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熊本天草幹線道路「第二天草瀬戸大橋(仮称)」の橋梁設計について


林 田 祐 一


キーワード:本渡道路、第二天草瀬戸大橋、橋梁設計

1.はじめに
熊本天草幹線道路は、熊本市から天草市に至る延長約70㎞の地域高規格道路であり、熊本市と県内主要都市を90 分で結ぶ構想(90 分構想)の実現に必要となる主要幹線道路である。この路線の整備によって、熊本・天草間の交流の強化や代替路線の確保、交通渋滞の解消など様々な効果が図られるため、早期の整備、開通について県民に強く望まれている。
「本渡道路」(図- 1 左の終点側)は、熊本天草幹線道路の一環として天草上島と天草下島を結ぶ、全体延長約4.0㎞の第1 種第3 級、設計速度60㎞/h の自動車専用道路である。現在は終点側の約1.3㎞区間を1 期区間として整備を行っており、2 つの海上を渡ることから、大部分が橋梁(「第二天草瀬戸大橋(仮称)」橋長1148m)となっている。
本稿では、本渡道路の概要や第二天草瀬戸大橋(仮称「以下省略」)の橋梁設計について紹介する。



2.本渡道路の概要
現在、天草上島と天草下島を自動車で渡ることができるのは、天草瀬戸大橋(昭和48 年架設、橋長703m)だけであり、この1 橋に天草市民の交通と、熊本市方面からの物流や観光による交通が依存しているため、慢性的な交通渋滞が発生している。特に朝夕のピーク時には、この橋梁を通る国道324 号において最大約2.6㎞の渋滞が発生している。
また、天草地域は台風の通過や集中豪雨が比較的多い地域であるが、天草瀬戸大橋の代替路がなく、リダンダンシー確保の点でも課題が生じている。


この状況に対し、本県では課題の解決を図るため、平成21 年度から熊本天草幹線道路の一部として本渡道路の設計に着手した。
ルートの検討に当たっては、オープンな議論と情報の透明性を重視し、より良い計画とするために学識経験者(柿本竜治 熊本大学准教授(当時))及び地域代表、各種団体代表からなる「熊本天草幹線道路(本渡道路(仮称))検討委員会」を設置し検討を行った。検討にあたっては住民アンケートを実施し、最終的に委員会において提言書という形で意見の集約を行った。委員会は計4回開催し、その内容については、チラシや県のホームページ(HP)で広く情報を公開している。
ルート帯の決定に当たっては、この提言書の検討項目である「求められる機能」、「地域特性への配慮」、「社会的視点(事業性)」を尊重し、いずれも優位となる図- 3 に示すB ルート帯を選定した。


この決定したルート帯のうち、早期効果が見込める旧本渡市街側の約1.3㎞区間を1 期区間として、平成25 年1 月に都市計画決定を行い、平成25 年度から補助事業として事業化し、整備を行っている。


3.橋梁設計の概要
事業化したルートは、本渡瀬戸と本渡港の2つの航路を渡り、住宅等の建物が密集する地域を通る。本ルートの橋梁計画においては、本路線の整備によって、地域が分断されないよう航路を渡る海上部だけでなく、陸上部においても橋梁構造を採用したため、第二天草瀬戸大橋は全長約1.1㎞の連続高架橋となった。本橋の設計にあたっては整備箇所や横断物件などから「起点アプローチ部(①グループ)」、「本渡港航路部(②グループ)」、「アプローチ部(③グループ)」、「本渡瀬戸航路部(④グループ)」、「終点側アプローチ部(⑤グループ)」、「上部工拡幅部(⑥グループ)」の6つに分けて検討を行った。なお、陸上部においては、国道、県道、市道など13 路線を横断するため、橋梁形式の選定、特に橋脚の設置位置については、十分な検討が必要となった。



(1)橋台の位置
本橋の橋台位置については、地域の分断性を可能な限り緩和し、かつ維持管理性に配慮したうえで、極力橋梁区間を延伸できる位置に計画した。A1 橋台については、当該区域に歩道設置の計画があり、それをコントロールポイントとして、位置の決定を行った。また、A2 橋台においては、横断する市道をコントロールポイントとした。

