月23日・24日の両日に実施した。これを受けて,各事務所では,本格的な運用の周知徹底のための所内説明会等を実施している。
 ② 技術開発者及び施工者への「新技術活用システム説明会」は,平成18年10月25日に福岡市で開催し,約300名の方の出席があり活発な質問等が出された。
 ③ 九州各県,政令都市とは,前期の説明会後,新技術活用の取り組み状況等について意見交換会を行い,今後も新技術の活用を促進するため引き続き連携して実施することを確認した。

写真-2 新技術活用システム説明会


4 開発者,施工者の循環型メリット
1)開発者のメリット
 技術の優位性が高く安定性が確認されているNETIS登録技術については,「設計比較対象技術」として業務発注に位置づける。また,技術の優位性は高いが,実績が少なく技術の安定性が確認されていない新技術については,「少実績優良技術」として位置づけ,技術の安定性が確認されるまでの間,活用等に努める。
2)施工者のメリット
 入口として直轄工事の発注は,総合評価方式の場合,NETIS登録技術の「有用な新技術」等での技術提案には,新たに加算点を付与する。出口では,総合評価方式での技術提案及び工事請負契約締結後の「施工者希望型」で実施したNETIS登録技術については,新たに工事成績評定に2点を加点する。また,活用効果調査結果が優れている時は,さらに2点を加点し,最大4点とする。特に,「有用な新技術」を活用した場合と有用な新技術以外(活用効果調査結果が優れている。)を活用した場合は,新規に4点を加点する。

図-2 開発者・施工者の循環型メリット概要図
3)発注者のメリット
 公共事業費は,ピーク時と比較すれば約半分程度になっている状況下である。くらしの中での社会資本整備においてのサービス,管理水準を維持するための方策として「コスト構造改革」がある。その中の一つが新技術活用でのコスト縮減にある。公共工事等の発注においては,建設費,維持管理費,長寿命化を目標に新技術を含めた執行が重要となる。平成17年度に新技術を使用した工事件数での割合(活用率)は,全国で約19%,九州で約20%である。平成19年度の活用率は,30%を目標として掲げている。今後整備局等は,計画的な活用管理と活用状況のフォローアップの中で,新技術の活用状況等を適宜把握し,新技術の件数,活用率等を発注事務所単位で把握する。また、積極的に事務所が活用促進できる環境整備を進める。
 
5 おわりに
 平成15年から「国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム」に取り組んでいる総合コスト縮減では,視点の一つとして新技術活用の促進を推進している。これからの新しい建設生産システムにおいては,NETIS登録技術の活用が入口・出口となって機能,定着し,本格的な循環型として動き始める。今後,NETIS登録技術は,地方公共団体等の公共工事等においても活用促進が図られるよう情報の提供継続と意見交換会等を進
める。
 さらに,NETIS登録技術の活用促進に向けては,創意工夫にあふれた開発者・施工者・発注者の取り組みが重要となる。新技術は,現場で施工すること,施工されてこそ新技術といえる。

図-3 開発者・施工者へのインセンティブ
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