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球磨川自然再生事業(遙拝)の完成

~八の字の形状復元と瀬の再生~


山 本 恭 裕


キーワード:瀬の再生、鮎、八の字の形状復元、加藤清正、八代の石工達、八の字フェスタ

1.はじめに
球磨川は、球磨郡の銚子笠を源として人吉・球磨盆地をほぼ西に向かって貫流しさらに流向を北に転じながら山間狭窄部を流下し、八代平野に出て不知火海(八代海)に注ぐ、一級河川である。また、日本三急流で名高い舟下りや、尺アユと呼ばれる大型のアユが特に有名であり、全国各地から釣り客や観光客が訪れる観光資源の川である。
球磨川下流部では、1965(昭和40)年7 月の大洪水を契機として、昭和40 年代に始まった本格的な河川改修や昭和30 年代の終わりから平成の初め頃行われていた砂利採取、出水等の影響により河床が低下し、その結果、球磨川下流域の河道内では多くの瀬が減少した。特に、河口から9㎞上流に位置する遙拝堰直下の瀬は、写真- 1 のとおり昭和50年代に比べると瀬が消失しつつある状況である。
また、球磨川漁協における球磨川堰でのアユのすくい上げ尾数は、平成に入ると大幅に落ち込んだ(図- 1)。
このため、かつて良好な瀬があったとされ、河口に最も近い遙拝堰下流の瀬において、アユの漁獲量が大幅に減少する以前の昭和50 年代の瀬の面積である、約20,000㎡程度の再現を目指すこととした。




2.加藤清正由来の「八字堰」
現在の遙拝堰は昭和43 年に可動堰に改築しており、以前の旧遙拝堰(八字堰)は写真- 2 のとおり漢字の八の字の形状をした斜め堰であった。慶長13 年(1608 年)に加藤清正によって築造されたものである。下流は白波が立つ状況が確認でき、多様な水の流れを形成していたことから、当時は遙拝の瀬とも呼ばれていた。この八の字の形状により良好な瀬が存在していたと思料された。



3.球磨川下流域デザイン検討委員会
遙拝堰下流の瀬の再生計画にあたっては、河川工学、魚類、景観に関する学識者や地域の歴史に関する有識者及び行政機関で構成する「球磨川下流域環境デザイン検討委員会」を平成25 年1 月に設置し、平成27 年3 月まで計8 回にわたり議論を重ねた。本委員会では、遙拝堰下流の瀬の再生の目標値の設定や、再生するための整備方法、景観に配慮したデザイン等を詳細に検討した。
また、熊本高等専門学校の協力を得て八代キャンパスの敷地にて、八の字の河床整正の高さや位置、洪水時に下流に与える影響を確認するために水理模型実験を実施した。


4.旧遙拝堰(八字堰)の形状の復元
八の字堰の構造については、当時の旧遙拝堰(八字堰)の絵図(図- 2)や昭和8 年の測量図(図- 3)はあったものの、詳細な構造が示されたものがほとんど残っていなかったことから、加藤清正が同年代に築造した斜め堰の構造を参考に復元することとし、菊池川の白石堰、緑川の鵜ノ瀬堰の構造や材料に関する資料・文献を参考にした。図- 4 に示すように、巨石による石組、内部には岩砕による群体構造とし、一体として強固に仕上げ、上下流面には敷石として環境等に配慮した根固ブロックを配置した。その根固ブロックには球磨川中流部において、治水目的で河道掘削した玉石を有効活用し、表面に植石することで、アユの餌場環境を作り出すこととし、球磨川の流れにも流出しない十分な重量と連結を持たせた。



遙拝堰下流における八の字堰の形状の復元による瀬の再生イメージを図- 5 のとおりとした。
八の字下流側の流心付近は、流速が早くなるため、早瀬、平瀬、淵が連続して形成され、アユの産卵環境に適した河床が形成される。