(2)橋梁形式1次選定
1)支間割の検討
支間割は下記の方針により検討を行った。
・コントロール条件を避けた位置で計画。
・橋台位置および掛違い橋脚(橋種が変わる箇所)位置から求まる橋長に対して等支間割を基本として計画。
・中間橋脚は、橋脚設置可能範囲(図- 5 緑および紫の範囲)に設置。設置不可となる場合は、支間バランスを考慮して位置を調整。
具体的な決定手順としては、この方針に基づき、グループごとに等支間割を基準として橋脚を配置した案を作成し、それが設置可能範囲に収まるか確認を行った。この際、明らかに経済性が劣る案については除外を行った。また、海上部においては、環境への影響を考慮し、航路や本渡干潟を回避した案、橋脚を設置しない案についても確認を行った。
これにより最終的に橋脚の配置が可能となる案に対して、その支間長に応じた上部工形式の選定を行った。

2)1次選定
支間割で抽出された上部工形式の案に対して「経済性」、「構造性」、「施工性」、「維持管理性」、「環境・景観性」の5 項目により評価を行い、総合評価で優位となる上位3 種を2 次選定案として抽出を行った(表- 1 参照)。環境・景観性については、本橋梁の設計において策定した「景観整備方針」をもとに、評価を行った。


3)景観整備方針について
本橋が、既設の天草瀬戸大橋と並び、新たな地域のシンボルとなること踏まえ、設計においては景観整備方針を策定した。この方針は、本橋梁のデザインについて方向性を示すものであり、天草市のまちづくり方針や景観計画など上位計画を踏まえた形で策定を行った(図- 6 参照)。
この方針についてはオープンハウスの住民アンケート結果からも、地域の方々の考えと大きな乖離がないことを確認している。


(3)橋梁形式2次選定
1)オープンハウス
2 次選定においては、地域の方々や沿道住民からの意見を踏まえたうえで選定を行っている。意見を聴取する場としてオープンハウスを開催し、事業計画や橋梁計画に対する要望、意見についてアンケート調査を行った。
オープンハウスは天草市民センター、JA直売天草、苓北町役場の3 箇所で、それぞれ3 日間開催した。開催にあたっては事前に記者発表を行い、HP や市政だより、地元ケーブルテレビなどで広く周知を行ったことで、3 箇所、計9 日間で約1200 人の来場があり、アンケートは247 枚の回収ができた。
アンケートの結果、天草市の方々にとっては、街を囲む海と山の風景に「天草らしさ」を感じていることが分かった。また、本橋に対しては、海や山といった天草の特徴的な自然風景と調和しつつ、地域の新たなシンボルとしての存在感や印象強さを求めていることが分かった。一方、本橋の沿道住民からは大規模な構造物による圧迫感や風切音、ヘッドライトの光漏れ等の住環境への配慮についても要望があった。

2)最終形式案の選定
抽出されたそれぞれの案に対して、設計計算を行い、整備に必要となる事業費について精度を向上させた。そのうえで総合評価を行うとともに、オープンハウスで聴取した地域の方々の意見を踏まえ、表- 2 のとおり各グループの上部工形式を決定した。
陸上部となる①、⑤、⑥グループは、極力支間長を短くし、コスト縮減を図るとともに、桁高が小さく圧迫感の低減が図られるPC 中空床版橋を採用した。
②、③グループは、材片数を低減させ、施工の効率化、省力化を図り、桁裏の煩雑感を低減させた鋼細幅箱桁橋を採用した。
本橋梁のメインとなる④グループは、走行景観における海への眺望性を確保するため、橋上構造物を必要としない鋼床版箱桁橋を選定した。



なお、③、⑥グループにおいては、詳細設計での精査の結果、下記のとおり変更を行った。
・③グループ
 当該区間の径間数を増やし、④グループ側の径間を縮小することで、コスト縮減が図れることが判明したため、「鋼3 径間」から「鋼4 径間」とした。
・⑥グループ
 A2 橋台でOFF ランプと本線との路面高低差が1.5m となり、一体の上部工として施工が困難であるため、P27 ~ A2 区間は、OFF ランプ部と本線部を分離し、併せて「PC6 径間連続中空床版橋」を「PC5 径間連続中空床版橋+PC 単純中空床版橋」とした。



