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神嶽かんたけ川河川改修とあわせた旦過たんが地区の再整備の取り組み


石 川 知 弘


キーワード:旦過市場、土地区画整理事業、立体換地

1.はじめに
旦過市場は、小倉駅から南側へ商店街を経由して徒歩10 分程度の場所にあり、小倉都心部の重要な商業拠点として、長年市民に親しまれ、近年では昭和レトロな雰囲気が観光客に人気の市場となっている。
一方、市場に隣接した神嶽川(二級河川)からの浸水被害や密集した木造建築物など、防災・防火面で課題を抱えている。



2.神嶽川(旦過地区)の浸水被害
旦過市場は、建物の一部が神嶽川に張り出しており、河川が未改修で平成21 年、22 年の豪雨では、神嶽川が溢水し2 年連続で浸水被害が発生した。



3.河川改修と市場再整備
神嶽川(旦過地区)の治水安全度向上のために は、川幅の拡幅等が必要となるが、仮に河川改修だけを実施した場合、市場のメイン通りを失い、市の重要な商業資産である旦過市場の大半が消失することから、河川改修とあわせた旦過地区の再整備が不可欠となる(図- 1)。


(1)河川改修の概要
■延長:約200m
■内容:①河川断面の拡大
      ・河川拡幅(現況約19m ⇒約25m)
      ・河道掘削(約2.0m)
     ②護岸の嵩上げ(約0.8m)
     ③老朽化護岸の整備



4.まちづくり基本計画の策定
神嶽川の改修とあわせて旦過市場の課題を解決するため、平成24 年から市の支援のもと、市場関係者を中心とした組織を設立し、約4 年間で全40 回に及ぶ検討を重ね、「旦過地区まちづくり基本計画」(以下「基本計画」という。)として、平成28 年6 月に策定した。

(1)基本計画の概要
基本計画では、工事中の仮設営業の影響を最小限に抑えるため、地区内で順次移転しながら整備を進める地区内ローリング案(図- 3)を採用した。また、全体の工事期間の短縮のために、建物は低層計画としている(図- 4)。



(2)基本計画実施方針の策定
基本計画の内容について、土地・建物所有者を含む全ての市場関係者(約190 名)を対象とした個別意向調査を実施し、その結果を踏まえながら、検討を進め、「今後の実施方針」(以下「実施方針」という。)を定めた。
再整備(ハード整備)手法の方向性としては、権利者のさまざまな意向(所有・売却など)に柔軟に対応するため、基盤整備(土地)については、土地区画整理事業を候補とした。
そして、再整備後の商業面積を最大限確保するため、土地の権利を建物権利へ立体的に換地する立体換地制度(土地区画整理法93 条)を活用することとした(図- 5)。


また、建物整備は、権利形態が類似している地区ごとに合意形成を図り整備することとした。
一方、地区全体のまちづくり(ソフト対策)手法の方向性としては、営業者から不安の声があがった「市場の雰囲気づくり」「工事中の集客対策」、廃業する老舗の“ のれん” を残す「事業承継」の仕組み、新規出店の「営業ルール」などの検討を進めることとした。

(3)事業化に向けた検討組織の設立
実施方針で示した方向性の具体的な検討と早期の事業化を推進する準備組織として、平成29 年7 月に、2 つの組織を設立した(図- 6)。土地区画整理事業の準備組合に相当する「旦過地区土地建物委員会」は、権利者約130 名のうち約8 割の賛同を得て設立し、ハード整備の検討を進めることとした。また、営業者が主体の「新市場管理運営委員会」は、工事中の集客などソフト対策の検討を進めることとした。



5.ハード整備の検討成果
(1)土地区画整理事業「事業計画(案)」の概要
「旦過地区土地建物委員会」では、整備手法や建物整備パターンなどの検討を行い「事業計画(案)」を策定した(図- 7、8)。



立体換地建築物を含む全体事業費は約36 億円を見込んでおり、地区別の整備手法として、A 地区では立体換地制度を活用し、土地は共有、建物は区分所有による立体換地建築物の整備を行う。この建物には、市場の機能維持や魅力向上に必要な駐車場と商業床を確保するため、換地とは別に売却できる保留床を設置する。また、建物の一部が河川上に張り出しているエリア(BC 地区)は、保留地等を新たに取得した上で、建物は権利者による共同建替え、DE 地区は、平面換地し、権利者による共同建替えを想定している。

(2)個別負担モデルケースの算出
事業計画の検討を進めるなかで、権利者に事業内容をより理解していただくために、地区別に標準的なモデル店舗(面積)を設定し、建物の整備パターン等も検討した上で、個人の概算負担額等について、標準的なモデルケースを算出した。

(3)個別意向調査の実施
権利者(約130 名)を対象として「事業計画( 案)」や「自己負担モデルケース」を個別に説明しながら意向を確認したところ、8 割以上の権利者から前向きな理解を得た。一方で、再整備後の営業面積が大幅に減少するため、狭小な店舗の面積を確保する方策を検討するべきという意見があった。


6.ソフト対策の検討成果
「新市場管理運営委員会」では、再整備に向けた商業戦略の検討を行い、「新たな機能・施設のアイデア」や「新たな雰囲気づくり方針」、「工事中の集客対策」などを検討し、市場の店主に第三者事業承継を周知するパンフレットを取りまとめた。また、市場全体を計画的に運営する組織(管理運営会社)の必要性について検討した。当該組織が保留床(商業床)を取得し運用することで市場の経費負担を軽減することや、市場全体の店舗配置、業種構成を一括して手掛けることにより市場の魅力を高めることなどが期待できるため、今後、土地区画整理事業の事業化にあわせて、管理運営会社を設立する必要性が見えてきた。


7.これらの検討によって明らかになった事業化に向けた課題
(1)立体換地制度の困難性
商業面積確保に必要な立体換地制度の適用について、立体換地制度は全国的に事例が少なく、民間ノウハウが無いため、国や県、及び関係機関との連携が必要である。

(2)事業協力者の参入見込み
事業協力者(ゼネコン等の民間施行事業者)に対して、再整備事業への参入可能性についてヒアリングを実施した結果、旦過地区は関係者数が多く複雑で、事業規模も小さいことから事業参入は困難であるとの見解を得た。


8.今後の方向性について
上記の課題があるため、組合施行による土地区画整理事業では事業化が困難となるおそれがある。そこで旦過地区の再整備は、市と地元で役割分担のもと、基盤整備は市施行による土地区画整理事業、建物整備及び管理運営は地元が実施することで事業を推進する(図- 9、図- 10)。
今後の予定としては、市施行に必要な手続きとなる公共事業評価や都市計画決定など土地区画整理事業の事業化に向けた準備を進めていく。また、地元では、建物の基本設計や、管理運営会社の設立準備を進め、平成32 年度の事業着手を目指す。




9.おわりに
旦過地区の再整備においては、全国的に事例が少ない立体換地制度をいかにして運用するかという点が重要である。
国や県、及び関係機関と緊密に協議を重ねながら、より効率的な運用方法について検討している。
今後は、市施行による土地区画整理事業となるため、確実に事業を進めなければならない。安全で安心して買い物ができる旦過市場の早期実現を目指して、引き続き、地元の方、関係者の皆様と一緒になって、事業化を進めてまいりたい。


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