5.「八の字堰」の復元
八の字堰は、図- 6 に示すとおり平成27 年度より始まった「球磨川・新萩原橋周辺地区かわまちづくり」の事業として、アユをはじめとする魚類等の良好な生息環境を保全・再生するための周辺の河床を安定させる(河川法上の分類によるところの)落差工を4 年の歳月を費やし、平成31年3 月に完成した(写真- 3)。



巨石の据え付けにあたっては、球磨川で発生する石材を用い、石が球磨川の速い流れに耐えられるよう、石をがっちりかみ合わせるために、石の形に合わせ八代が誇る石工達の技術により再現することができた。また、流れを受ける面は3t 以上とし、中央部の流頭部には最大で13t の巨石を配置した(写真- 4)。



6.整備による変化
瀬の再生については、「八の字」の形状復元により、遙拝堰下流には瀬が形成され(写真- 5、6、7)、アユの生息環境については、アユの食み跡も多数確認されており、アユ等の魚類の良好な生息環境が形成されている(図- 7)





7.八の字フェスタの開催
八の字堰周辺は、水辺とまちが一体となって楽しめる空間が実現し、コンサート、バーベキュー、カヌーなど、球磨川の新たな楽しみ方・過ごし方が感じていただける空間にしていきたいと考えており、当日行れていた九州国際スリーデーマーチ2019 とのコラボで、今回「八の字フェスタ」を企画、その一部として「八の字堰完成祝賀式典」が開催され、「八の堰完成祝賀式典」については令和元年5 月12 日球磨川遙拝堰下流において、地元国会議員、熊本県知事(代理出席)、熊本県議会議員、八代市長、八代市議会議員、球磨川下流域環境デザイン検討委員会、球磨川・新萩原橋周辺地区かわまちづくり実行委員会、地元関係者が参列する祝賀式典を八の字フェスタ実行委員会(委員長:熊本高等専門学校准教授上久保祐志)の主催により執り行われた。
八の字フェスタ実行委員長の開会挨拶にはじまり、八代市長、水管理・国土保全局長の挨拶、来賓の方々から祝辞をいただいた後に、八代河川国道事務所長による八の字堰の事業映像を紹介、引き続きテント内において、くまモンも参加して来賓の方々と地元保育園児による記念碑の除幕及びくす玉(写真- 8)、餅まき、テント外にて記念撮影の「水辺で乾杯」(写真- 9)、アユの稚魚の放流を行った。



なお、除幕の記念碑は、球磨川の河道掘削から採取した石を使用している。
その後、引き続き八の字フェスタを実施し、テント内においては、くま川祭りの踊りや史談会会長による「八の字堰歴史談話」、球磨川のせせらぎを聴きながらのコンサートが行われた。また、テント外においてもバーベキューのおもてなしや八の字堰展示ブース、八の字堰の生き物ブースなどが行われ、川の中では、カヌー体験やウォーターチューブ体験を実施し、総勢約1,000 人が訪れて楽しんだ。


8.おわりに
八の字堰を含む遙拝堰下流左岸の河川空間は、八代市が「球磨川・新萩原橋周辺地区かわまちづくり」計画に登録し、地域住民、関係団体、行政などで構成する「かわまちづくり実行委員会」において、地域と行政が連携した「かわまちづくり」を進めているところである。
国交省においても、新たな賑わいの拠点となるよう多目的広場などの空間整備(図- 8)を八代市とともに進めていくとともに、市内外の皆様から関心を持っていただけるよう、コンテンツや話題づくりについても引き続き取り組んでいきたいと考えている。
これらの取組が、八代市の新たな観光の名所、水遊びやカヌー、眺望、車窓、ウォーキングなどのスポットとして、市民の皆さんが気軽に訪れる河川空間になることを期待している。
最後に、八の字フェスタを開催するにあたり、地域の皆様をはじめ、かわまちづくり実行委員会関係者等の多大なりご理解とご協力の賜であり、感謝申し上げる。




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