五ケ山ごかやまダム建設事業におけるICT技術の活用について


上 本 耕 輔


キーワード:那珂川なかがわ総合開発事業、重力式コンクリートダム、ICT、品質管理

1.はじめに
五ケ山ダムは、その源を福岡県と佐賀県にまたがる脊振山せふりさんに発し博多湾に注ぐ流路延長約35㎞、流域面積約124㎞2の二級河川である那珂川の上流部(河口から約27㎞地点)に位置する重力式コンクリートダムである(図- 1)。


流域は福岡県と佐賀県の2 県にまたがっており、福岡市、春日市、那珂川市、佐賀県吉野ヶ里よしのがり町の3 市1 町を流れ、下流には西日本屈指の歓楽街である博多中洲を抱えている。
この那珂川水系には,現在試験湛水中の当ダムの他に、多目的ダムの南畑みなみはたダム(当ダム2㎞下流)と水道専用の脊振ダム(当ダム5㎞上流)の2 つのダムがある(図- 2)。



2.ダム建設事業概要
五ケ山ダムのある、福岡都市圏では、過去に幾度も渇水の被害にあっている。特に昭和53 年の記録的な少雨の影響から、給水制限が287 日に及ぶこととなり、他県自治体からの応援給水、災害要請に基づく自衛隊の給水活動等の緊急措置が執られた。この渇水を期に、昭和54 年度から予備調査を開始し、昭和63 年度事業採択を受け、平成24 年度にダム本体工事に着手し、試験湛水を平成28 年10 月に開始している。
現在の貯水状況は、平成30 年12 月1 日現在で、貯水量約3,200 万m3となっている(写真- 1)。



3.生産性向上及び品質管理向上の取り組み
五ケ山ダム堤体建設工事においては、ICT 技術や3 次元モデルを活用したCIM 等の導入により様々な生産性向上、品質確保等の取り組みを行った。

①着工前測量に地上3D レーザー計測を導入
地上3D レーザー計測とは、地上型レーザースキャナを用い、スキャナより視認可能な地形及び地物を読み取り、三次元座標を取得する方法である(写真- 2、図- 3)。
レーザースキャナから照射したレーザーパルスにより、大量の点データを迅速に取得することが可能となり、現況測量を伴うすべての工種で活用することが可能となった。多くのデータを必要とする地形測量では、従来の測量であれば直接測量により1 点ずつ座標を求めていたものが、3D レーザースキャナを使用することで、圧倒的な効率化を図ることができた。



②土捨場法面整形時の3D-MC(Machine Guidance) 油圧ショベル導入①着工前測量に地上3D レーザー計測を導入
土捨場の法面は、景観設計により複雑な形状の設計であったため、丁張が不要となる3D-MC 油圧ショベルによる法面整形を導入した。3 次元設計データを、RTK - GNSS測位法によって測定された重機の位置情報とリアルタイムに照合させることで、油圧ショベルを所定の位置まで誘導することができ、設計法面の切り出し位置や法面に対する位置を、運転席の専用コンピュータのモニタ画面に表示できるようにした(図- 4)。これにより従来、種々の工程を踏んで行われた作業(測量・丁張設置など)を省力化し、かつより高い精度で施工することができた。


③ICT建設機械を用いたRCDコンクリートの品質管理
情報化施工で用いられる、RTK-GNSS測位法を採用し、振動ローラの走行軌跡を計測し、RCD コンクリート全体の転圧回数の管理を行った。転圧状況は運転席のPCモニタ上において、既定の密度に必要な所定の転圧回数に対する実転圧回数を段階的に色分けして表示した(図- 5)。オペレータが操作室内のモニタを確認しながら運転することにより、過転圧や転圧不足を防止した。現場では複数台の振動ローラが稼働しており、無線LANを用いて各々の振動ローラ転圧データ(転圧エリア及び回数)を共有化し、転圧データを合成して管理した(図- 6、写真- 3)