(4)橋梁のデザイン決定
具体的なデザイン検討にあたっては、本県で実施している景観アドバイザー制度を活用し、景観アドバイザー(星野裕司 熊本大学准教授)からの助言を頂きながら、景観整備方針と整合性を図り、設計を行った。橋梁デザインは第2 回オープンハウスにて、事業進捗と併せて広く公開し、地域の方々との情報共有、理解促進を図った。

1)断面形状の工夫
上部工の断面形状については、橋梁全体の統一性や連続性を確保し、圧迫感の軽減を図るため斜ウェブを採用し、シャープでコンパクトな印象を演出した。


2)掛違い部の擦り付け処理
グループごとに上部工形式を選定しているため、隣接箇所では断面形状の差による不連続が生じる。本橋梁では、縦断方向及び水平方向の擦り付け処理を施すことで連続性を確保した。


3)橋脚構造の統一化
本橋梁は27 基の橋脚のうち、一体的に見られるP1 ~ 25 橋脚においては、上部工の斜ウェブと角度を合わせ、一体的に見える「バチ型形状」を採用し、上部工との一体感を確保するとともに煩雑さや圧迫感を軽減させた。


4)付属施設デザイン
①、⑤、⑥グループは、周囲に住宅があるため、騒音や夜間のヘッドライト、橋面水飛散などを考慮し、半壁式鋼製防護柵を採用した。また、②~④グループは、走行中の眺望性が優れる鋼製防護柵を採用した。なお、半壁式防護柵と鋼製防護柵の切り替え部については、擦り付け処理を行い連続性の確保を行った。
また、国道や県道などの交差部に設置する落下物防止フェンスは、透過性に優れた格子タイプを採用し、端部をテーパ処理で擦り付けすることで、連続性を確保した。
道路照明については、ポール型を採用し、南側(山側)へ配置することで、海への眺望を確保し、夜間における外部からの景観において、光のラインが浮かび上がるよう配慮した。


5)鋼桁部の色彩
②~④グループの鋼橋部においては、周辺風景と調和がとれ、コンクリートとも連続性が図れる色(5B7.0/2.0)を採用した。検討にあたっては、塗装板のサンプルを用い、現地塗板確認を実施し、現場との調和について確認も行った。



4.耐風安定性の検討
第二天草瀬戸大橋の④グループについては、中央径間が100m の鋼床版箱桁であるため、たわみやすく、かつ、比較的風速が速い位置にあることから、渦励振や発散振動が発生する可能性がある。このため、本橋梁の設計においては耐風安定性について検討を行った。
照査は「道路橋耐風設計便覧(平成19 年12 月)」に基づき実施し、照査の結果、「ギャロッピング(鉛直たわみ発散振動)」及び「鉛直たわみ渦励振」に対して、風洞実験による安定性の検証が必要となった。
1)風洞実験
風洞実験は、④グループの代表断面(最大支間中央部)について、二次元剛体模型を作製し、バネ支持試験により実施した。実験は風向(正風、逆風)、迎角(- 3°、0°、3°)、水道管設置の有無の組合せによる計12 ケースで実験を行った。



実験の結果、下記の事項が確認された。
・渦励振、ギャロッピングとも対策が必要。
・水道管設置の有無による影響は殆ど無い。
・ギャロッピングは正風+ 3°渦励振は逆風+ 3°が最も厳しい。
以上から、耐風対策として検討を行った結果、耐風性能を満足した2 案(表- 3)に対して、「経済性」「景観性」での比較を行い「対策2」を採用した。


なお、④グループと同じ鋼橋である②、③グループについては、照査の結果、動的耐風設計は不要となっている。


5.おわりに
本橋は、平成29 年度末から橋脚工事に着手しており、今年度からは上部工(③グループ)の施工にも入る予定である。この橋梁が完成後、地域の新しいシンボルとなり、住民の方々に長く親しまれる橋になるものと信じ、今後も事業進捗を着実に図る所存である。
最後に、本論の作成にあたっては、本橋の設計に携われた株式会社オリエンタルコンサルタントに、資料提供をいただいた。ここに記し心から感謝申しあげる。

参考文献
[1]杉山達彦、小嶋洋範、石倉 昇、井村優花
熊本天草幹線「本渡道路」の橋梁設計における景観配慮の取り組み、土木学会 景観・デザイン研究講演集No.13、2017.12



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