④-堤頂部での3D模型・3Dモデルの活用
取水設備張出部や地覆高欄部といった堤頂部において、3D モデルを構築することで、複雑な構造を可視化し、設計及び施工方法を見直した。
当ダムの取水設備は、ダム工事としては前例の少ない張り出し長さを持つスラブ状構造物である。3D-CAD で作成した取水設備の3D モデルのCAD データを、CJP 方式3D プリンタにて、積層ピッチ0.1㎜にて3D 模型を作成した(写真- 4)。3 次元的に視覚化したことで、当初仮設計画の問題点が認識でき、工程の短縮と施工性の向上を目的に、スラブの外面型枠にプレキャスト型枠を用いることに変更した。
また、2 次元図面の配筋図・鉄筋加工図を基に配筋の3D モデルを作成した(図- 7)。配筋図を3D 化することで配筋図に含まれている不整合箇所を検出できるメリットは、土木工事においてもその有用性が認められつつある。当ダムにおいても、当初図面では鉄筋と機械架台の埋め込み金物の干渉が判明し、配筋図を3D 化することで事前に回避することができた(図- 8、写真- 5)。取水設備以外に,地覆高欄部も同様に仮設計画を見直し、プレキャスト型枠に変更している。





⑤-堤体上下流面のひび割れ調査に伴うUAV(無人飛行体)撮影の導入
維持管理の基礎資料に資することを目的として、堤体上下流面のコンクリ-ト表面の状態を、UAV を用いてデジタル画像で撮影した(図- 9、図- 10)。



目視点検をいかに効率化できるかという観点で、UAV 及び多視点からの写真撮影のデータを用い3 次元画像の作成を試行した。一眼レフカメラを搭載したUAV を用いて、対象とするコンクリート構造物の表面部を連続撮影(静止画)し、画像解析によりコンクリートに発生したひび割れを抽出し、図化(CAD 化)した。
UAV を用いることで本来足場の設置等が必要な箇所の撮影や上空からの俯瞰撮影など、様々な視点からの撮影が可能となる。また、複数の羽を有しているマルチコプタは、従来のラジコンヘリに比べ飛行時の安定性に優れており、より安全な撮影が可能である。また、バッテリー電池による飛行のため騒音に関しても比較的静かであり、エンジンを用いないため油漏れによる水質汚染の懸念もない(写真- 6、写真- 7)。
UAV による撮影は1 日あたり6 ~ 7 フライトを実施し、上下流それぞれを2 日間、計4 日間で全体の撮影を完了した。
撮影・図化されたダム全体の調査図・展開画像は膨大なデータ量となり、管理していく上で、多大な労力を要す。確認したい過去のひび割れ調査結果を探すのにも範囲が広く、時間がかかってしまう。そこで、誰でも容易に情報を検索取得できるデータベースシステムを構築している。




4.動植物の保全に配慮した施工
五ケ山ダムの貯水池は、里山に囲まれた水田が広がり、多種多様な動植物が生息する豊かな環境であった。工事中は使わなくなった水田を仮設のビオトープとして湿地を保全し動植物のモニタリングを行いながら環境に配慮し施工を行った(写真- 8)。


ダム完成後においても生息していた動植物が生息できる湿地環境を整備し、昆虫類やこれらを餌にする鳥類が戻ってきている。(写真- 9、写真- 10)




5.竣工式の開催
五ケ山ダム建設事業完了の節目を記念して、平成30 年3 月11 日に、ダム天端付近にて竣工式を開催した。当日は、晴天の下、ダム天端左岸に、国土交通省をはじめ、国会議員、県議会議員、地元地権者ら関係者約170 人が集まり、事業の完了を祝いました(写真- 11)



6.おわりに
五ケ山ダムでは、3 次元化した設計データを基に様々な新技術を導入し、生産性や品質管理の向上に大きく寄与した。このような取り組みが今後の類似工事への参考となり、「i-Construction」のより一層の推進につながれば幸いである。
最後に五ケ山ダム建設事業にあたっては、地元関係者のご理解・ご協力並びに、建設に携わった多くの方々のご尽力により、無事事業完了を迎えることができました。深く感謝を申し上げ、結びとさせていただきます。